12月に入ると、街のBGMもすっかりクリスマスに。かつてサンタクロースを信じていた人が、いまでは自分がサンタクロース役ということも多そうですね。今回はクリスマスシーズンに読みたい絵本3冊のご紹介です。
『子うさぎましろのお話』(文・佐々木たづ 絵・三好碩也 ポプラ社)
「クリスマスが やってきて、北の国の どうぶつの 子どもたちも、それぞれ、おくりものを もらいました。」
一番先にもらったのは、白うさぎのましろです。
ましろはプレゼントのお菓子をペロリと食べると、もっと何か欲しくなって、サンタクロースにうそをつくことを思いつきました。
全身に炭を塗り、黒い子うさぎに変身して、まだプレゼントをもらっていないと、サンタクロースに言いに行くことにしたのです。
もちろん、サンタクロースはだまされませんでしたが、袋の中にたった一粒だけ残っていた種をましろにあげました。
ましろは家に帰る前に炭を落とそうとしますが、なかなか落ちません。
サンタクロースにうそをついたから、本当に別の子うさぎになっちゃったのかも、と大泣き。
そしてもらった種を、独り占めするのではなく、森の土の中に埋めることにしました。
「この たね、かみさまに おかえししておこう。土のなかへ うずめて。」
ましろが植えたこの種がですね、芽吹いて、大きくなって、まあ、えらいことになるんです。
とっても楽しくて、クリスマスの恵みに満ちている。
かつて、聞き分けのない子だったわたしは、大人によく言われました。
「いい子にしてたらサンタがくるよ」
「悪さしてるとバチが当たるよ」
そんな交換条件みたいなこと言われると、よけいに悪いことをしたくなる天邪鬼。
なので、ましろには、うそをついたからって、バチなんて当たらないよ、と言いたくもなるのですが、ほんとうに反省したましろの行動は、美しいな、と思うんです。
そして、これをきっかけにぐんと成長する姿には、まぶしさすら覚えます。
『ちいさなもみのき』(マーガレット・ワイズ・ブラウン さく バーバラ・クーニー え かみじょう ゆみこ やく 福音館書店)
森の外れに、ちいさなもみのきが立っていました。
ちいさなもみのきは、いつも暗い森の大きなもみのきを見ては、さみしく思っていました。
「たったひとりで いるよりも、だれかと いっしょにいたい」
ある日、男の人がやってきました。ちいさなもみのきを見て、
「きれいな みどりの ちいさなもみのき わたしのむすこに ぴったりだ」と言うと、根っこから掘り出して、麻ぶくろに。
ちいさなもみのきが運ばれたのは、男の子のいる家。男の子は足が悪くて、外へ出かけられないのです。
この家で、クリスマスツリーとして過ごすちいさなもみのき。
緑に茂り、きれいに飾ってもらって、いい香りを放ちます。
根っこごと家にやってきたので、春にはまた森に帰りました。
夏が過ぎ、秋がやってきて、また冬になり、男の人を楽しみに待つちいさなもみのき。
ところがいつまで待っても、来てくれません。
「クリスマスなしでは、このよは、ただ おおきく、つめたく、からっぽにみえました。」
とかなしんでいると、遠くからクリスマスキャロルが聞こえてきて、去年、ともに過ごした男の子の姿が……。
ひとりはさみしい、みんなといっしょにいたい、誰かの役に立ちたい。
ふだんは気づかないようにしているそんな想いが、クリスマスには押し寄せてきて、なんだかとまどいます。
だからなおさら、男の子がやってきたときの、ちいさなもみのきのうれしさを想像すると、泣きそうになるのです。
『サンタおじさんのいねむり』(ルイーズ=ファチオ さく ぶん・まえだ みえこ え・かきもと こうぞう 偕成社)
クリスマスイブの夜、サンタおじさんは、プレゼントを配りに出かけましたが、月が空に登るころ、眠くなってしまいます。
ここのところ、プレゼントを間に合わせるために、眠る暇もないほど、働いていたのです。
辺りを見回すと、ちょうどいい木の洞がありました。おくさんが持たせてくれた、サンドイッチとコーヒーでひとやすみ。
疲れ、睡魔、満腹。
サンタおじさん、すぐに眠ってしまいました。
そして夢の中で、プレゼント配り。ありますよね、こういうこと。
サンタおじさんを見かけた動物たちは、起こしたほうがいいよね、でも気持ち良さそうだから、このまま寝かせてあげようか、とひそひそ。でも、それじゃあ、プレゼントが間に合わないし。
そして、森の動物たち、いいことを思いつきました。
サンタおじさんの代わりにプレゼントを配ってあげるのです。
サンタおじさんへの、森の動物からのクリスマスプレゼント。
わたしも、いつもがんばっているあのひとに、お世話になったあのひとにも、プレゼントを贈ろう。
お疲れのみなさんにも、よいクリスマスプレゼントが届きますように。
長谷川未緒(はせがわ・みお)
東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
<撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>