• イラストレーターのダイモンナオさんが、京都の町家で営む、アトリエを兼ねた宿&レンタルスペース「草と本」。「草と本」とは、ダイモンさんにインスピレーションをくれるもの。店を営んだ経験はなかったけれど、はじめてみればここからご縁がつながって、人が集まる、気づきの場となりました。開業から1年、感じたこと、これからのことをうかがいました。

    たくさんの気づきがある場に

    「草と本」のイベントはさまざま。この空間を見た、まわりの人たちがいろんな企画を持ちかけてくれました。

    店舗を持たずに活動するイタリア料理「クッチーナ・サッチ」の料理会、毎週火曜、水曜の「みのり菓子」の出張喫茶、ホメオパシーの勉強会、煎茶道のお稽古……。

    ダイモンさんも友人と共同企画で、ブックカバーをつくるワークショップを主宰。参加者が楽しげに絵を描くのを見て、感激したそうです。

    「最初は、絵なんて長く描いてないから無理、私にはできない……なんて言っていた人たちが、描き始めると夢中! それがすごく嬉しくて、絵を描くワークショップをもっとやってみたいなって思っています。絵画教室なんてかしこまったものでなくて。道具を出して描くのってちょっと面倒だから、気楽に描ける場がつくれたら」

    画像: 「シトロン」山本稔子さんの出張クレープにて。焼きたてのいろんなクレープが味わえる、甘いもの好きに嬉しい会でした

    「シトロン」山本稔子さんの出張クレープにて。焼きたてのいろんなクレープが味わえる、甘いもの好きに嬉しい会でした

    ここだからできることにこだわって

    最近、私が参加したのは、「狩猟の営み・観て味わうお話し会」。

    この連載でもご紹介した、オモテ市の中心メンバー「串揚げ万年青」主宰による、「食の循環」をテーマにしたイベントで、舞鶴の罠猟師「寒山拾得」清水祐輔さんのお話と、食事会。

    画像: ここだからできることにこだわって
    画像: 「狩猟の営み・観て味わうお話し会」にて、「寒山拾得」清水さんの鹿肉と猪肉を使い、三重・亀山「ひのめ」のシェフが美味しいひと皿に。食後、映像を見ながらお話会を。広い空間だからできること

    「狩猟の営み・観て味わうお話し会」にて、「寒山拾得」清水さんの鹿肉と猪肉を使い、三重・亀山「ひのめ」のシェフが美味しいひと皿に。食後、映像を見ながらお話会を。広い空間だからできること

    山に罠を仕掛けて捕まえ、すぐさまその手でさばいた鹿と猪の肉を、美味しい料理で味わい、そのあと、狩猟の営みをうつした映像と共にお話をうかがいました。

    映像の中にむごいシーンがあるのではないかと、少し身構えましたが、粛々と、手際良く、丁寧に、鹿をさばいていくシーンはとても清らかに見えて、驚きました。

    いのちをいただいて、自分のいのちがある。あたまではわかっているつもりでも、なんとなくふれないようにしてきた部分。そこにスポットを当ててもらったようで、もっと向き合いたい、知りたい気持ちが湧いてきました。

    鹿肉、猪肉の美味しさも、驚き。

    狩猟と解体。どちらの技術も持ち合わせている人は少なく、美味しい肉として流通させるには、そこにおいても考えなければならない。田畑を荒らす厄介者。ただいのちを奪うのでなく、いのちをつなぐ、循環ができたなら。なんでもすぐ手に入る世の中、それがどこから来たかわからない都会暮らし。知る機会を得て、とても嬉しい会でした。

    「私一人ではできないことが、人とつながることでできる。レンタルスペースではありますが、なんでもいいというのではなくて、ここだから出会えること、「草と本」らしさを大事にしていきたいなと思います」

    女性のひとり時間を大事にしたくて

    画像: 女性のひとり時間を大事にしたくて
    画像: 2階の客室。バスルームとトイレ付きで、快適

    2階の客室。バスルームとトイレ付きで、快適

    宿泊は1日1組限定。さらにこれからは、女性のひとり客にシフトしていきたいそう。

    「京都にお住いの女性が「普段は仕事が忙しいから近場でゆっくりしたくて」ってお泊まりになることもあります。近くに美味しいお店がたくさんあって、テイクアウトやデリバリーのご案内もできるので、ここでのんびり過ごしてもらえたら。癒しや体を整えることに、私自身、興味があるので、リセットやリフレッシュになれば。京都にたくさんある宿の中から、ここを選んで来てくださるのは、話しが合う魅力的な方が多くて。お客さまと言葉を交わすのは、私にとっても楽しみです」

    開業から1年、たくさんの刺激をもらって、いまはイラストを描きたい思いが高まっているそうです。

    「自分が描いた絵も、だれかの癒しや喜びになれば嬉しい」と、ダイモンさん。喜んでもらえたら、自分も嬉しいし、癒される。人と人をつなぐ、町家からしあわせな循環が生まれています。

    画像: ダイモンナオさんが好んで描く植物。町家のあちこちに

    ダイモンナオさんが好んで描く植物。町家のあちこちに

    画像: ロゴデザインも友人が。あちこちにある植物にも癒される。

    ロゴデザインも友人が。あちこちにある植物にも癒される。

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    草と本

    京都市上京区水落町87-2
    宿泊予約はHPから。
    https://kusatohon.com/

    イベントスケジュールについてはInstagramにて。インスタグラム:@kusatohon

    ダイモンナオ

    イラストレーター。雑誌・書籍・広告など、幅広く活躍。
    http://www.daimon-nao.com/


    宮下亜紀(みやした・あき)

    京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。インスタグラム:@miyanlife



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