• 天然生活2021年9月号で紹介した、グラフィックデザイナー・セキユリヲさんの家族の物語。本誌では紹介しきれなかったお話をもう少し、こちらでお届けいたします。いつかは子どもを欲しいと思っている若い世代の方へ、今まさに特別養子縁組に興味をもっている方へ、そして現在一緒に子育てに奮闘している方や子育てがひと段落ついた方々へも。今回は、「特別養子縁組」という制度について。

    セキさんの家族

    画像: 住まいは、友人の手も借りながら、清水さんが築50年の古家をリノベーションした

    住まいは、友人の手も借りながら、清水さんが築50年の古家をリノベーションした

    のどかな田園風景のなかに、まるで絵本に出てくるような、大きな三角屋根に板張りのお家。北海道でも唯一、すべての生活用水を地下水で賄っている名水の町で米どころ・東川町に、セキさん一家は2021年春から暮らしています。

    「monokraft」の屋号で、住宅の設計から木製家具のデザインまでも手がける、お父さんの清水徹さん。雑誌や広告などのエディトリアルデザインから、「salvia」として、ものづくりやワークショップの開催に向けても精力的に活動している、お母さんのセキユリヲさん。

    自分のことや学校のことを矢継ぎ早に話してくれるおしゃべりで活動的なお姉ちゃんに、人見知りでちょっぴりシャイな弟くん。そして、保護猫のペロとうめ。この4人+2匹が、セキさんの幸せな家族をかたちづくるかけがえのないメンバーです。

    画像: 学校・園から帰ってきた子どもたちは、さっそく大好きなパパとママの元へ

    学校・園から帰ってきた子どもたちは、さっそく大好きなパパとママの元へ

    子どものための「特別養子縁組」という制度

    2人のお子さんは、特別養子縁組という制度によって、セキさん、清水さんと家族になりましたが、みなさんは、特別養子縁組という制度について、ご存知でしょうか。

    身寄りのない子どもを迎え入れて育てること?

    「養子」はなんとなく知っているけれど……。

    「養子縁組」と「特別養子縁組」って何か違うの?

    里親っていう制度もあったよね?

    厚生労働省のホームページでは、

    「特別養子縁組」とは、子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。

    とあります。

    「養子縁組」には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があり、要件や年齢などさまざまな違いがありますが、「特別養子縁組」は、子どもが永続的に保護者から愛情を受けながら、安心して健やかに成長できるようにと、あくまでも児童福祉のためにつくられた養子縁組制度です。

    対象となる子どもの年齢は15歳未満。養親は6ヶ月以上その子どもを監護し、実親の同意を得た上で、家庭裁判所に認められると、「特別養子縁組」が成立します。子どもは養親の実子となり、戸籍には「長男」「長女」と記載されます。

    一方「普通養子縁組」は、もともと、家のあと継ぎを残すためにつくられた制度。子どもの年齢に制限はなく、当事者同士の契約で成立します。養親と親子関係を結びますが、実親との親子関係も継続されるため、養親の戸籍には「養子」「養女」と記載されます。

    そして子どもを実子として育てる「特別養子縁組」に対して、「里親制度」は、あくまでも一時的に子どもを預かって育てる制度で、双方の間に法的な親子関係はありません。「里親」にもさまざまな種類がありますが、基本的には児童相談所から委託を受け、所定の費用や手当を受給しながら、子どもを家庭環境のなかで育てます。

    画像: 家族の一員・うめ(推定7歳)は、長野のお寺で保護されところ、縁あってセキさんのところへ。とてもひと懐っこい

    家族の一員・うめ(推定7歳)は、長野のお寺で保護されところ、縁あってセキさんのところへ。とてもひと懐っこい

    ただそこにある、幸せな家族の姿

    取材に伺う前、特別養子縁組をされたことに対して、なんて志が高いんだろう、なんて素晴らしいことをされたんだろう、と思っていました。ものすごい決断をされたんだなあ、とも。

    もちろん、いまも素敵なご家族だと思うことに変わりはないですが、それは、特別養子縁組が理由ではありません。

    ほんのわずかですが、取材時に一緒に過ごさせてもらったセキさんの家族が、ただただ仲睦まじくて、テラスでたわいもないことをおしゃべりしたり、何をするわけでもなく、くつろいで過ごしていたりする、そのごくごく日常の、ありのままの家族の姿が、とても自然で温かくて心地よく、側から見ているだけでもつい顔が綻んで目尻が下がってしまうぐらいに、「いい家族だなあ」、としみじみと思ったからです。

    ときに、パソコンで動画を見たがる弟くんをお母さんがなだめたり、ちょっと大騒ぎしすぎたお姉ちゃんには、お父さんから小さな雷が落っこちたり。

    そこにあったのは、ただたただ普通の、家族の姿でした。

    お姉ちゃんがとある取材で「家族とは一緒に暮らすこと」と答えたことがある、と本誌でも紹介させていただきましたが、それを受けてセキさんも、「本当にそのとおりで、血のつながりなんて関係ないと思う」と。

    その一言は、この家族をみれば、もう一目瞭然なのでした。

    「妊娠や出産などについてと同じように、学校教育のなかでも、特別養子縁組について広く紹介する機会があるといいよね」

    セキさんとは、そんなお話も交わしました。

    この連載も、少しでもその一端を担えるように、制度の理解と普及が広まる一助になることを願って。

    次回は、特別養子縁組という決断をされたセキさんの幼少期のお話について、紹介したいと思います。

    【参考URL】

    『特別養子縁組とは Florence赤ちゃん縁組』
    https://engumi.florence.or.jp/about

    『WA-NO-KAI 特別養子縁組と普通養子縁組の比較』
    https://wa-no-kai.jp/engumi-setumei.html

    『養子縁組と里親制度の違い 日本財団』
    https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/nf-kodomokatei/infographics

     

    〈撮影/前田景〉


    遊馬里江(ゆうま・りえ)

    編集者・ライター。東京の制作会社・出版社にて、料理や手芸ほか、生活まわりの書籍編集を経て、2013年より北海道・札幌へ。2児の子育てを楽しみつつ悩みつつ、フリーランスの編集・ライターとして活動中。



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