• 二十四節気 立冬(11月7日~11月21日)
    日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
    白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。

    未来の景色


    小樽では
    紅葉が盛りを過ぎて

    青森では
    初雪がささやかれるころ

    東京では
    晴れた日は
    サイクリング日和で

    富士では
    初冠雪がとけずに
    根雪になっていく

    高知では
    薪ストーブに火が焚かれ

    長門では
    山に初霜が降り

    南阿蘇では
    紅葉がはじまって

    那覇では
    三〇度の真夏日に

    同じ一日にも
    生活はさまざまに違っていて
    しばらく経てば
    また季節が日々を模様替えするだろう

    名古屋では
    スケボーを練習する父がいて

    京都では
    寒い朝の目覚めに
    深煎りのコーヒーの湯気が立っている

    大山では
    とれたての新米に食卓がにぎわい

    高松では
    子のおもちゃに猫が近寄っては
    匂いにぷいと顔を背ける

    変わることと変わらないものの間で
    よろこびを見出すのが暮らしなら
    人と人がともによろこびあうためには
    時雨のあとに
    虹のひとつもかかればいい

    とある町では
    台風で穴の空いた屋根に
    3Dプリンターの瓦がかぶせられ

    とある町では
    路上に立ちつづける人の手に
    本のページがめくられ

    とある町では
    虹色の旗が広場にはためき

    とある町では……
    とある島では……
    とある国では……

    旧暦十月は
    小春ともいう

    春のようなあたたかな日は
    早とちりした
    梅が咲くこともあって

    未来の日のよろこびを
    少しだけ先取りして
    見せてくれる

     

    季節の言葉:小春空(こはるぞら)

    立冬を迎え、もう冬かと思いつつ、十一月といえば旧暦十月とも重なって、日によっては暖かな小春日和ともなる、ふしぎな時季に思えます。

    小春空とは、そんな穏やかな陽気に包まれたある日の空のこと。

    七十二候*では、十一月十七日から二十一日に、立冬末候の「金盞香す(きんせんこうばし)」の候となります。

    金盞とは水仙とされますが、冬の初めに香る花は静かに心に残ります。

    *七十二候……旧暦で一年を七十二もの、こまやかな季節に分けた暦。日付は2020年のものです。

     


    白井明大(しらい・あけひろ)
    詩人。沖縄在住。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。近著『歌声は贈りもの こどもと歌う春夏秋冬』(福音館書店)など著書多数。新刊に、静かな旧暦ブームを呼んだ30万部のベストセラー『日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー 増補新装版』(KADOKAWA)。

    當麻 妙(とうま・たえ)
    写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。共著に『旧暦と暮らす沖縄』(文・白井明大、講談社)。写真集『Tamagawa』。
    http://tomatae.com/



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