• 奈良県・初瀬の古民家で、女性のための「ラクで、楽しい」食養生の知恵を考え、提案している大先輩、オオニシ恭子さんにお話を伺いました。放っておくだけで玄米が炊ける「魔法瓶ごはん」でつくる、やまと薬膳のパエリアのレシピも紹介しています。

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    「おまもり」の語源は “見守る” だそう。私が私らしく、居心地よく生きるための「おまもり」を分けていただきに、大段まちこ(フォトグラファー)&井尾淳子(フリー編集者)のふたりが、心とからだを整える魔法使いのような人々を訪ねます。

    おまもりルームより
    ふっくらとした愛を込めて。

    「薬」=「艸(くさ)で楽(らく)になる」

    ヨーロッパに32年間暮らし、不調を改善する食養生の指導を続けていたオオニシ恭子先生。東日本大震災を機に、活動の拠点を日本に移すことを決意され、現在の住まいは奈良に。

    「土地の食材を用いて、土地に適応していくことは生きる基本」という先生。「ヨーロッパ薬膳」から日本の「やまと薬膳」へと名称を変えて、79歳の現在も、精力的に活動をされています。

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    **井尾:**前回までは先生のこれまでの半生を伺いました。今回からいよいよ、具体的な食養生について、お聞きしたいと思います!

    大段:先生の主宰する「やまと薬膳」の “薬膳” は、中国の薬膳の意味ですか?

    オオニシ:そこは、少し違うんですよ。

    井尾:ほほー。と、いいますと?

    オオニシ:「薬」という字は、艸(くさかんむり)の下に「楽」という字が来ますね。なので、ここやまと薬膳では、「薬」を「艸(くさ)で楽(らく)になる」「艸を楽しむ」と解釈しています。お料理、お手当、化粧、染色など、生活の中で様々な草(野菜、野の草、ハーブなど)と触れ合うことでからだを癒やして、暮らしを彩る楽しみとしても活用できますよね。

    大段:「艸で楽になる 艸を楽しむ」。なるほど~。

    オオニシ:現代の女性は、仕事も家事も育児もあって、毎日忙しいじゃないですか。だから、「楽しさ」という意味での楽チン、楽なお膳。がんばりすぎないでいい。そういうお食事を楽しみながら食べましょう、という提案なんですね。

    ふたり:素晴らしい~。ぜひ教えてください!

    オオニシ:はい。今日召し上がっていただこうと思って、「魔法瓶ごはんでつくるパエリア」を用意しています。

    大段:「魔法瓶ごはん」とは何でしょう~。気になります!

    オオニシ:面白いでしょう。火にかけないで、魔法瓶で玄米を炊く方法なの。

    井尾:なんと~! 放っておけば玄米が炊ける?

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    魔法瓶ごはんのつくり方

    画像: 魔法瓶ごはんのつくり方

    <材料 1人分・300ml容器分>

    ● 玄米1/3カップ
    ● 魔法瓶300cc容量

    <つくり方>

    フライパンで玄米を色づく程度に乾煎りし、300cc容量の魔法瓶に入れ、玄米の2倍量の熱湯(分量外)を入れて蓋をし、40~60分置く。

    魔法瓶ごはんでつくる簡単パエリア

    画像: 魔法瓶ごはんでつくる簡単パエリア

    [材料1人分]

    ● 魔法瓶ごはん(上記参照)
    ● 玉ねぎ(くし形切り)50g
    ● 人参(短冊切り)25g
    ● 蓮根(半月切り)20g
    ● ごぼう(斜め薄切り)15g
    ● 長ねぎ(斜め切り)15g
    ● パプリカ(細長く切る)1/3個分
    ● 水1カップ
    ● 菜種油大さじ1
    ● ウコン粉末小さじ1
    ● 醤油少々
    ● 海塩(ぬちまーす*)小さじ1/2
    ● 胡椒少々

    *「ぬちまーす」は、沖縄の海水100%を原料とした海洋成分豊富な海塩。21種類の海のミネラルを含む塩分75%の塩

    [つくり方]

     フライパンに菜種油を熱し、ごぼう、玉ねぎ、蓮根、長ねぎ、人参の順に炒め、水を加えて少々煮る。水が無くなる頃、ぬちまーすと醤油を加えて味をととのえる。

     魔法瓶に詰まった玄米ごはんをに加え、ウコン粉末と胡椒を加えて炒めるようにして全体を混ぜ合わせる。

    ◇ ◇ ◇

    大段:魔法瓶ごはんをつくっておけば、野菜と炒めてすぐできますね~。

    井尾:リモートワークのときのランチにもいいですね。つくりたい!

    オオニシ:ごまをふりかけて、おにぎりにしてもいいですよ。

    「陰陽」を7つに分けた理由

    大段:「それぞれの人の体調を、陰陽7タイプに分ける」という、先生の食養生の特徴が、すごく気になっていました。

    井尾:そうそう。今回は、私たちのタイプもぜひ診断していただきたい! でも、なぜ7段階に分かれているんですか?

    オオニシ:それはね、ヨーロッパで食事の指導をしているなかで、あるときルールを見つけたからです。ベルギーでは、私の料理講習に10年も15年も通って来る方がいらしたんですよ。「あなたはもう人に教えられるくらいなんだから、もう通わなくても大丈夫じゃないの?」と言ったら、「でも、まだよくわからない部分があるから来たい」って言われてね。(私の教え方が悪いのかしら)と、すごくショックを受けました(苦笑)。

    井尾:なぜでしょうね。日本の食事が難しかったとか?

    オオニシ:「陰陽」というのが、わかりづらかったようなのね。東洋医学の背景には、「宇宙の生きとし生けるものはすべて、相対的な二極の、陰と陽のふたつのエネルギーに分かれている」という考え方がありますね。

    ふたり:はい。

    オオニシ:その二極しかない、つまり「白か黒か」だと、「どちらかじゃないといけないのか」と迷ってしまうんだな、と。たしかに人間は、竹で割ったようにスパッと決められない部分があるな、とも思いましたね。色彩でも、白と黒の間にはグレーというグラデーションがありますよね。だから、陰陽にもパーセンテージをつければいいのではないかと思ったの。

    画像: 「陰陽」を7つに分けた理由

    二十四節気・一年・一日も、7で区切られる

    オオニシ:その陰陽の感覚を、なんとかわかってもらおうと思ってひらめいたのが、7タイプに分けること。長く教えてわからないと言われたその反動で、「なんとかして3日でわかる方法はないかしら」と思ったんです(笑)。

    大段:先生の発想が面白いです(笑)。

    井尾:7タイプにひらめいたというのは、どこからですか?

    オオニシ:直感なんですけどね。いちばんバランスの取れている「中庸」を中心に置いて、陰性の方向に3段階、陽性の方向に3段階、合計7つがわかりやすいとピンときたんです。陰陽それぞれの3段階は「やや陰(陽)性」「陰(陽)性」「極陰(強い陰・極陽)性」。大中小にするということね。

    ふたり:ふむふむ。

    オオニシ:やってみてさらに気づいたのが、二十四節気(太陽が移動する天球上の道を黄道を24等分したもの)を7つで割ると、ピッタリ合うんです。一日の24時間も同じ。一ヶ月も、1年も、陰から陽に徐々に移りゆく時間の経過をみることができるなぁと。7つのタイプと、それぞれなりやすい病気症状などは次のようになります。

    陰陽の7タイプ

    タイプ1極陰(衰弱し、不調が多く病気に悩まされがちな状態。貧血、ひどく冷えている。落ち込みやすい)
    タイプ2陰(からだが冷えていて、血行が悪い。胃弱、PMS。社交的な交流よりも内にこもって研究したい)
    タイプ3やや陰(体内の水分が多くむくみやすい。腎臓病、尿もれ。疲れやすく、やる気はあるががんばりがきかない)
    タイプ4中庸(心身のバランスがとれていて、不調が少ない。不平不満をいわない)
    タイプ5やや陽(元気でよく食べ、よく飲み社交的だが中年以降に太りやすく、血圧が高い。膀胱炎)
    タイプ6陽(塩気のあるものを好むため、アルコール多飲の傾向。子宮筋腫、肝臓病。自分にも人にも厳しくイライラしがち)
    タイプ7極陽(エネルギー過多で多動性がある。野菜はほとんど食べず肉食過多。子宮、卵巣の疾患)

    *くわしく知りたい方は、オオニシ先生の著書『なにを食べるかは からだが教えてくれる。』(PHP研究所) amazonで見る をご一読ください。

    画像: 陰陽の7タイプ

    自分を知り、何を食べるのかを知るために

    ふたり:面白い~!

    オオニシ:7タイプを知る目的は、それぞれの体調の人それぞれに、何を食べたらいいのかを知ることです。たとえば、陰性に傾いている人は、水分が多いので尿もれやむくみがあったり、涙が止まらないなどの症状に出ることがあります。反対に陽性に傾いている人は、水分が不足していて、身体や血管がぎゅーっと締まっていく傾向にあるから、頭痛もちだったり。

    井尾:わかる気がします!

    オオニシ:人間だけではなくて、草木も野菜も、調味料も7段階に分けられるのね。調味料は、お酢とか唐辛子のような陰性から、昆布だしやえごま油などの中庸、醤油や塩、味噌、にがりなど、陽性のものまで。

    大段:ということは、それぞれの体調で、不足している食材や調味料を補えばいいということですか?

    オオニシ:そうそう。そのとおりです。自分を知り、必要な食事を知って補うということ。

    井尾:納得! 私たちのタイプもぜひ診断してください!

    ……ということで次回は、私たちふたりの体調診断、近いタイプの人にも参考になる陰陽レシピを紹介します。お楽しみに!

     

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    オオニシ恭子(おおにし・きょうこ)
    フード*メディスナー©。食養料理研究家の桜沢リマ氏に学ぶ。1981年渡欧。以来32年にわたり、東洋的食養法を基本としながらも欧州における素材と環境を取り入れた食養法「ヨーロッパ薬膳」の普及に努める。2013年1月より、奈良・初瀬の地に移住。女性のための食養生を考え、提案する「やまと薬膳」を主宰。それぞれのライフスタイルや体調を見ながら、その環境に適応した食事法を指導する。料理教室や各種オンライン講座等の詳細は、
    https://yamatoyakuzen.com/



    大段まちこ(おおだん・まちこ)
    フォトグラファー。かわいいもの、雑貨、ファッションなどをテーマに女性誌やライフスタイル誌で活躍。共著に『花と料理』(リトル・モア)などがある。
    http://odanmachiko.com/

    井尾淳子(いお・じゅんこ)
    フリーライター&編集。子育て雑誌の編集経験を経て、現在は書籍、Webコンテンツなどの編集、執筆を中心に活動。



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