(『天然生活』2015年2月号掲載)
※ただいま、数量限定で赤倉農園の善兵衛栗【極撰・西明寺栗】(3Lサイズ)を販売中です。 また、赤倉さんの栗をつかった栗仕事のオンライン料理講座も開催します。詳しくはこちら。
日本一と称される大きさと味のおいしさが魅力の西明寺栗
「わぁ、この栗、どうしてこんなにお尻が真っ白なんですか?」と驚きの歓声を上げた長谷川さん。“日本一大きな栗”ともいわれる西明寺栗を初めて手に取り、うれしそうに尋ねました。
「栗のお尻が白いのは新鮮な証拠。一日で、たちまち黒くなりますよ」と教えてくれたのは、赤倉一善さん。ここ秋田・西木町で、300年にわたって栗づくりをしている赤倉栗園の十四代目です。
栗園を訪ねたのは、栗の収穫まっただなかの秋の終わり。3ヘクタールもあるという広大な栗農園を赤倉さんに案内してもらうと、ボトッ、ボトッ、ボトッ……。熟した栗が樹から落ちる音が、あちらこちらから聞こえてきました。
「西明寺栗は自然落果を待って収穫します。樹上で完熟させることで、栗の風味が増すのです。栗の中心部に空洞がないので、加工時の実割れが少ないのも特徴です」と、赤倉さん。
栗がまだ青いうちに樹を揺すって強制落果を促す一般的な栗農家に比べ、時間と手間のかかる自然落果にこだわります。放っておけば5倍にも伸びてしまうという木の枝は、いい枝だけを選別して切りそろえることで、より大きな栗ができるのだといいます。
「葉の一枚一枚が満遍なく日光を浴びて、栗の木も気持ちよさそう。風が通り抜けて、心地よい農園ですね」と、長谷川さんの顔にも笑みがこぼれました。
無農薬、無化学肥料で育てる栗
ところで、「西明寺栗」とは、いったいどのようなものなのでしょう?
その歴史をさかのぼると、いまから300年以上前、時の藩主・佐竹公が京都の丹波地方と岐阜の養老地方から種子を取り寄せ、西明寺地域(現在の秋田県仙北市)で栽培したところ大きな実をつけたのが始まりと伝えられています。
のちに品種改良されたのが現在の「西明寺栗」で、赤倉栗園の栗は昭和38年に西明寺栗一号として登録されました。
昼と夜の寒暖差が大きい西木町の気候が適していたこともあり、昭和40年代にはこのあたりで盛んに行われていたという栗の栽培。けれども数年後、クリタマバチという害虫の被害を受けて周囲の栗農園がほぼ全滅してしまったそう。
「残ったのは、うちを含めて数軒だけ。そんな経緯から、西明寺栗は西木町でも希少な栗となりました」
手をかけて、栗の加工を行っています
西明寺栗の最大の特徴は、やはりその大きさ。同じ西明寺栗といっても農家によって品質が異なるそうで、赤倉栗園の栗は丸く膨らみ、肩の張ったフォルム。大きさも格別です。また、サイズだけでなく風味、品質ともに優れているのも、赤倉家の栗が優良品種といわれる理由なのでしょう。
赤倉農園では、徹底した整枝や剪定、草刈りを行うことで、化学肥料や農薬をいっさい使用しない栗づくりを行っています。栗園を清潔な状態に保つことで、虫の発生を防ぐのだそうです。
「栗の敵は害虫です。だから、栗の収穫後は薬剤による燻蒸処理をするのが一般的。うちでは農薬を使わない分、手間のかかる害虫対策をしています。地面には、無農薬野菜や米ぬかでつくった微生物入り特殊堆肥を。これをまくと、栗に悪さをする虫の幼虫を、鳥や動物が食べてくれるんですよ」
もうひとつ、独自の殺菌・消毒法が。それは、収穫した栗を一定の温度のお湯にひたす“湯温処理”。詳しい温度や時間は企業秘密だそうですが、赤倉さんが研究を重ねて生み出した方法です。湯温処理したあとは冷蔵庫で冷やすことで、糖度が4週間で4倍も高まるのだとか。
「手をかければかけた分だけ、栗がこたえてくれるんです。それが栗づくりの楽しみですね」
話をしているうちに、赤倉さん特製の焼き栗が焼き上がりました。ひと口、頰ばる長谷川さん。
「栗の味が濃くて、しっとりした食感ですね。ついもうひとつ、と手が伸びてしまうおいしさ。この自然な栗の甘味は、お菓子もいいけれど、お料理に合いそうです。この西明寺栗の味を生かしたお料理、じっくり考えてみます」
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〈撮影/村林千賀子 取材・文/大野麻里〉
長谷川弓子(はせがわ・ゆみこ)
料理研究家、栄養士。東京・赤坂の「柳原料理教室」のアシスタントとして日本料理を勉強したあと、独立。確かな技術に基づいた日本料理に定評がある。現在、聖徳大学短期大学部准教授。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです