• 東京郊外に生まれ、南信州に暮らすライター・玉木美企子の日々を綴る連載コラム。村での季節のしごとや、街で出会えたひとやできごと、旅のことなど気ままにお伝えします。今回は、写真とともに2020年のできごとをふりかえります

    懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認

    早いもので2020年も残すところあとわずか。今年はなにがなんだかわからない間にすぎさってしまった、と思われる方も多いのではないでしょうか。

    もちろん、私もその一人。「いったいなにをしていたのだろう……」と、もはや思い出せないような気がして、クラウドにしまってある写真データを見返してみました。

    するとそこは、今のところ最後となっている大きな旅や、変化しながらもそのなかで過ごした日々の様子が記録されていました。

    なによりこうして元気に過ごせているし、ぼちぼち幸せに暮らすことができたのかもしれない。そんな感謝の思いを抱きながら、写真とともに今年を振り返ってみたいと思います。

    画像1: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認

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    年が明けてからすぐは、奄美大島に自然栽培の黒糖を求める取材へ。長田佳子さんと、「泥染め」の体験も行いました。

    そして島から帰ってすぐ、メキシコに。メキシコシティの活気あふれるカルチャーに触れ、友人が暮らすサンクリストバル・デ・ラスカサスに滞在。はじめての中米訪問でした。

    思えばこのとき、この二つの旅をしていて本当によかった! 旅ができた、という事実そのものもありがたいことですが、奄美大島もメキシコも、土地の風土に根ざした独特の文化が息づいていて、深く印象に残る経験だったのです。

    天気も、足元の土も、食べ物も、そこで生まれているデザインもアートも、私の日常とは全く違う。だからこそ、面白い。今でもたびたび思い出し、再訪の日を夢見ています。

    画像2: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認
    画像3: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認
    画像4: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認

    メキシコから帰国したころから、一気に遠方との行き来が難しくなり。そこから気がつけば今まで、ほとんど関東地方には足を踏み入れていないわけです。ほぼ2拠点と言っていいほど、東京と村を行き来していたのに……。

    予定されていた仕事がたくさんストップになり、1ヶ月ほどでしょうか、ポカンとした時間がありました。この先どうなるのか、得体の知れない病への不安もあり、しばらくは放心状態に。

    でも、冬があたたかかったぶん、この春は蜂がとにかく元気で、蜂の巣別れ(分蜂)の取り込みに追われたり、梅仕事をしたり、「そうだ、今までできていなかったウッドデッキを作ろう!」と気合いを入れたころから、少しずつ前を向く気力が湧いてきたように思います。

    画像5: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認
    画像6: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認
    画像7: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認

    そして、遠くに行けないかわりに自宅とその周囲で、今まで忙しさにかまけてできなかった農作業や、暮らしまわりの充実ができました。

    いつもは大部分をお任せしてしまっていたお米づくりは、トラクターを運転して(!)代かきから参加。

    手づくりしょうゆは、少人数のグループに新たに参加し、友人の家に通って仕込みから行いました。もうすぐ、無事しょうゆ絞りができそうです。

    夫にお願いし、「キエーロ」と呼ばれている開放タイプのコンポスターを作ってもらったのも、暮らしを変える今年の大きな出来事だったと思っています。

    木の板で囲いを作って、光も空気も入るふたをつけるだけの、シンプルなコンポスター。しかしこれが予想以上に優秀で、恐ろしいほど虫が湧いたり、けものが寄ってきたりすることなく、生ゴミを分解してくれています。

    捨てるゴミの量が減り、すがすがしい気持ちもまた、予想以上のものでした。

    画像8: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認
    画像: 「キエーロ」と呼ばれる開放タイプのコンポスター

    「キエーロ」と呼ばれる開放タイプのコンポスター

    そうこうしているうちに仕事のほうもおかげさまで、今までとは違ったかたちで広がりを見せ、地域内をあちこち取材したり、遠方の方にもリモートでインタビューをさせていただいたり。なにかと慌ただしくしているうちに実りの秋が来て……。

    お米は去年を上回る収穫量、お味噌もおいしく仕上がりました。

    画像9: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認

    その後もはじめての小麦栽培に挑戦したり、石積みのワークショップにでかけたりと、「知ってみたかったけれどできていなかった」あれこれを少しずつ、垣間見ることができたかもしれません。

    そうそう、ひと気を避けて、今まで登ったことのなかった近所の低山に登ったり、屋外でのモバイルサウナを初体験したのも、今年の忘れられないできごとの一つです。

    画像: 屋外でのモバイルサウナ

    屋外でのモバイルサウナ

    2021年がどんな年になるのか、まだまだわかりません。

    けれど、今、私が一つ思うのは、6年前に「私たちがどう暮らしたいか」を考え、ここ長野県に暮らしの拠点を移していたことは、私たち家族にとってはとてもよい選択だった、ということ。

    それでもまだまだ、足元の豊かさを掘り起こせていなかったな、ついこれまでと同じく遠くを見てしまい、近くの宝に向き合えていなかったな、という反省も。

    同時に、自分の「足元」の範囲を広く、伊那谷だけでなく木曽や諏訪のほうまでも自分ごととしてつながってゆけたら、との期待もあります。

    もう一度、6年前ここへ来たばかりのときと同じような新鮮さと探究心をもって、2021年を心豊かにすごしたい。今ならきっと、それができそうな気がしています。

    この連載がはじまったのも、今年からのことですね。なんだかとても長い時間が経った気持ちです! お読みいただいたこと、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

    2021年も、どうぞみなさまお元気で。また、お会いしましょう。

    画像10: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認


    画像11: 懐かしささえ感じる写真とともに、2020年を再確認

    玉木美企子(たまき・みきこ)
    農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も

    <撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>



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