(『天然生活』2015年11月号掲載)
1 デトックスできる収納を目指す
日々、どうしても入ってくる物たち。新陳代謝を活発にすることが、「持たない暮らし」ではとても重要。金子さんが気をつけているのは、「捨てながらしまう」こと。
「物をどこかにしまうときは、かたわらにごみ箱を。これはしまうべき? それとも捨てるべき? と考えながら収納する習慣が身につくといいですね。また、収納の一部に、処分したり人にあげたりする物を置いておく場所を設けるのがおすすめです」。
物の行き場を保留するスペースが確保されていると、「なんとなく」持ちつづけてしまう物の排出が促されそうです。
「楽に減らすには、不用なものが出ていきやすい環境を整えてあげることが大切ですよ」
2 部屋の7割は平らな面にする
「部屋がすっきり見えるポイントは、平面がたくさんあること。インテリアのプロに聞いた話ですが、家具を床面積の25%までに抑えるのがベターなのだそう」
家具の高さや色調をそろえたり、床にじか置きするものを減らしたり、なるべく凹凸を減らすと部屋が広く開放的に見えると話します。
散らばりがちなこまごましたものは、ふた付きの箱やかごの中にまとめて平面を多くして。定番のものを選べば、ライフスタイルの変化に合わせて数を増減できます。
また、家具も低めのものを選ぶと、視界が広がるのだとか。
「平面が多いと掃除もしやすくて苦になりません。掃除や片づけが苦手な私でも、習慣化できているくらいですから」
3 自分の家は物の通過点と考える
物をため込まないポイントは、「自分の家は物の通過点にすぎない」と考えることだと金子さん。
「その物を必要な間だけ、使っている期間だけ、家にいてくれればいい。だから、いらなくなったら、次に必要な人のところにいってくれるのがベストですね。そうでなければ、しかるべき処理のできるところに」
物をどんどん手放していると、必要なものが入ってくるようになるのがとても不思議。必要だと思っているものに、偶然に出合う、人から譲られる機会が多くなるのだと話します。
「子育て期は、とくにそう。子は成長し、必要なものが刻々と更新されていく。そんな時期は、人に譲り、譲られ、物をまわしていくことが大事です」
4 すぐ買うよりも「暮らす技術」を
用途に即した便利な道具がそろっていれば事足りる作業も、「持たない暮らし」ではそうはいきません。
「何かが必要になったとき、すぐに買うのではなく別の方法で切り抜けられないか考えるクセをつけたいですね。いずれにせよ、使い道が限定された道具は、使用頻度は限られている。それに収納スペースを割くのはもったいないです。たとえば、りんごの皮むき器だったり、ワッフルメーカーだったり……。最初は物珍しくて使っても、のちのち、結局、使わなくなってしまう」
工夫して、「いまあるもの」で済ます、普通より手をかけて乗りきる、そういったことが「暮らす技術」だと金子さんは表現して、大切にしています。
5 私のミニマムリストをつくる
服はクローゼットに入る分だけ。たとえば、シャツは3~4枚、パンツは2~3本と、金子さんのワードローブは、しごくミニマム。ここまで絞るのは難しいとしても、減らす努力をしないと、服は増えつづける一方です。
「自分の行動パターンに合わせて、ないと絶対に困るものを書き出し、ミニマムリストをつくるといいですよ」
すると、自分にとってそんなに必要ではないようなものがみえてくるといいます。
「持ち物、各カテゴリーのなかから、一個選ぶとしたらどれ? と考えるのも、いい訓練に」
たったひとつを考えることで、自分がその物に求めている機能やデザイン、一番大切にしている核の部分がみえてくるといいます。
6 毎日、使うものの質を上げる
最小限に物の数や種類を限定するのだから、持ち物は厳選しないといけません。
「毎日、使う、目に触れるものはなおさら。たとえば、食器。お客さんが来たとき用にと、ちょっといい器をそろえ、しまっていることってありますよね? でも、お客さんが来るのなんて、年に数回程度。だから、うちは、お客さん用の食器はありません。その代わり、毎日使うものこそ、ちょっと高くても、本当に気に入ったもの、好きなものを使うようにしています」
日に何度も使うグラスは、江戸切子の工房を訪ね、家族全員分をそろえました。美しい佇まい、手や唇に当たる感触など……。使うたびに、「いい気分」にさせてくれるのです。
7 買うときは、とことん楽しむ
いざ何かを買うとなったら、とことん吟味し、買い物を楽しみましょう。まずは、欲しいものをリストアップして必要なものを明確にしておくと失敗がない、と金子さん。
「寸法や色、素材など、欲しいものの特徴を書いておくと、衝動買いやサイズ違いなどの失敗が抑えられます」
幾ら出せるのか? という予算を決めておくことも大事です。
「いまはネットでも簡単に物が買えてしまいますが、気をつけないと、単に物とお金の交換になってしまいます。気に入ったお店で、お店の人と会話を楽しみながら、実際に触って買いたいもの。そのなかで、物に対する知識や情報も増え、買ったあとの、長く大切に使うことにもつながります」
8 もらわない、ストックしない
特売日だからとラップやティッシュを買い込み、必要以上の量をストックしていませんか?
それが収納スペースを圧迫し、小さなストレスを生んでいるならもったいない話です。これらは腐るものではなく、「切らしたら困る」という心理から、ついついためがちですが、ラップを一日で使いきってしまう事態はまれ。なくなったら足せばいい、と金子さん。
「わが家では台所の棚に非常食の缶詰をストックしていますが、これも必要最低限に。賞味期限をコマメに確認して、使いながらひとつ足し、を繰り返しています」
タダでもらえるティッシュやビニール袋なども、ストック量を決め、むやみに増やさないことを心がけましょう。
9 代用する、借りる、ナシで済ます
何か物が必要になったときに、まず、この3つを思い浮かべ、買わずに乗りきれないか、トライを。
金子さんが積極的に取り入れているのは、「借りる」という方法。使用頻度が限られていたり、期間が限定されていたりするものであれば、だれか貸してくれる人がいないか、探してみるのも有効な手段。
「これを行うには、日頃からのコミュニケーションが大切ですね」
時と場合によっては、業者に借りることも。
「うちは、お客さん用の布団は、業者に借りることにしています。そのほうが高くつくかもしれませんが、年に1~2度しか出番のない布団に大きなスペースを割いているほうが、よっぽどもったいないと私は思うのです」
10 「つまらないもの」を買わない
「持たない暮らし」は「節約生活」にはあらず。
「つまらないもの」ではなく、本当に好きなものだけに囲まれて暮らすことこそ心地いいのだと提案しています。
とりあえず、安いからと買った「間に合わせ」のものは、使いながらどこか違和感を覚えるもの。一見、小さな違和感でも、積み重なればストレスに。
「たとえば洋服。私は、セール品にはまず飛びつかないことにしています。安さの代償として、サイズや色など何かしら妥協してしまうことはありませんか。場の空気にのまれて、的確な判断も鈍りがち。ゆっくり店員さんに相談しながら買ってこそ多少高くても長くつきあえる一枚に出合えるので、結果的には得だと思います」
〈撮影/柳原久子(https://water-fish.co.jp/) 構成・文/鈴木麻子(fika)〉
金子 由紀子(かねこ ゆきこ)
1965年生まれ。出版社での書籍編集者を経てフリーランスに。1973年、第一次石油ショックで大人たちの買いだめにショックを受ける。自らの出産・育児経験から「現実的なシンプルライフ」の構築の傍ら、All About「シンプルライフ」初代ガイドを務める。著書に『暮らしも人生も整う! クローゼットの引き算』(河出書房新社) amazonで見る 、『50代からやりたいこと、やめたこと』(青春出版社) amazonで見る 、ほか20冊以上。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです