犬との散歩は1番のコミュニケーション
行動するか、待つか。葛藤の中で起こった事件
クレートの奥にベタリと張り付いて怯えるアビーと、いったいどうやってコミュニケーションを取ればよいのだろう。
アビーだけのパーソナルスペースを確保した次の課題はそれでした。
保護犬に関わらず“犬との散歩は1番のコミュニケーション”とよく目にします。
散歩はお互いが同じ方向に歩くことで、面と向かわず一緒の時間を共有することができます。
その一方で、まずは飼い主や家などの環境に慣れることが大切で、散歩は自主的にクレートから出てくるようになるまで待つべきという意見も耳にします。
僕もはじめはアビーがクレートから出てくるまで気長に待とうと思っていたのですが、半年、1年以上にわたり出てこない犬たちをSNSなどで見ると、本当に自分はそんなに待つことができるだろうかと不安になり悩みました。
そんな日々がしばらく続いたのですが、ある朝ご飯を与えに行くと、床に血が数滴落ちていることに気づいたのです。
その少し前から身体がとても痒そうだったので、まさか血が出るまで掻いたのではと思い、とにかく薬を塗らなくちゃ! という一心で妻と協力してアビーをクレートから引きずり出しました。
結果、体を掻きむしったわけではなく、ヒート(犬の生理)が原因だったのですが、お腹から脚にかけてたくさんのひどい汗疹ができていました。
これは痒いはずだ……ここまで気づかなかったことを後悔したと同時に、アビーに触れられないままでは彼女の健康を守ることができないと気付かされたのでした。
それが散歩に踏み切るきっかけになりました。
いよいよ散歩開始! 外の世界へ
初めての散歩にチャレンジしたのは猛暑が続く8月。
暑さを避けるためAM5時に起床して妻とあれこれ準備。
必死に嫌がるアビーに若干心が痛みつつ、ハーネスと首輪を付けてそれぞれにリードを装着(散歩や人慣れしていない保護犬は首輪やリードが一度外れると当然呼んでも戻ってこないので必ずダブルリード)。
自分から歩こうとしないので抱っこして玄関まで連れ出し(やはり心臓バクバク)、いざ外の世界へ(実際こちらもドキドキ)!
きっと意地でも動かないだろうという我々の予想に反し、ドアを開けると挙動不審になりながらも歩いたのです!
人通りの少ない道を思いのほか順調に歩けていたのですが、途中でリードがポールに引っかかりアビーがパニックになるというアクシデントが発生。
呼吸が急激に荒くなり、地面にへたり込みそのまま立ち上がれなくなってしまいました。
抱きかかえて足早に家に戻ると玄関で思い切りお漏らし。
そんなドタバタ劇からのスタートでしたが、散歩を始めてからのアビーの成長は本当に著しく、“犬との散歩は1番のコミュニケーション”という意味を身をもって実感することができました。
僕たちは若干の強行突破感がありましたが、飼い主が犬の状態や性格を見極めたうえでどうするかを考えた方がよいのかなと思います。
次回は散歩を始めてからのアビーの成長について書きたいと思います。
オカタオカ
犬と車が好きなイラストレーター。宮崎生まれ、鹿児島育ち。現在は東京都在住。桑沢デザイン研究所卒業。雑誌や書籍などを中心にイラストレーションを手がける。バンド“すばらしか”の加藤寛之とのポッドキャスト番組『クルマのふたり』も配信中。
インスタグラム:
@okataoka(イラストレーション) @abbie_in_the_life(保護犬日記)
犬を飼いたいと思ったときに、ペットショップで「買う」だけでなく、保護犬を「迎える」という選択肢もあるということを広く伝えたい。そんな思いから生まれた1冊です。
保護犬を実際に迎え入れた方々の、ありのままの暮らしを楽しく伝えることで、保護犬たちの魅力を伝えるとともに、少しでも保護犬を迎えるきっかけとなればと願っています。