日々の暮らしの中にある季節の移ろいを
白井明大さんの詩・文と當麻妙さんの写真で綴ります。
あなたのなかに
若菜を摘むのは
だれのため?
だいすきなひとに
今年も元気でいてほしくって
摘んだら一晩水に寝かせて
七日の朝に歌って叩いて
菜を切る音で
めざめるこころ
菜切り包丁に
白木の俎板
台所には
愛があふれている
ななくさなずな
わかなのかゆを
はるのえいきを
からだにどうぞ
歌いながら
七草粥をこさえるひとよ
あなたのなかに
若菜が萌える
季節の言葉:七草
二十四節気も小寒となり、寒の季節です。おお、さむ。
一月五日から九日は、七十二候*で「芹栄う(せりさかう)」の候ですが、せりといえば、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろで春の七草。
一月七日の人日の節句には、朝、七草粥をいただきます。
昔は前日の六日(旧暦の一月六日なので二月に入ってからですが)に、早春の野へ若菜摘みに行く慣習がありました。春まっさきに芽吹く草には陽の気が宿っていて、それをいただいて健康を願うのが、七草粥の心です。
大事なひとの、そして自分の健康を願い、あったかい粥をいただきましょう。
*七十二候……旧暦で一年を七十二もの、こまやかな季節に分けた暦。日付は2021年のものです。
白井明大(しらい・あけひろ)
詩人。沖縄在住。詩集に『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊賞)ほか。新刊に、詩画集『いまきみがきみであることを』(画・カシワイ、書肆侃侃房)。『日本の七十二候を楽しむ 増補新装版』(絵・有賀一広、角川書店)など著書多数。近刊に『三十三センチの時間』(Le phare poétique)。
當麻 妙(とうま・たえ)
写真家。写真誌編集プロダクションを経て、2003年よりフリー。雑誌や書籍を中心に活動。現在、沖縄を拠点に風景や芸能などを撮影。写真集『Tamagawa』。共著『島の風は、季節の名前。 旧暦と暮らす沖縄』(写真を担当、講談社)。現在、公式ホームページ Tae Toma Photographyにてオンライン写真展「KUDAKA」開催。
http://tomatae.com/