素材をいくつも重ねて、立体感のある味に
東京・下北沢駅から少し離れた住宅街にある「boulangerie_lanis(ブーランジュリー・ラニス)」は、フランスのパティスリーや都内のフレンチレストランなどで修業を重ねた、原昇吾さんのお店です。パンだけでなく、フランスの香り漂う焼き菓子まで幅広く揃いますが、どれも本格的なお味。
フレンチレストランで働いた経験を持つ原さんの手腕が発揮されるのが、旬の野菜を使ったタルティーヌ。「味に立体感を出したい」と、多彩な素材を使ったタルティーヌは、まるで一皿の料理のよう。
「アスパラとエビの組み合わせは定番なんですけど、サワークリームとフレンチマスタードとハーブでつくる、グリーンフレンチマスタードというソースが下に敷いてあります。ハーブはディルを使っていますね。パルメザンチーズとモッツァレラチーズをかけ、旨みの補強でベーコンと玉ねぎも入っています。見えないんですけど、食べた時の感動を求めて、いろいろとのっけちゃってますね(笑)」
いただいてみると、アスパラとエビの味わいとともに、サワークリームの酸味、ディルの爽やかな香り、チーズのコク、玉ねぎとベーコンの旨味が一体となって、なんとも奥深い味わいでした。
パティシエ時代に培ったものを生かして
もともとはパティシエを目指していたという原さん。製菓学校を出て、フランスのパティスリーで修業、帰国後は荻窪の名パティスリー「ル・クール・ピュー」で働くなど、フランス菓子についての知識も経験も豊富です。
だからこそ「クリームパン」は、菓子職人のセンスが生かされた逸品。ぽってりとした濃厚なクリームからはラム酒が香り、まさに大人のクリームパンといったところです。生地はブリオッシュ生地ですが、ルヴァン種を配合することで熟成した旨みを持たせているのだそう。
ラム酒の香りがすごくいいのでたっぷり入っているのかと思っていたら、「たくさんではないです。ただ、ラム酒は製菓用ではなく、お値段のいい“飲むやつ”ですね。香りがいいラム酒なんです」と原さん。
「スパイスやハーブ、お酒の香りをちょっときかせるのが好み」というだけあって、繊細な香りが楽しめるパンや焼き菓子類が多いのもラニスの魅力です。
お菓子と料理の知識や経験をパンに繋げて、唯一無二のパンを追求するラニス。そして、隅々まで手を抜かないからこそ、これほどまでに味わい深いパンをつくることができるのだと思いました。これからも新たなおいしさに出合いに、何度も足を運びたくなるに違いありません。
<撮影/山川修一 取材・文/諸根文奈>
boulangerie_l’anis(ブーランジュリー・ラニス)
03-6450-8868
12:00~20:00
木・金休み
東京都世田谷区代沢3-4-8 RAIROA 1F
最寄り駅:小田急小田原線・京王井の頭線「下北沢駅」
https://www.boulangerie-lanis.com/