(『天然生活』2013年2月号掲載)
ハワイで味わう、わが家のお正月
元日にふさわしい、お雑煮と紅白なます。食べる場所は、毎年、決まっています。この献立からは、なかなか想像できないところです。
答えは、ハワイ。飛田さん一家は、20年来、ハワイで年越しが恒例なのです。
「なんだか、言葉にするとすごく贅沢みたいに聞こえて困るんですけれど。料理の仕事はほとんどが家の中だし、年末年始も家にこもっているとついつい仕事をしてしまうので、思いきって、『えいっ』と外に出てしまうんです。パソコンも持たずに、携帯も通じない状態で」
泊まるのは、キッチン付きの部屋。とはいえ、これだけのものをつくるには、かつお節や昆布など、必要なものがたくさんあります。スーツケースに食材まで詰めていくのは、大変なのでは?
「持っていくのは、手になじんだ包丁一本だけ。それ以外は全部、現地のスーパーで買えますよ。かつお節はもちろん、お餅や豆や柿だって売っているから大丈夫。あ、焼き網はさすがに備え付けられていないから、お餅はオーブンで。ちゃんと、おいしくふっくら焼けますよ」
旅というより、生活をそのまま2週間、ハワイに移動する感じです。
家族のためにごはんをつくり、みんなでおしゃべりをし、散歩に出かける。ふだん家で過ごすのと変わらない生活を送るのです。
だから、お正月はきちんと、お正月らしく。「明けましておめでとう」とあいさつをして、家族そろって、お雑煮をいただきます。
「やっていることは変わらなくても、場所が違うだけで、ずいぶんと気分転換になりますね。あちらの家はキッチンがオープンでとても広いから、いつもは手伝いなんてしない夫も気軽にキッチンに立つし、娘も楽しそうに、お手伝いをしてくれる。しゃべりながら、つくりながら、カウンターで手軽にそのまま朝ごはんを済ませたり。日本にいるときよりリラックスして、いくぶんかラフな雰囲気になりますね」
朝市に出かけて地元の野菜や色鮮やかな南国の魚に出合うのも、楽しみのひとつ。
料理の仕方はいつもと同じだけれど、素材が違うと、ここまで味わいも変わるのか と、新鮮な驚きがあります。
「あと、日本との違いがもうひとつ。オーブンがとても大きいので、何でもオーブンに放り込んじゃう。私の料理がいつもよりちょっとダイナミックになるのも、ハワイならではかもしれません」
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骨付きとりもも肉のはちみつ焼きのつくり方
味をなじませたら、オーブンにおまかせ。皮はパリパリ、中身はジューシー。
材料(4人分)
● 骨付きとりもも肉 | 4本 |
● レモン(輪切り) | 1個分 |
● ナンプラー | 1/3カップ |
● にんにく(すりおろし) | 2片分 |
● しょうが(すりおろし) | 2片分 |
● こしょう | 適量 |
● A | |
・はちみつ | 大さじ2 |
・しょうゆ | 大さじ1 |
● 玉ねぎ、赤玉ねぎ | 各1個 |
● クレソン | 適宜 |
つくり方
1 玉ねぎは皮ごと8等分のくし形に切る。Aは合わせておく。
2 バットにレモン、ナンプラー、にんにく、しょうが、こしょうを合わせ、もも肉を漬け込む。冷蔵庫で半日ほどおき、味をなじませる。
3 天板にもも肉を皮目を上にして並べ、玉ねぎ、2のレモンを周りに置く。200℃に温めたオーブンで15分焼く。一度取り出し、Aをはけなどでぬり、5分焼く。もう一度取り出してAをぬり、さらに5分焼いて色よく照りを出す。
4 器に3のもも肉、玉ねぎ、レモンを盛り、長さを半分に切ったクレソンを添える。
なますのつくり方
柿の淡い色が、上品な紅白なます。チキンとの相性は抜群です。
材料(つくりやすい分量)
● 大根 | 1/2本(皮をむいて約600g) |
● れんこん | 150g |
● 塩、酢 | 各適量 |
● A | |
・酢、砂糖 | 各1カップ |
・塩 | 小さじ1/2 |
● 柿 | 1個 |
つくり方
1 大根は厚めに皮をむいて5cm長さのマッチ棒程度の細切りにし、塩小さじ1/2をふって混ぜ、しばらくおく。
2 れんこんは皮をむいて薄く輪切りにし、大きい場合は半月に切り、水にさらす。
3 湯を沸かし、塩と酢を少々加えて2のれんこんをさっとゆで、ざるにあげて冷ます。
4 Aを混ぜて甘酢をつくる。
5 1の大根がしんなりして水けがたっぷりと出たら、よく水けをしぼって4の甘酢に入れる。3のれんこんも加えてあえる。
6 大根とれんこんに甘酢の味がしっかりと入ったら、大根のサイズに合わせて切った柿を合わせる。
*なますは3~4日保存可能。その場合は、柿を入れる前の5の段階で保存する。
お雑煮のつくり方
しみじみ奥深い、だしの味わい。とりスープを合わせるのがポイントです。
材料(4人分)
● だし汁(昆布とかつお) | 2カップ |
● とりスープ(*) | 2カップ |
● 塩 | 小さじ1/2 |
● ナンプラー | 小さじ1~2 |
● 小松菜(塩ゆでして水けをしぼったもの) | 2茎分 |
● 大根、にんじん | 各少々 |
● 黄ゆずの皮 | 少々 |
● 餅 | 4個 |
つくり方
1 小松菜は3cm長さに切る。大根、にんじんは3mm程度の厚さに切って、型抜きをし、さっとゆでる。
2 鍋にだし汁とスープを合わせ、塩とナンプラーで味つけする。
3 餅を焼く。
4 それぞれのお椀に、焼いた餅、小松菜、型抜きした大根とにんじんを1枚ずつ入れ、2を注ぎ入れる。仕上げに、ゆずの皮をあしらう。
*とりスープのつくり方
とり手羽先4本と2と1/2カップの水を鍋に入れる。ていねいにあくを取りながら20分ほど火にかけて煮出し、そのまま冷ます。とり手羽先は、肉をほぐして、あえものなどに使う
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金時豆のしょうが煮 バニラアイス添えのつくり方
家族全員、豆好き。このくらいの量は、あっという間に食べきります。しょうがの風味が、アイスクリームに大人のアクセント。
材料(つくりやすい分量)
● 金時豆(乾燥) | 300g |
● 砂糖 | 1カップ程度 |
● しょうが(薄切り) | 1片分 |
● バニラアイス | 適量 |
つくり方
1 豆は洗い、たっぷりの水に半日ほど漬けてもどす。
2 漬けた水ごと大きめの鍋に移し、中火にかける。ふつふつしてきたら、弱めの中火にし、豆が湯から出ないように水を適宜足しながら、30~60分ゆでる。
3 豆がつぶれるくらいやわらかくなったら、豆が少し出るくらいまでゆで汁を減らし、砂糖としょうがを加えて10分ほど弱火で煮る。火を止めて、鍋の中で冷ます。
4 器にアイスと3の豆を盛りつける。
*金時豆は3~4日保存可能。
りんごとチーズのサンドのつくり方
甘いものを食べない、飛田さん一家のお気に入り。お嬢さんはデザートに。夫婦ふたりは、おつまみとして。
材料(つくりやすい分量)
● りんご | 1個 |
● ブリーチーズ、またはカマンベールチーズ | 100g |
つくり方
1 りんごは4等分のくし形に切り、芯を取り除いてから、皮付きのまま3mm程度の厚さに切る。
2 2りんごの大きさに合わせてチーズをスライスし、りんごではさむ。
*りんごの変色が気になる場合は、塩水にりんごをくぐらせてからチーズをはさむとよい。
〈撮影/川村 隆 取材・文/福山雅美〉
飛田和緒(ひだ・かずを)
1964年、東京都生まれ。高校3年間を長野で過ごし、山の幸や保存食のおいしさに開眼する。現在は神奈川県の海辺の魚がおいしい町で、夫と娘との3人で暮らす。毎日無理なく続けられる、作りやすい食材を使った、シンプルでおいしい料理が人気。著書に、『常備菜』(主婦と生活社)、『飛田和緒さんのかぞくごはん』(小学館)、『飛田和緒の郷土汁』(世界文化社)、『いちばんおいしい野菜の食べ方』(オレンジページ)など多数。2020年11月に『くりかえし料理』の新装版 が扶桑社より発売。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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