素材の力強い味わいが圧倒する、個性派パン
小麦の香り高く滋味あふれるハード系パンが、パン好きたちを魅了し続けるお店「パーラー江古田」。イタリアのバール感覚で利用できるのも魅力で、お店のパンを使ったサンドイッチセットやトーストセットを、コーヒーやお酒とともに朝から一日中楽しむことができます。
最近では、「パーラー江古田」の出身者がパン呑みを楽しめるお店を次々と開店させているのが、パンの世界ではもっぱら話題。「まさもと」「チェスト船堀」などがそうですが、その親分的な存在として、圧倒的な存在感を放っています。

テイクアウト用のパンや焼き菓子は、毎日30種類ほど揃います。ピリッとコショウが効いた「カシューナッツと黒こしょう」をはじめ、お酒に合うパンも充実

2006年にオープンし、2015年近隣に移転。木造の一軒家をリノベーションしたお店は、趣のある佇まい

店内中央には薪ストーブが置かれ、木の風合いをいかした素敵な空間が広がります

店主の原田浩次さん。「パーラー江古田」から歩いてすぐの所にオープンさせた、自然派ワインの角打ち兼販売所「パーラーさか江」にて、お話を聞きました
おもに北海道産の小麦を使い、自家製のレーズン酵母とルヴァン種(小麦粉から起こした天然酵母)で焼き上げるパンは、小麦の味が力強く奥行のある味わいです。10年ほど前に石臼を導入し、お店で使う全粒粉のほとんどは石臼で挽いているのだとか。
「石臼を買った当時は、玄麦は手に入りにくかったし、石臼で挽いた麦がどんな風になるかとか、情報やデータもありませんでした。本当に石臼で挽いたら香りがいいのか、やってみたかったという感じかな」

店の奥に鎮座する石臼。石臼で挽いた全粒粉は、「全粒粉のくるみパン」「カンパーニュ」などに使われています

小麦を挽いている様子を、間近で見ることができるのも楽しい

全粒粉入りの「ブルーチーズとくるみのパン」。たっぷり入ったブルーチーズの芳醇な香りとコクがたまらない、ワインによく合うパンです

「全粒粉の食パン」は、毎日予約がたくさん入る人気の品。きび糖、牛乳、バターが入り、ふわふわとしたやわらかな食感
「でも、石臼挽きじゃなきゃいけないとか、製造方法や材料でひとつのものにこだわってはいなくて。その時できるだけいいものをつくるために、限られた環境や条件の中で、お店の武器になることも考慮しながら、製造の工程や材料を決めていきます」
そんな風に柔軟にパンづくりを考えながら、続けているのが、サンドイッチに使うサルシッチャやハム、パテ、マスタードなどを手づくりすること。素材の生きた味わいは、サンドイッチを一層滋味あふれるものにしてくれます。
「おいしいものをつくってくれる人がいなかったり、頼む人脈もお金もなければ、自分でやるしかない。いい材料が手に入ったらやるかとか、そんなノリですね」と、おいしいものをつくり出すには、手間暇のかかる作業も苦にならない様子。

ワイン漬けのレーズンとクルミがぎっしり入った「レーズンくるみ」。みずみずしく香りのいいレーズンを、ライ麦を配合した旨味の強い生地が包み込みます

「季節のタルト」「ピーカンナッツのタルト」など、デザートにぴったりなタルトも

皮はパリッ、中はもっちりの「レーズン酵母のフランスパン」。すっきりしつつも、小麦の甘さがたっています
店に入ると目に止まるのが、チーズの入ったショーケース。おいしいものに敏感な原田さんが選び抜いた、岡山県の吉備高原で放牧酪農とチーズづくりをする酪農家「吉田牧場」のチーズです。そのほかにこだわりの調味料も扱っていて、まさにおいしいものの宝庫といった雰囲気。

名高い料理人からも高い支持を得る「吉田牧場」のチーズ。この日は1年以上熟成させたオリジナルの「マジャクリ」や、「ラクレット」などが並んでいました

レジ横には、「クラタペッパー」をはじめ、厳選した醤油や味噌などの調味料が並んでいます
何かにこだわりすぎず、「そのときつくることができる最上のものを」と、手や頭を動かし続けているからこそ、その魅力は衰えることなく、増すばかりなのでしょう。
原田さんは、小竹向原にある保育園からの要望で、保育園に併設のカフェ「まちのパーラー」も運営。そちらでもパンや自家製サルシッチャなどが楽しめるので、ぜひ足を運んでみてださいね。

<撮影/山川修一 取材・文/諸根文奈>
パーラー江古田
03-6324-7127
8:30~18:00
火休み
東京都練馬区栄町41-7
最寄り駅:西武池袋線「江古田駅」