• 料理研究家・飛田和緒さんの「自分の言葉で伝えたい」、年を重ねた今だからこそ思うこと、日々のことを綴ってもらいました。教室に通っている着物のお直しについて。長く受け継がれていく着物について思いを馳せます。

    最近、〝ダーニング〞という言葉をよく目にする。服にあいたほつれや穴をふさぐ手法で、色やデザインで素敵なワンポイントに生まれ変わる、というもの。

    そのやり方や、こんなふうに直してみたっていう事例が載っている記事をくまなく読み込んでは、いいないいなと思ってはいるのだが、実際はというと自信がない……。

    穴のあいたセーターや襟がすり切れるほど着ているお気に入りのシャツをどんどんとため込んではいるものの、まったくスタートが切れていない。いつの日かチャレンジしたい、まだ憧れにとどまっている。

    画像1: 直して使う、古いものをいただく|飛田和緒さんの「おとなになってはみたけれど」

    と、この原稿を書いている最中に、娘の学校の白いソックスに穴発見。毎日のように学校の購買で買ってくるよう言っても、いっこうに買う様子がないので、やってみた!

    うまくできたかどうかはわからないが、穴は完全にふさいだ。ちょっぴりもこもこしていてかわいい。と思っているのは自分だけ……。

    娘からは「えーっ、なにこれ」って不評だったけれど、それでも新しい靴下を買ってこないのだから、案外気に入ってくれたのかもしれない。

    画像2: 直して使う、古いものをいただく|飛田和緒さんの「おとなになってはみたけれど」

    着物の直し教室に通っている。若い頃に着ていたものを娘サイズに直すべく奮闘中。袖や幅出しができるものに限られるが、直す部分だけ、ほどいては縫い直すを繰り返す。

    ほどく順番がいつまでたっても覚えられず、毎回先生を困らせているが、お付き合いいただく。ミシンで縫ってしまうところもあるけれど、ほとんどは運針。ひたすら針を進めるのみ。

    着物を着ていると、どこからともなく、着物が集まる。おばあちゃんの着物を着てくれる人がいないからもらってほしい、生前贈与など、古い着物をいただく機会が多くなった。その着物ももしかしたら譲ってもらったり、さらに古いものだったりする可能性もあり、着物は本当に長く長く着てはつながっていくものだと実感する。

    <撮影/邑口京一郎>


    飛田和緒(ひだ・かずを)さん

    画像: 飛田和緒(ひだ・かずを)さん

    東京都生まれ。高校3年間を長野で過ごし、山の幸や保存食のおいしさに開眼する。現在は、神奈川県の海辺の町に夫と高校生の娘と3人で暮らす。近所の直売所の野菜や漁師の店の魚などで、シンプルでおいしい食事をつくるのが日課。気負わずつくれる、素材の旨味を生かしたレシピが人気の料理家。

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    画像3: 直して使う、古いものをいただく|飛田和緒さんの「おとなになってはみたけれど」

    おとなになってはみたけれど(飛田和緒・著/扶桑社)

    “おとな"には十分な年になった今だから思うこと、日々のことを、海辺の家に住む料理家が綴るエッセー集。

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