![画像: 「夏」の気分を味わえる絵本3冊|ずっと絵本と。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/cef045e525c7ed31ced250e17285dcaf2f2078cd.jpg)
そろそろ梅雨が明け、夏本番がやってきますね。
今年はにぎやかに海水浴というわけにはいきませんが、せめて絵本でと思い、夏を感じられる作品を選びました。
『なつのいちにち』(はたこうしろう作 偕成社)
![画像: 濃い影に、夏の盛りの匂いまで思い出されます。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/47a368e109ecece3153e577eeba96bf8f323507c.jpg)
濃い影に、夏の盛りの匂いまで思い出されます。
「いってきまーす。」
と玄関を飛び出した男の子は、まっしぐらに走ります。
カモメと追いかけっこするように海沿いを進み、緑の田んぼを抜けて、
向かうのは、「げんじのたに」。
![画像: 前のめりな走りっぷり!](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/94bf87a5c93f35771397339d33edda73bf6815d1.jpg)
前のめりな走りっぷり!
「げんじのたに」で、男の子はどうしてもしたいことがあるのです。
それは、でっかいクワガタムシを捕まえること。
クマゼミの鳴き声、牛小屋の匂い、額にへばりついた髪、さらさらと流れる小川、静かな森……。
この絵本には、夏といえば、の景色がめいっぱい広がっています。
![画像: でっかいクワガタムシを見つけました。そろそろと近づいて……。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/767cd6fe9a8dc5cf45fc32c9e6d6d44b058ba76d.jpg)
でっかいクワガタムシを見つけました。そろそろと近づいて……。
クワガタムシをつかまえようと、果敢に挑んだ男の子の表情も、晴れやかで、健やかで、夏らしさに溢れています。
『のらいぬ』(谷内こうた絵 蔵冨千鶴子文 至光社)
![画像: 明るい南国の海辺が舞台です。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/6408171a51b2fbbf9f8806c4d6227dd59fceb24a.jpg)
明るい南国の海辺が舞台です。
あついひ
すなやまに
みつけた
まっ黒な野良犬が、てくてくと海辺を歩いています。
そこで見つけたのは、男の子。
![画像: 男の子に、寄り添うように寝そべる野良犬。この距離感に、胸がきゅんとします。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/e5b3aead94390eceb75efa7a717551d558b02eaf.jpg)
男の子に、寄り添うように寝そべる野良犬。この距離感に、胸がきゅんとします。
ひとりと一匹は、海辺を走って灯台へ。
そしてふたりは……。
1ページにひとことあるかないかの、言葉がとても少ない絵本です。
でも、絵がとても多くを物語ります。
![画像: 高い灯台の上からこうして海を見渡したら、どんなに気持ちがいいことでしょう。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/61670a8c94269d5e2349598b63eb567306a274a0.jpg)
高い灯台の上からこうして海を見渡したら、どんなに気持ちがいいことでしょう。
ラストは、いろいろな受け止め方ができます。
わたしはのらいぬが夢を見ていたのかな、と思っています。
すごくさみしくて、でも希望もあって、忘れがたい印象を残します。
『ジャリおじさん』(大竹伸朗絵・文 福音館書店)
![画像: 鼻の頭から生えているのは、ひげ?それとも……と思ってページを開きました。どうやらひげのようです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/a39dddddffa0b44879b9fa19c2b591e8eb93fd27.jpg)
鼻の頭から生えているのは、ひげ?それとも……と思ってページを開きました。どうやらひげのようです。
いつも海を見て暮らしていたジャリおじさん。
ある日、くるりと後ろを振り向くと、黄色い道が続いていることに気がつきました。
ジャリおじさんは、黄色い道を歩き出します。
![画像: このすばらしい色彩!](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/6f0f9703f4b5610ad5f645de2f0647ccc1174202.jpg)
このすばらしい色彩!
ジャリおじさんは、黄色い道をゆく途中、
ピンク色ののそのそしたワニや、くねくねした鼻のゾウに出会い、いっしょに歩くことにします。
それからいろいろな人にも出会います。
この黄色い道は、いったいどこに続いているのでしょう。
![画像: 夜道で出会ったのは、もうひとりのジャリおじさん。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/2bee8b42e4765851f605f0f89d61c56fa3324a02.jpg)
夜道で出会ったのは、もうひとりのジャリおじさん。
現代美術家の大竹伸朗さんが作とあって、全ページ、自由な絵が広がります。
語尾に「じゃり」がつくおじさんの話し方は、つい真似っこしたくなる、リズムのよさ。
大人のためのアートブックのように見えるかもしれませんが、どっこい、子どももわくわくしながら読んでくれます。
黄色い道の先にたどり着いた時の開放感は、旅先のように、こころをのびやかにしてくれます。
![画像: 『ジャリおじさん』(大竹伸朗絵・文 福音館書店)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783328/rc/2020/07/22/5a484fb4bc766074a54f7d223a799bfd747aab75.jpg)
長谷川未緒(はせがわ・みお)
東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
<撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>