新しい暮らしのはじまり
時折雪が降る日もあった3月末から、時間はどんどん進み、ただいま6月初旬。
連載を始めた頃は、一体全体オープンできる日が来るのだろうかと思っていましたが、当初の予定通り6月25日から、はしもとみおさんの作品展でNEW巣巣をスタートしてみることにしました。準備もいよいよ佳境に入っています。
4月末から始まった、大工さん、水道屋さん、電気屋さん、ペンキ屋さん、建具屋さんによる工事も、滞りなく進み、5月下旬にはあらかたの工事が終了しました。私がこういう感じにして欲しいという希望を伝え、それを職人さんたちが職人技で形にしていってくれました。
これまで経験したリフォームでは、トイレの場合は古い便器を外して、新しい便器に付け替える程度のことでしたが、古い昭和の家のリフォームはまったく違いました。柱だけ残してその部分をほぼ一度解体し、また一から作り直すといった工程を何ヶ所かで繰り返し、工事は進みました。
特に水回りは敷地内まで来ていた下水管に排水をつなぐため、地面を掘り進んで排水管の勾配をとる、かなり大掛かりな土木工事となりました。洗濯機や冷蔵庫、エアコンやウォシュレットなど必要な場所に電気のコンセントがなく、今の暮らしにどれだけ電気を消費しているかと、改めて気がつきました。
庭の木や草は、季節通りにぐんぐんと葉や枝や芽を伸ばし、花を咲かせ、実をつけていきます。雑草を取って、地面に数日そのまま放置し、まとめて片付けようとすると、萎れた草の下には無数のダンゴ虫やその他名前も知らない虫がいっぱいいて、草を分解して土にしようとしています。
植木が伸びすぎて剪定し、処分するのも大変な大量の枝葉や、取っても取っても直ぐ伸びてくる雑草。一体この膨大な量の炭素はどこから来ているのでしょうか?
空気中の二酸化炭素を、太陽の光を使って植物が光合成することにより、私たちの呼吸に必要な酸素と生きるためのエネルギーの元である炭素を生み出してくれている。完璧な地球環境システム。こういったことをまったく意識しないでこれまで暮らして来ていたなあと思いました。
キジが鳴きながら悠々と草地を散歩する姿や、ツバメがカップルで巣作りの場所を探す様子を眺めたり。庭から山椒の実を取って醤油漬けにしたり、たわわに実をつけた4本の梅の木から梅の実を少しずつもいで、青梅の蜂蜜漬けを作ったり。庭に畑を作って、ハーブやトマトを植えたりしています。
少し自然に近づいた新しい暮らしが始まりつつあります。
キッチンの作業用のカウンターテーブルと机は、近所の立山山麓森林組合まで出向き、富山県の杉の一枚板を選んで製材してもらいました。
上市の屋敷林だった大径木の杉を製材して乾燥させていたものだそうで、厚み4センチ、幅45センチ、長さが180センチの立派な一枚板のカウンタートップができました。ちょうど合う大きさの市販のスチール棚2台の上にのせて、作業スペースが出来上がりました。
保管していた、ピアノと家具や商品も5月の初旬には無事に届きました。工事の終わったところから少しずつ整頓を始めました。一年半ぶりに、これまで世田谷でずっと使っていた机に向かって仕事再開です。
もうずっとこうしてここに座って、仕事をしていたかのように、家具も私も家に馴染んできています。
私の好きな富山のお店
中央通りの酒屋さん 石坂善商店
富山の美味しい地酒がたくさん揃っているお店。どれがいいか迷った時は、お店の方が好みにあわせておすすめしてくれます。
石坂善商店
富山県富山市中央通り3丁目4-3
9:30-18:00 日曜・祝日休み
巣巣 岩崎 朋子(いわさき・ともこ)
世田谷の等々力で「巣巣」という家具と雑貨の店16年営み閉店。現在富山県立山町に移住して新しい店を準備中。バンド「草とten shoes」リーダー。著書に「小さな巣をつくるように暮らすこと」(SBクリエイティブ)。
<撮影/馬場わかな(プロフィール写真)>