• スーパーやコンビニで、いつもの買い物ついでに、ついつい買っちゃうおやつ。昔からずっと好きだったあの味、いま見てもかわいいパッケージ。無意識に選んでいるようでいて、そのおやつの先には大切な思い出や、忘れられないエピソードがありました。今回は、山本ふみこさんの、森永製菓「おっとっと」のお話。

    自宅に常備している〈おっとっと〉

    三鷹のバーでの出合い。

    「10年くらい前のことかな。当時住んでいた三鷹に、ひとりでも気軽に行けるような素敵なバーがあって。そこでは、おつまみが3種類から選べるようになっているんです。ご主人お手製の和え物と、チョコレートと〈おっとっと〉からふたつ選ぶ仕組みで。それであるとき、ふと、〈おっとっと〉を頼んでみたの。私はウイスキー派なんだけど、とてもいい具合に合ったんです。ちょっとおかわりしたくなっちゃうくらい! もちろんそれまでも〈おっとっと〉があることは知っていたし、人が食べているのも見ていたのだけど。私はこうして遅まきながら出合って、大好きになって、それから自分でもよく買うようになったんです」(山本ふみこさん)

    長年その存在を知りながら、食べたことのないものって意外にありますよね。

    山本さんは、なんとそれが〈おっとっと〉でした。三鷹のバーで出合って以来、おやつとして食べたり、口寂しいときに食べたり、もちろん自宅でもお酒のつまみに食べたり。
    キッチン戸棚の裏に、5連タイプの〈おっとっと〉を吊り下げて、いつでも食べられるように常備しているんだそう。

    「最近、自宅でウイスキーを飲むときは、ロック。〈おっとっと〉は、お盆のような皿にざざっと開けて『今日はかにがいっぱい!』とか、そういう楽しみかたをしています。どんなに食べたくても、ひと袋で我慢。人って、おやつにしがみつきたくなる神経のときってありますよね。お腹が空いたとか、口寂しいだけじゃなくて、場面転換をしたい気分のとき。そこで食べ過ぎるのはまずいので、5連タイプ食べきりサイズを常備しているんです。食べ応えがある割に、罪悪感もないですしね」(山本さん)

    揚げない3Dフィギュアスナック!?

    画像: 1982年発売当初の〈おっとっと〉。(画像提供:森永製菓)

    1982年発売当初の〈おっとっと〉。(画像提供:森永製菓)

    「スナック菓子というと、通常、油で揚げるのが一般的。ところが〈おっとっと〉は、これまでのスナックの発想とはまったく違う、オーブンで焼いてふくらませるスナックというところが特徴なんです。その形が唯一無二なので、商品担当者が『3Dフィギュアスナック』と呼んでいるほど。

    オーブンで焼くと中が膨らむ〈おっとっと〉の元になるシート(パイシートのようなもの)を開発し、当時の女子中高生に試作品を見てもらったところ歓声が上がったので、これはいける! と商品化に前進したというエピソードが残っています。でもそこからは、割れてしまったり、ふくらまなかったりと、簡単にはうまくいかなかったようです」(森永製菓 菓子マーケティング部/村瀬光隆さん)

    当時、健康志向、自然志向の傾向にあった世の中で、魚に目をつけたところが商品開発の始まりだったのだとか。
    味付けもできるだけシンプルに、未就学児のお子さんでも安心安全に食べられるノンフライおやつというところが、現在まで長く愛されている理由のひとつなんですね。

    画像: 発売当初のパンフレット。(画像提供:森永製菓)

    発売当初のパンフレット。(画像提供:森永製菓)

    「開発に時間のかかった商品なので、ネーミングにもこだわりました。最初は『うおっこパーティー』とか『お菓子の魚屋さん』、それに『魚の学校』なんてアイデアが出たものの、それじゃダメだとなり、行き詰まった担当者が、悩みに悩んでお酒を飲みはじめてしまったんです。居酒屋でお酒を注ごうとしたところ、こぼれそうになって『おっとっとっと!』といったところから、それいいんじゃない!?と商品名が決まったという逸話も残っています」(村瀬さん)

    酒場から生まれた〈おっとっと〉のネーミング。
    山本さんが〈おっとっと〉に出合ったのもバー。偶然にも重なる部分があり、なんだかにんまりしてしまいました。

    現在は、食べきりやすい2袋入りになった〈おっとっと〉。

    4月のリニューアルでは「もっと知りたい! 地球のなかまたち」をテーマに、絶滅危惧種のいきものが、実際のお菓子とパッケージに登場しています。
    うすしお味には、ラッコやスナメリなど、海の仲間の絶滅危惧種が。また、パッケージとスマートフォンを連携させて絶滅危惧種の写真や生態情報を見られるという楽しいコンテンツも。

    いまも昔も、“かたち” を生かした遊び心を忘れない〈おっとっと〉の姿勢、これからもずっと食べ続けていきたいおやつだと感じました。

    画像: 揚げない3Dフィギュアスナック!?

    おっとっと(うすしお味)
    ■ 内容量:52g(26g×2袋)
    ■ 参考小売価格:141円(税込)
    ■ メーカー 森永製菓 ブランドサイトを見る

    〈撮影/山田 耕司 取材・文/山下あい〉



    山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
    随筆家。「ふみ虫舎通信エッセイ講座」主宰。
    1958年北海道小樽市生まれ。2021年5月に埼玉県熊谷市に移住。
    公式ブログでは、移住した熊谷での暮らしをはじめ日々の暮らしを更新。
    コメント欄にて、読者との交流も。『家のしごと』(ミシマ社)、『暮らしと台所の歳時記――旬の野菜で感じる七十二候』(PHP研究所)、『台所から子どもたちへ』(オレンジページ)ほか、著書多数。
    公式ブログ:http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
    インスタグラム:@y_fumimushi



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