(『天然生活』2016年7月号掲載)
玄関の片づけ、しまい方
3人のお宅におじゃましました
ファッションコーディネーター 德田民子さん
とくだ・たみこ
文化出版局『装苑』などの編集長を務め、退職後、フリーのファッションコーディネーターとなる。2009年に長野・安曇野市に移住。著書に『安曇野便りの心地いい家しごと』(主婦の友社)がある。
スタイリスト 大沢早苗さん
おおさわ・さなえ
雑誌や広告で洋服のスタイリングを手がける。著書に『大人女子のためのワードローブ改革』(主婦と生活社)など。個人に向けた「おしゃれカウンセリング」も行う。
http://40s-style-magazine.com/
「Délier IDÉE」 石田英子さん
いしだ・えいこ
家具や雑貨を扱う「IDÉE」勤務。現在は東京・新丸ビルにあるギフトを専門に扱う「Délier IDÉE」で店長を担当している。夫と子どもふたりとの4人暮らし。
https://www.idee.co.jp/
◇ ◇ ◇
德田さん
土間へとつながるワークスペースに
家を建てる際にどうしてもつくりたかったという土間。玄関の扉と庭への扉をつなぐ空間となっています。
「庭関係のものがたくさんありますし、冬は雪も多いので、家に入る前にひと息つける場所が欲しかったのです」
壁付けに台をつくったことで、ご主人がちょっとした作業や工作をするワークスペースも兼ねました。
細長い空間を上手に活用して
右側には、つくり付けの板を一枚渡して作業台+飾るスペースに。左側にはベンチや棚を置き、細長い空間をフル活用。
壁にはフックを取り付け、ウインドブレーカーなど庭仕事に使う上着などをかけている
飾る+しまうをバランスよく
上には夫婦ともに好きなものなどを並べて。下には箱を置き、野菜や保存食をつくる際の空き瓶を入れて
ブリキのペン立ては……
工作スペース。「コンランショップ」で見つけたプランターを複数並べてペン入れに。発想の転換はさすが
大沢さん
8割収納ですっきり、出し入れも楽に
靴箱に限らず、収納は「8割」を心がけているといいます。
「ぎゅうぎゅうに物が詰まっていると、出し入れがしづらいですし、中身の管理もゆき届かなくなります」
新しい物を買ったとき、季節の変わり目など、折に触れ、物が増えすぎないように見直しをしているという大沢さん。
「空きスペースがあると、つい、物をしまいたくなりますが、そこはぐっと我慢」
使う頻度で靴をレイアウト
「一軍」の靴は取り出しやすい高さの棚に、そうでないものは一番上へ。棚板に敷いた新聞紙は調湿効果も
壁掛け収納も8割で、風通しよく
靴箱の裏には、フックを取り付けて。ゲスト用のスリッパも、かごに入れてかけてある。
「上段はフリースペースにしてバッグや帽子などをかけますが、ここも8割を心がけて」
石田さん
お祖母さまの形見を主役に
たたき部分に、靴や傘、子どもの外遊びのものを収納できる半個室のスペースがあるため玄関はすっきりとした印象です。
そこに映えるのが、年代を感じさせる古い簞笥。石田さんのお祖母さまのお嫁入り道具で、100年ほど前のものなのだとか。
「スリッパやハンコなど、玄関まわりの細かいものを入れています。場所柄、祖母に守られているようで安心できます」
玄関で家族を見守る、祖母の古い簞笥
とても古いものだけど、しっかりとしたつくり。玄関には、ほかにも収納があるので中身はゆったり。インテリアとして、そこにあるだけで絵になるところが気に入っているそう
スリッパは、かごに入れて収納
床に置きがちな来客用のスリッパ。使う頻度が低いものは、出しっぱなしにせず簞笥に収納してすっきり
◇ ◇ ◇
3つの暮らし、それぞれの片づけ理論と、しまい方実技
ファッションコーディネーター 德田民子さん
「住まいを新しくする際の希望は “シンプルに暮らしたい” ということでした。日常生活で本当に必要なものだけを選び、すぐに手に取れるような、単純明快な暮らしにしたかったんです」
その思いは、収納にも反映されています。食器棚などの大きな家具は処分し、徹底的に見せる収納に切り替えました。
といっても、器も、衣類も、庭の道具類も単なる出しっぱなしではなく、秩序をもって美しく並んでいます。
それらがインテリアの一環となり、空間を一段も二段も盛り上げています。
「大きな収納家具の代わりに、ブリキの箱やかごはたくさん。好みに合うものを見つけたら、ときには、用途は決めないで購入することも。使い方をあれこれ考えるのが、また楽しくて。片づけや整理整頓は毎日のことだから、少しでも楽しくできたらいいですよね」
スタイリスト 大沢早苗さん
「結婚するまでは、収納なんて考えたこともなかったです」
片づけなんて苦手、でも、あるべきところに物が収まっていないと気持ちが悪い。だから「しかたなく」、片づけを実践してきたのだと話します。
「トレーニングと一緒ですよね。最初は、5割、片づいていればいいかなと片づけ、次は6割、7割と、少しずつハードルを上げ、いまにいたっています」
片づけを徹底していくと、しまいやすい場所や入れ方などが体でわかるようになり、それが工夫につながります。
そして、出し入れしやすくなることによって、頭を使わずに片づけられるようになり、どんどんと片づけが進んでいき……と、いい循環が生まれているようです。
いまでも片づけは嫌いだけれど、「歯みがきをするように」日々の習慣としてこなしているのだとか。
「Délier IDÉE」 石田英子さん
「きっちりと決めすぎず、ゆるめのルールを設けるのが片づけの秘訣」と石田さん。
お子さんふたりと、ご主人との4人暮らし。どうしたって物が多く、気づけばすぐに散らかってしまっている、といいます。
だからこそ、たっぷり収納してくれるチェストや引き出し、ガサッと「とりあえず」物をしまえるパントリーなどが、石田さんの心強い味方となるのです。
「そこがあふれたり、ぐちゃぐちゃになったりしたら、“片づけ祭り” を決行します。やるときは集中して、とことんやる。ふだんはゆるく、ときどき真剣に。そのメリハリが、私には合っているようです。さらに、自分だけでなく家族が出したり戻したりしやすいように、収納の場所や方法に気をつけています。家族の動線を見極め、“使うものを使う場所に” が大切です」
〈撮影/石黒美穂子 取材・文/結城 歩、鈴木麻子〉
石黒美穂子(いしぐろ・みほこ)/撮影
フォトグラファー。料理、インテリア、旅物などライフスタイル系をメインに活躍中。2016年より東京・学芸大学のセレクトショップ「MIGO LABO」ディレクターを兼任。
インスタグラム
https://www.instagram.com/ishiguromihoko/
MIGO LABO
https://www.migolabo.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです