(『機嫌よくいられる台所 家事をラクにするためのマイルール』より)
台所をお母さんの領域にしない
山﨑夫妻が新居を建てることになった11年前。当時、妻の瑞弥さんが何よりも希望していたのは、1階の半分のスペースを占める「大きな台所」でした。台所を中心に家族が集い、暮らす。しかしその憧れは、実際の生活を想像してプランニングを進めるなかで、少しずつ変化していったといいます。
「田んぼの農作業だけでもクタクタなのに、帰宅後はパソコンを使った事務作業、その合間に家事をして子どもの世話もすると考えたら、私の理想の台所では大変すぎると思ったんです。素敵だけど、今の私には合っていない。もっとコンパクトで効率よく動ける台所の方が、向こう20年くらいの自分には必要なんじゃないか、って。それでスペースをかなり縮小しました。その後、娘が生まれて生活はさらにバタバタ。今となっては『小さな台所』にしておいてよかったと思っています」
それまでは炊事の一切を瑞弥さんが担当していましたが、新居に引っ越すにあたり、仕組み自体を変えることを提案。設計の段階から「夫も妻も家事がしやすい」ことを念頭に置き、家の造りを決めていきました。ふたり並んで立っても作業がしやすいものの配置や動線、シンクの高さ、通路の幅。「あれはどこ?」と聞かれることなく作業ができるよう、収納のシステムにも工夫を凝らします。
「当時、息子はまだ2歳。私は慣れない子育てでヘトヘトでした。家事に手が回らないからついイライラするし、そうすると子どもは余計に泣く。さらに家族の空気が悪くなる、という負のループから抜け出す方法が全然わからなかった。それで、台所をお母さんの聖域にしないようにしようと決めたんです。『このままじゃ好きな料理が嫌いになる。一緒にやって!』と夫に伝えました」
〈撮影/公文美和 文/片田理恵〉
当記事は『機嫌よくいられる台所 家事をラクにするためのマイルール』(家の光協会)からの抜粋です
山﨑瑞弥(やまざき・みずや)
米農家。茨城県と埼玉県の2か所で、農薬や化学肥料をほとんど使わない米作りを行っている。収穫した米は「ひなたの粒」と名付けられ、夫婦が立ち上げたWebサイトで直接販売するほか、全国各地の取り扱いも。自他ともに認める台所道具好きで、料理家や陶芸家らとの親交も深い。著書に『お米やま家のまんぷくごはん』(主婦と生活社)がある。夫と中学生の息子、小学生の娘との4人暮らし。
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