• 朝食によし、おやつによし、で毎日大活躍のパン。バターを塗ったりチーズをのせたり、気合いを入れてフレンチトーストをつくってみたり。でも、気づけばネタ切れ&マンネリ……。そこで悩みを相談したのは、パン好きの間で話題の本、『ぱんぱかパン図鑑』復刊で注目の料理家、金子健一さん。バタートーストだけで18種類、フレンチトーストとタマゴサンドで各19種類……合計、なんと146種類ものパンレシピを考えたという猛者。いつものパンを最高においしくするアイデアを教えていただきました。

    パンレシピの新たな扉を開く“ドテマヨ”

    金子さん曰く、
    「白いごはんに合うものは、たいていパンにも合う」のだそう。

    だから、一見とんでもないものの組み合わせも果敢に挑戦します。のりの佃煮、明太子、キムチ、さらにはオクラに切り干し大根。それらを、とにかく、ぬる、のせる、はさむ。

    しかし、そんなありきたりのテクニックでは、146種類もレシピを編み出せるはずがありません。厚切りパンに切り込みを入れた“ポケット式”、格子状に切り込みを入れてのしみこませ技……などなど『ぱんぱかパン図鑑』で披露された数あるテクニックの中で、今回注目したいのは、その名も“ドテマヨ”。

    画像: 「半熟目玉焼きキャベツのドテマヨトースト」パンをぐるりと囲む土手のように、マヨネーズをしぼり出すから“ドテマヨ”。ふるふるとした具を落下から守ります。

    「半熟目玉焼きキャベツのドテマヨトースト」パンをぐるりと囲む土手のように、マヨネーズをしぼり出すから“ドテマヨ”。ふるふるとした具を落下から守ります。

    「食パンに、あらゆるものをのせて、こんがりトーストする。おいしくないはずがありません。ただ困ったことに、食パンは平坦なんですよね。モリモリにのせると、安定感が失われる。けれど具は減らしたくない。そこが悩みどころでした」

    さまざまなアイデアの中でも、絶対おいしいと思ったのが、半熟卵。食パンに生卵を割り入れて、それをトースターでジワジワと焼く。こんがりトーストの中に、とろりと半熟の黄身!

    とりあえず、厚切りパンを使ってみることは決まったけれど、“ポケット式”を採用して、切り込みに卵を割り入れたのでは、うまく熱が入らない。

    しかも、ビジュアル的にもつまらない。せっかく卵を入れるなら、やっぱり黄身と白身のコントラストを生かさなきゃ!

    画像: 「ぎゅうぎゅうハムサンド」半分に切った食パンの断面から切込みを入れ、ポケット状にしたところに、スパイシーに味付けしたせん切りのハムをぎゅうぎゅうに詰める“ポケット式”を駆使した一品。焼いてもおいしい。

    「ぎゅうぎゅうハムサンド」半分に切った食パンの断面から切込みを入れ、ポケット状にしたところに、スパイシーに味付けしたせん切りのハムをぎゅうぎゅうに詰める“ポケット式”を駆使した一品。焼いてもおいしい。

    シンプルに考えるなら、厚切り食パンのふわふわ部分をくり抜いて器状にするでしょう。そこに卵を落とせば、まあ問題ない。卵のビジュアルも生かせるし、卵が流れ出ることもない。

    しかし、そのくり抜いた部分はどうする? その場でムシャムシャ食べる?

    そんなことをしたら、せっかくの目玉焼きトーストを食べる前にお腹がいっぱいになってしまう!

    「後ほど油で揚げてクルトンにいたしましょう」?……そんな手間のかかること、誰が朝っぱらからやるものか!

    金子さんのとりあえずの結論。

    “卵が入るように食パンの真ん中をギュッと押す”

    おお! シンプルかつ、ムダがありません。とはいえ、割り入れた白身はゆるゆるとパンの外側に広がっていく……ピンチ! そこで、ひらめいたのです。

    「もんじゃ焼きを焼くときに具材で“ドテ”をつくってゆるい生地の流出を防ぐように、何かで“ドテ”をつくればいいのだ」

    “ドテ”があらゆる具材をせき止める

    パンに合う、しかも手軽な“ドテ”……そこで白羽の矢が立ったのが、マヨネーズ。

    トーストすれば、やや固まってくれるのもありがたい。しかも、焼くとおいしさが増すのです。

    さあ、使える“ドテ”さえ見つかればこっちのもの。ミニトマトをぎっしり並べてみたり、

    画像: 「焼トマトのハーブドテマヨトースト」ハーブを混ぜたマヨネーズとぶどうパンの甘みが、焼いたトマトの甘酸っぱさを引き立てます。うま味の詰まったトマトの焼き汁まで、まるごといただけます。

    「焼トマトのハーブドテマヨトースト」ハーブを混ぜたマヨネーズとぶどうパンの甘みが、焼いたトマトの甘酸っぱさを引き立てます。うま味の詰まったトマトの焼き汁まで、まるごといただけます。

    ドテそのものに味付けをしてみたり、

    画像: 「キムチドテマヨトースト」キムチを混ぜたマヨネーズの“ドテ”の中には、とろーりとした長いものすりおろしを。焼くと表面がふんわり、中はネバトロ~な不思議な食感に。

    「キムチドテマヨトースト」キムチを混ぜたマヨネーズの“ドテ”の中には、とろーりとした長いものすりおろしを。焼くと表面がふんわり、中はネバトロ~な不思議な食感に。

    画像: 「カレードテマヨトースト」カレー味のマヨネーズに、たっぷりのピザチーズ。子どもから大人まで、みんなが大好きな鉄板の味です。

    「カレードテマヨトースト」カレー味のマヨネーズに、たっぷりのピザチーズ。子どもから大人まで、みんなが大好きな鉄板の味です。

    こっそり野菜を仕込んでみたり(実は、下にハムやズッキーニが敷き込まれています)。

    画像: 「明太ドテマヨトースト」食感の違う2種の野菜が見事に調和。明太マヨがつなぎ役。ぐらつく心配のあるバゲットも“ドテ”があれば、具がこぼれず、安心です。

    「明太ドテマヨトースト」食感の違う2種の野菜が見事に調和。明太マヨがつなぎ役。ぐらつく心配のあるバゲットも“ドテ”があれば、具がこぼれず、安心です。

    ちなみに半熟目玉焼きのトーストも、実はあっと驚く立体ワザ。

    実はワキからぎっしりキャベツが仕込まれていた! それは、とろーり卵とシャキシャキキャベツのたまらないハーモニー。金子さん、おいしさには決して手を抜かないのです。

    画像: 4枚切り食パンの脇から切込みを入れてポケット状に。そのポケットに、味付けしたせん切りキャベツを、詰めている。

    4枚切り食パンの脇から切込みを入れてポケット状に。そのポケットに、味付けしたせん切りキャベツを、詰めている。

    「パンにのせたらうまかろう、しかしパンから転げ落ちるに違いない」。そんな具材をドテマヨがあっけなく救い、せき止める。

    ドテマヨの誕生が、パンレシピの新たなる扉を開いたのです。

    いま、発売中の『ぱんぱかパン図鑑』には、あなたの常識を鮮やかに飛び越える、自由かつ絶品パンレシピが、これでもかの142種(+おまけの4つ)!

    ドテマヨのみならず、くるくるワザ、つぶしワザなど、いままで知らなかった、そして覚えておいて損はない、パンの斬新な食べ方満載です。

    ぜひ、斬新な食べ方を参考に、日々の食卓に新たな彩を添えてみてください!


    <料理/金子健一(つむぎや) 撮影/有賀傑 取材・文/福山雅美>

    金子健一(かねこ・けんいち)
    料理家。1974年神奈川県横浜生まれ。学生時代、和食店でのアルバイトがきっかけで調理師免許を取得。コピーライターを経てパン職人の道へ。東京・中目黒、原宿で愛されていたパン屋「オパトカ」の店長としてメニュー開発にも携わる。そののち、2005年にマツーラユタカとともにフードユニット「つむぎや」を結成。ケータリング、イベント、雑誌へのレシピ提案など幅広く活躍している。2017年に妻の地元長野県松本市に拠点を移し、ご縁のある農家さんのお野菜などを中心に旬を味わう食堂「Alps gohan」をオープン。『あっぱれ!おにぎり』(金園社)、『和食つまみ100』(主婦と生活社)、『お昼が一番楽しみになるお弁当』(すばる舎)など著書多数。『ぱんぱかパン図鑑』が電子書籍に続き、2020年5月に復刊したばかり。
    Alps gohan Instagram @alps.gohan

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    天然生活の本『ぱんぱかパン図鑑』(“つむぎや”金子健一・著)
    天然生活の本
    『ぱんぱかパン図鑑』(“つむぎや”金子健一・著)

    天然生活の本『ぱんぱかパン図鑑』(“つむぎや”金子健一・著)

    A5判
    定価:本体 1,300円+税
    ISBN978-4-594-08482-0

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