(『天然生活』2016年7月号掲載)
台所の片づけ、しまい方
3人のお宅におじゃましました
ファッションコーディネーター 德田民子さん
とくだ・たみこ
文化出版局『装苑』などの編集長を務め、退職後、フリーのファッションコーディネーターとなる。2009年に長野・安曇野市に移住。著書に『安曇野便りの心地いい家しごと』(主婦の友社)がある。
スタイリスト 大沢早苗さん
おおさわ・さなえ
雑誌や広告で洋服のスタイリングを手がける。著書に『大人女子のためのワードローブ改革』(主婦と生活社)など。個人に向けた「おしゃれカウンセリング」も行う。
http://40s-style-magazine.com/
「Délier IDÉE」 石田英子さん
いしだ・えいこ
家具や雑貨を扱う「IDÉE」勤務。現在は東京・新丸ビルにあるギフトを専門に扱う「Délier IDÉE」で店長を担当している。夫と子どもふたりとの4人暮らし。
https://www.idee.co.jp/
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德田さん
材質をそろえて。 “見える化” を徹底
さわやかなブルーのタイルが目をひくキッチン。リビングダイニングとひと続きになった、いわば家の中心ともいえる場所です。
基本的には、 “見せる収納” が德田さん流。すぐに手に取れるよう動線を考えて物を配置。
シンクや作業台、可動式の大きなワゴンや壁付けの収納棚まで同素材でそろえて、すっきりと見せます。
青×ステンレスで清潔感を
作業台とシンクは業務用のステンレスで統一。
横長の窓にはポールにS字フックをひっかけ、へらやレードルなどをぶら下げて。
「本当に使う道具だけを厳選しました。あちこち捜すこともなく、出し戻しがスムーズです」
アンティークのワゴンは、見せつつ、収納&作業台にも
東京のアンティークショップでひと目惚れした業務用のワゴン。
ダイニング側の下段にはやかんやポット、上段には容器に入れ替えたお茶を並べて。キッチン側はボウルや鍋を収納
棚も、その中の容器も「見える化」
東京・福生市で見つけたガラス扉の収納棚を壁に取り付け、ガラスやプラスチックなど、中身の見える保存容器を収容している。
「中がわからないと使いそびれてしまうことが多いので、ひと目で中身がわかるもので統一させています」
大沢さん
収納品は3つ以上でそろえる
広くはない台所、道具も器も最小限に。
調味料やストック食材は、瓶に入れ替えて、パッケージのカラフルさや、にぎやかな情報をシャットアウト。
「気をつけているのは、収納グッズは、最低でも3個以上でそろえるということ」
ひとつだと目立つものも、3つ以上同じものが集まると、空間に自然となじむようになるといいます。
オープン棚の中身は「そろえ収納」ですっきりと
ダイニングからも目に入るキッチンのオープン棚は、うるさくならないよう、「そろえ収納」を。保存瓶はイタリア・ボルミオリ ロッコのもの
台所横のデスクには料理書などを
料理をしながら仕事ができるようにと、台所の脇にデスクを設けた。棚にはレシピブックを収納。机に本を広げて料理をすることも
気に入った収納品は、まとめ買い
細かいものは「natural kitchen」のかごに分類。
「サイズ感がよかったし、なんせ100円なので、まとめ買い。ほかにもいろいろ使えます」
石田さん
動線に合った引き出し収納を徹底
木とステンレスを組み合わせたキッチンは、ダイニングとリビングに面しているので、料理をつくりながらも家族の気配を感じられます。
作業する側にもダイニング側にも収納力たっぷりの引き出しがあるので、「しまう収納」を徹底。
自分と家族の動線に合わせ、食関係のほか、文具や雑貨類なども最適の場所に収まっています。
収納力抜群の引き出しをフル活用
キッチンは「IKEA」のもの。
キッチンスペース側とダイニング側の両方に引き出しがあるため、家族の動線に合わせ、“使うものを使う場所に” のルールで、引き出しごとに収納。
全体を見わたせるので、物の出し入れも楽
ダイニング側には箸置きや大皿を
ダイニングの後ろに位置する引き出しには、カトラリー類や箸置き、来客用の大皿などを。食卓に近いので、配膳作業もスムーズにできる
意外と出番の多い文具類も
筆記具や文具類はダイニング側の左上にまとめて収納。ここに入る分だけと決め、細かく仕切れば散乱しにくく家族も出し入れしやすい
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3つの暮らし、それぞれの片づけ理論と、しまい方実技
ファッションコーディネーター 德田民子さん
「住まいを新しくする際の希望は “シンプルに暮らしたい” ということでした。日常生活で本当に必要なものだけを選び、すぐに手に取れるような、単純明快な暮らしにしたかったんです」
その思いは、収納にも反映されています。食器棚などの大きな家具は処分し、徹底的に見せる収納に切り替えました。
といっても、器も、衣類も、庭の道具類も単なる出しっぱなしではなく、秩序をもって美しく並んでいます。
それらがインテリアの一環となり、空間を一段も二段も盛り上げています。
「大きな収納家具の代わりに、ブリキの箱やかごはたくさん。好みに合うものを見つけたら、ときには、用途は決めないで購入することも。使い方をあれこれ考えるのが、また楽しくて。片づけや整理整頓は毎日のことだから、少しでも楽しくできたらいいですよね」
スタイリスト 大沢早苗さん
「結婚するまでは、収納なんて考えたこともなかったです」
片づけなんて苦手、でも、あるべきところに物が収まっていないと気持ちが悪い。だから「しかたなく」、片づけを実践してきたのだと話します。
「トレーニングと一緒ですよね。最初は、5割、片づいていればいいかなと片づけ、次は6割、7割と、少しずつハードルを上げ、いまにいたっています」
片づけを徹底していくと、しまいやすい場所や入れ方などが体でわかるようになり、それが工夫につながります。
そして、出し入れしやすくなることによって、頭を使わずに片づけられるようになり、どんどんと片づけが進んでいき……と、いい循環が生まれているようです。
いまでも片づけは嫌いだけれど、「歯みがきをするように」日々の習慣としてこなしているのだとか。
「Délier IDÉE」 石田英子さん
「きっちりと決めすぎず、ゆるめのルールを設けるのが片づけの秘訣」と石田さん。
お子さんふたりと、ご主人との4人暮らし。どうしたって物が多く、気づけばすぐに散らかってしまっている、といいます。
だからこそ、たっぷり収納してくれるチェストや引き出し、ガサッと「とりあえず」物をしまえるパントリーなどが、石田さんの心強い味方となるのです。
「そこがあふれたり、ぐちゃぐちゃになったりしたら、“片づけ祭り” を決行します。やるときは集中して、とことんやる。ふだんはゆるく、ときどき真剣に。そのメリハリが、私には合っているようです。さらに、自分だけでなく家族が出したり戻したりしやすいように、収納の場所や方法に気をつけています。家族の動線を見極め、“使うものを使う場所に” が大切です」
〈撮影/石黒美穂子 取材・文/結城 歩、鈴木麻子〉
石黒美穂子(いしぐろ・みほこ)/撮影
フォトグラファー。料理、インテリア、旅物などライフスタイル系をメインに活躍中。2016年より東京・学芸大学のセレクトショップ「MIGO LABO」ディレクターを兼任。
インスタグラム
https://www.instagram.com/ishiguromihoko/
MIGO LABO
https://www.migolabo.com
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです