時間をかけて粉の旨味を引き出した、味わい深いパン
下町情緒にあふれる谷根千エリアは、街歩きに楽しい場所。そんな谷根千エリアで人気を集めているのが、根津駅から1分ほど歩いた路地に佇む「根津のパン」です。店に辿り着くと、まず目を引くのがその外観。もともと豆腐屋さんだった物件を、ほとんど手を入れずにお店にしたそうで、木の格子窓や引き戸などが、趣たっぷりです。
2018年8月にオープンすると、ほどなく地元の人が足繁く通う店として、すっかり街の顔に。取材に訪れたのは平日ですが、入店の人数制限を守って入れ替わり立ち替わり、お客さんが店に入っていきます。場所柄、年配のお客さんが多いのですが、老若男女問わず、みな目を輝かせてパンを選び、うれしそうにパンを持ち帰る姿が印象的でした。
店主の野口さんは、上野にかつてあった人気店「カヤバベーカリー」のご出身。オープニングから閉店まで携わったそうで、パンづくりなどを任されていた実力派です。
「パンはどれも長時間発酵させています。最低でも12時間、パンによって18時間、20時間、24時間などいろいろ。基本的には長いほうかな? ただ、角食と山型食パンだけは長時間発酵ではつくっていません。というのも、長時間発酵にするとたいがいモッチモチになっちゃうから。普通の硬さの食パンも、お客さんは欲しいだろうなと思って」
そう話す野口さんは、いつもお客さん目線。日替わりパンが多いのもお客さんに楽しんでほしいという想いからでした。しかも、日替わりパンは具材の組み合わせが絶妙で、たとえば「パインとオレンジとクリームチーズ」「チェリートマトとレモンとクリームチーズ」「3種のペッパーとカシューナッツカマンベールチーズ」など、ネーミングを聞くだけでわくわくした気分に。
「同じものを並べてもあまり面白くないんじゃないかなって。日替わりは僕がメインで考えていますが、スタッフの子たちが提案してくれることも多いですよ。縁があって入荷してきたり、展示会や先輩を通して知った食材があれば、日替わりで試してみることが多いです」
「日替わりパンが多いのは、つくる側も飽きないようにというのもあるんですけどね」とも話します。お客さんに喜んでもらいながら、自分も含めスタッフもパンづくりを楽しめるように、そんな想いをのせたパンが、街の人の日常にささやかな幸せを運んでくれています。
<撮影/山川修一 取材・文/諸根文奈>
根津のパン
10:00~19:00(パンが売切れ次第終了)
月・木休み
東京都文京区根津2-19-11
最寄り駅:東京メトロ千代田線「根津」
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