土鍋と鉄のフライパンは、万能の調理器具
「少ないモノを長く大事に使う」というポリシーは、キッチンでも一貫しています。
煮炊き用の調理道具は、土鍋と鉄のフライパンのみ。土鍋はサイズ違いを3つ、フライパンは大小の2つという少数精鋭です。
以前、身体を壊したことをきっかけに、食生活を見直したというわたなべさん。
普段は、土鍋ごはんと味噌汁、手づくりのぬか漬けをベースに、ささっとつくれるおかずを一品プラスというスタイルです。
「遠赤外線で食材をじっくり芯から加熱する土鍋でつくる料理は、おいしいだけでなく、私自身の身体も温めてくれて、冷えがずいぶん改善されたと思います」
さらに、鉄のフライパンは、ていねいに使えば一生モノで鉄分もとれると、いいこと尽くし。
土鍋はごはんを炊くほか、汁物や蒸し物に大活躍。フライパンではソテーや炒め物のほか、現地のスパイスを使ったカレーも美味しくできるといいます。
食器に関しては、お客さまが多いこともあって少し多めですが、購入するときは量産品ではなく、作家さんのものを選ぶようにしているそう。
「買い物は私にとって投票活動みたいなもの。信頼できるつくり手さんに一票投じようという気持ちで買っています」
ネパールのつくり手に還元したいという思いを胸に、自らのブランドでカシミヤ製品やお香などを扱っているわたなべさんならではの信条です。
スパイスミックスを使って、食欲アップのひと皿を
ネパールに住んでいた頃は、毎日のように「ダルバード」を食べていたそう。
「ダルバード」とは、ご飯とスパイシーなおかずや漬け物を盛り合わせたワンプレートに豆スープがついた、ネパールの定食のようなもの。
現地では肉料理用、魚料理用など、便利なスパイスミックスが売られていて、食材と一緒に炒めたり煮込んだりすれば、簡単に一品の出来上がり。
わたなべさんもスパイスミックスを使っておかずをつくることがよくあるとのこと、お願いして「ある日の食卓」を再現してもらいました。
基本のごはんや味噌汁に加えて、本日のメインは「鱈のスパイシーソテー」。
使うのはサブジマサラ(ネパール語で野菜用スパイスミックス)です。野菜用ですが、魚にも合うとのことで、楽しみです!
つくり方は、本当に簡単!
【鱈のスパイシーソテーのつくり方】
1 鱈の切り身に塩を振ってしばらく置き、軽く片栗粉をまぶす
2 さらにスパイスミックスをまんべんなく振りかける
3 フライパンを熱し、オリーブオイルを回し入れる
4 魚を皮目から焼き、焼き色がついたら裏返す
5 蓋をして火が通るまで蒸し焼きにする
フライパンがジュワッといい音をたてるのと共に、食欲をそそるスパイシーな香りが鼻をくすぐります。
出来上がりをご相伴させてもらうと、カレーを思わせるうま味がたまりません!
淡泊な鱈がスパイスマジックで奥深い味わいになり、ごはんがどんどん進み、絶妙な漬かり具合のぬか漬けや刻みネギたっぷりの味噌汁と相まって、箸が止まりません。
「素材のよさを活かしてちょっと手を加えるだけの、シンプルな料理が好きです」というわたなべさん。そんな料理が、毎日の食卓には一番のご馳走かもしれません。
それにしても、スパイスミックスは便利ですね。
「カレーにスープに野菜炒めに、いろいろ使えますよ」とのこと、ぜひ試してみたいと思います。
〈写真・文/高瀬由紀子〉
わたなべ かおり
ai, 主宰・デザイナー。東京でフリーグラフィックデザイナーとして活動中に、世界を一人旅してまわる。7年間のヒマラヤ暮らしを経て、2010年に帰国。東京を拠点に活動後、2014年に香川・仏生山へ移住。ネパールの作り手との商品製作を続けながら、極楽仏生山暮らしを満喫中。
http://aistore.jp