フランスパンのうまさが際立つサンドイッチを
パン好きを唸らせる絶品フランスパンの専門店「SONKA(ソンカ)」。そんなお店の名物に、フランスパンを使ったサンドイッチがあります。「生ハムとクリームチーズ」など定番5種類のほかに平日・週末限定品がありますが、いずれもつくり置きをしないのが店主、村山大輔さんの信条です。
「僕が考えるフランスパンのおいしさは、クラストがバリッとしていてクラムがもちっとしているそのコントラストがはっきりしていること。つくり置きすると、全体的に硬くなったり、具材の水分や油分がパンに染みておいしくなくなっちゃう」
サンドイッチの具材は、あえてこだわらないようにしているという村山さん。
「あくまでパンが自分のなかでの頂点。具材はただの補助で、目立ってほしくないんですね。もちろん最低限の仕事はしてもらわないといけないので、味見をしておいしいと思ったものだけを使いますが」
でも、ひとつこだわりといえるのは、具材に使う食材は近所の店やスーパーから仕入れるようにしていること。
「というのも、杉並区という場所を選んだのは、長年住み慣れた大好きな街だからというのが大きいですが、街に恩返しのようなことをしたいという気持ちがありました。近所のお店とつながりながらやっていくことで、それができたらと。微々たるものですけど」
サンドイッチというとついつい具材に目を向けがちですが、「ソンカ」のサンドイッチは、なるほどパンの味わい深さや、クラストやクラムの食感がしっかりと堪能できます。“最低限のおいしい具材”もしっかりおいしく、またそのおかげで、500円前後という懐にやさしいお値段になっていました。
遠回りの人生がもたらす味の深み
会社勤めを辞め、パン屋で2年間修業した後、ほどなくして店を始めた村山さん。修業と並行しながら、独学でパンの研究をしていたとはいうものの、どうしてこれほどの味わいを短期間のうちにつくり出せたのでしょうか。
「何が違うかは自分では正直わからない。工夫という工夫はほんとないんですね。フランスパン専門店であることとか、店の外壁をピンクに塗ったりとか、人と違うことをしたいというのはコンセプトやハード面だけ。パンに関しては、先人たちが一生懸命つくってきた歴史に僕も加わりたい、オーソドックスにつくりたいと思っています」
製法をお聞きすると、粉は国産小麦、酵母はイーストを使用、生地を冷蔵で長時間発酵させてから焼きあげるといいます。国産小麦を使うことや長時間発酵は、特別珍しいかというとそうではありません。
「意識しているのはパンのことだけを考えないようにしようということぐらい。たとえば学校を出てすぐにパン業界に入って、パンだけに身を捧げて生きているパン職人さんもいて、それはもちろん筋が通ってて素晴らしいと思う。
でも自分は音楽活動を長く続けていて、パンの世界に入るのが遅かった。だから、遠回りしてきたことを、強みにしなきゃいけないと思っていて。回り道して見てきた世界をパンに落とし込むことで、誰もつくったことのないパンになると思ってるんです」
回り道をしてきたからこそといえるもののひとつが、細かなルールに縛られないパンづくり。「発酵の温度帯は絶対この温度」、「分割は絶対この重量」など、決められたなかでパンづくりをする人も多いなか、村山さんの場合、漠然としたルールはありながらも、かなり自由にやっているのだとか。
「計量とか温度帯とかすべてとっぱらって、直感的にやっていることが非常に多いです。それで生地の具合が翌日おかしかったら、その時点で全力をかけて取り戻す」
小麦と塩と酵母と水。パンの中でも最もシンプルな、最小限の材料でつくられているフランスパン。だからこそ、つくり手がパンとどう向き合っているかが、味に違いを生むのかもしれません。店主のこれまでの人生が詰まった最高のフランスパン、どうぞ召し上がってみてくださいね。
<撮影/山田耕司 取材・文/諸根文奈>
SONKA(ソンカ)
電話番号(非掲載)
10:00~14:00(売り切れ次第閉店)
※現在はイートインは休止中
火・日休み
東京都杉並区成田東2-33-9
最寄り駅:東京メトロ丸ノ内線「南阿佐ケ谷」「新高円寺」
http://www.sonka.tokyo/