私の「リアルな朝ごはん」
私のホームグラウンドは家庭料理。
記事を見た人に、「おいしそう」とか「これならできそう」と思ってもらいたい。その上でキッチンに立ってつくってもらえるように、あの手この手で「誘惑」したい種類の仕事。
実際に料理を提供するレストランや食堂ではなく、あの人この人の暮らしのなかでつくってもらえる、お役に立てる料理を考えるのが根っこです。
でもですね。
その料理を「ハレ」の場に送り出す身としては、多少はお化粧なんかもしてきれいにしてあげたいし、誌面には新鮮な風の吹くごとく、キリッとかっこよく登場してほしくなるわけで。
最たる「ケ」の料理である家庭料理を考えているはずなのに、やっぱり「ハレ」の場に出すことへの見栄みたいなものが顔を出してしまう。
いいのか、いいのか私、嘘ついていないか、って思うときも出てきたりして。
正直に告白して、すっぴんごはんでつながりたい、と思ったのが「リアル朝ごはん」というわけなんです。
「玄米ごはんと味噌漬けの魚」 麹のありがたきうま味
焼き魚がある朝ごはんは、なんだかまじめな感じがする。しかも玄米でまじめを上乗せだ。今日の魚は、甘酒用の甘みを出した甘麹に味噌を合わせた味噌床に漬けたもの。さわら。
米麹で、甘酒をつくるようになった。発酵ものに「はまった」からだ。米麹の大袋を取り寄せ、塩麴をつくり、醤油麹をつくり、甘酒をつくった。何リットルもの甘酒を仕込んで、いちごとシェイクにしたものは何度もケータリングに使った。
もち米1カップと水2カップを鍋に入れて火にかける。沸騰したらふたをして弱火で15~20分炊く。やわらかく炊けたごはんに、水1/2~1カップを加えて混ぜると温度が下がる。これをほぐしておいた米麹1カップと混ぜて、60℃の温度でひと晩おくと、甘酒の素ができあがる。
味噌床をつくるときはそのまま、同量の味噌と混ぜる。魚や肉の水気を抑えて漬けることひと晩。味噌をぬぐって、焼く。自家製の味噌床があると、なんだか誇らしいのだ。
だって、おいしい味噌漬けや西京漬けは本気で高いんですよ! 漬け込んだまま冷凍しておけば心に余裕の、困ったときの一品ができるんですよ。
いまでは「最強漬け」と呼んでいる。
「コマゴマピクルス」 エダモトの酢の素、活用無限
「エダモトの酢の素」と心の中で密かに呼ぶ、合わせ酢は、そのまま使えばすし酢で、この半量を米3合分のごはんに混ぜてすし飯。同量の水で割ればピクルス液。コショウの粒やローリエ、スパイスやハーブをそのときの気ままに混ぜて使う。
だし適量で割って、醤油をひとたらししたら酢の物。
エダモトの酢の素
・米酢 | 1カップ |
・砂糖 | 大さじ6 |
・塩 | 小さじ1・1/2~2 |
・昆布茶 | 小さじ1弱 |
で、このコマゴマピクルス、細々と残った野菜を刻んでただ漬けておく、というものです。
赤かぶや大根、紫玉ねぎなんかが入ると、色が落ちて全体がピンクに染まったりして、それを愛でるのも、一気に片付けが進むのもいいところ。あるとき、ケータリングのカレーの付け合わせとしてつくってみたら、すごくほめられてたのがきっかけで定番になった。
<写真・文/枝元なほみ>
枝元なほみ(えだもと・なほみ)
料理研究家。食の生産現場に深い関心を持つ。近著に『枝元なほみの 今夜はおでん』(技術評論社)、『枝元なほみのリアル朝ごはん』(海竜社)など。