「レシピ開発はどのようにしているのか」ということをよく聞かれる。
わたしは仕事のためだけに試作などをせず、家族のごはんやお弁当づくりで実際につくって気に入ったものができると、何度も何度も繰り返してつくり、家族にいやがられるというパターン。
「またか」と言われると、そう言われないように味を変え、切り方を変え、同じような味だけれど調理法を変えるというようなことを繰り返し、そこからレシピが生まれている。
旅先で食べたもの、友人宅でごちそうになったもの、耳に入ってくるおいしい話でいいなと思うものはすぐに試す。「おいしかったものをもっと食べたい」「食べたことはないけれど食べてみたい」と思うと気もそぞろ。台所に直行する。
想像していた味ができるとは限らないけれど、そんなチャレンジも刺激になって、そこから新たなお気に入りが生まれることも多いから、やめられない。家族の反応は素直に聞き、次につなげる。結局は自分好みの味なのだけれど、食べてもらう相手の意見から広がっていく味もある。
料理の失敗??? なんて今はない。というか、失敗と思わないことにしている。
若い頃は思っていた味にならないとへこんだり、せっかくできたものを捨ててしまったりしたこともあったけれど、それでもなんとかおいしく食べられるように工夫することを覚えたし、素材が合わなかったのだと逃げることにしている。
どうにもならない失敗といえば、真っ黒に焦がすくらいかな。それも最近はなくなりつつあるのはタイマーのおかげ。火元から離れるときには必ずこまめにタイマーをかける。お湯を沸かすときにもタイマー。
年のせいか、お湯を沸かしていることをすっかり忘れたなんてことも。同時にふたつ、3つのことを進められなくなってきた。
やれやれ、そんなことの連続。
<撮影/邑口京一郎>
飛田和緒(ひだ・かずを)さん
東京都生まれ。高校3年間を長野で過ごし、山の幸や保存食のおいしさに開眼する。現在は、神奈川県の海辺の町に夫と高校生の娘と3人で暮らす。近所の直売所の野菜や漁師の店の魚などで、シンプルでおいしい食事をつくるのが日課。気負わずつくれる、素材の旨味を生かしたレシピが人気の料理家。
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