渋皮煮をやってみたいのです
友人に、「私、今年は初めて栗仕事するんだ。スーパーでも栗って売ってるでしょ? あれをさ……うんぬんかんぬん」と語っていたら、その友人、なんと居眠りをはじめました。
眠気に見舞われるほど栗には興味がなかったそうで。栗だけに、びっくり! です。
友人はさておき、渋皮煮ってのをやってみたい のです。
栗は渋皮煮の方がコクがあって美味しい気がします。
大人になった証拠かしら。テへへ。
いえ、嘘つきました。渋皮まで剥かなくていいから楽そう。という理由からです。
栗って、ばあちゃんは包丁で剥いていた記憶があるのですが、あんな硬いものにどこから包丁をいれるのでしょう。
普通に考えたら無理です。
だとしたら答えは2つ。ばあちゃんの握力が常軌を逸しているか、剥きやすくなるコツがあるかです。
そしたらなんと単純。一晩水に浸けておくんですね。
しかしそんなことをしても、ガリゴリしてそうな見た目。
やはり握力か? と思い、恐る恐る栗のお尻の部分に包丁を入れると、なんとまぁ、包丁が入るではないですか。
すんすすん。と入ってするりと鬼皮が剥けます。
なるほど。また1つ知恵をつけてしまった模様。私は、誰かに向けてほくそ笑みました。
鬼皮を剥く。というような細かい作業が昔から好きです。
忘我の境地に至ります。
いえ、我を忘れるというよりは、どこかにトリップしてしまう。と言った方が正しいかもしれません。
「私は森を支配している妖精の女王。森で栗を剥いている時、人間の王子様に見つかり、2人は恋に落ちるのですが、いかんせん住む世界が違う2人の恋は許されず、あの日2人で食べた “栗の渋皮煮“ だけが後世に受け継がれていきました。あなたの恋が悲恋であればあるほど、それを甘く感じるらしいですよ。その商品が今、道の駅で大人気」
そんな妄想をしていたら、あっというまに栗を剥き終えていました。どうかしています。
水から煮ては、茹で汁を捨てる。というのを繰り返しました。
何度茹でても灰汁と茶色い色が出てくるので、途中から不安になりました。
「やっぱり渋皮を剥けば良かったんじゃないか? ああ、妖精の女王なんかに生まれなければ良かった!」
時折、妄想と現実の区別がつかなくなりましたが、ラストに砂糖で甘く煮て、なんとか仕上げました。
初めてにしては、なかなかのお味でした。
しかし、シロップをもっとトロンとさせたい。それは来年の課題にします。
ということで、
「久美子の渋皮煮。妄想を添えて」
を、どうぞご賞味あれ。
白鳥久美子(しらとり・くみこ)
1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。2008年に川村エミコとたんぽぽ結成。10年、フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』の公開オーディションで新レギュラーの座をつかみ一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビ、ラジオ、ドラマ、舞台など多方面で活躍中。趣味は、散歩、高圧電線観察、シルバニアファミリー。特技は、詩を書くこと。唎酒師(日本酒のソムリエ)の資格ももつ。