• 日々の暮らしにとって、大事な「食」。京都に根ざす人にお話をうかがうコラム、今回は京都・西陣で8年続く、「万年青のオモテ市」をご紹介します。野菜、パン、おやつ、お弁当、さらには、あの人気店が!? というサプライズまである、月に一度の魅惑のマルシェ。そこには「おいしい!」から、オーガニックと出会ってほしいという思いがありました。

    毎月25日は、万年青のオモテ市

    画像: 西陣で八百屋を営む、ベジサラ舎さんはほぼ毎回出店。

    西陣で八百屋を営む、ベジサラ舎さんはほぼ毎回出店。

    「万年青のオモテ市」があるのは、毎月25日。

    京都の人には覚えやすい、北野天満宮の天神市とおんなじ日。

    主宰するのは、西陣『串揚げ万年青』店主・青木嗣さんと裕子さん夫婦。

    開業の数ヶ月のちにスタートし、8年つづきます。

    「いつやっているからわからないと定着しないから、何が何でも毎月やろう」

    はじめるときにそう決意したから、2020年も一度も取りやめることなく、月イチで開催。食が大事。あらためて思う一年だったから、なおさらだったと言います。

    『串揚げ万年青』の食材も、オモテ市も、主軸にするのはオーガニック。

    有機栽培、無農薬、減農薬のもの、添加物の入っていないもの、誠実な作り手のものなどを集めています。

    画像: 『ベジサラ舎』で試食した生のままのかぶらはりんごのようにみずみずしい。

    『ベジサラ舎』で試食した生のままのかぶらはりんごのようにみずみずしい。

    画像: 高知の文旦など、無農薬栽培の果物と出会えることも。

    高知の文旦など、無農薬栽培の果物と出会えることも。

    「マルシェをやってみようと思ったのは、店を始めたころはまだオーガニックは特別なものというイメージがあったから。“体にいいから”とか“安心安全だから”という理由で選ばれていて、“味は二の次”という感じがしたんです。オーガニックは、おいしい。おいしいものって、自然と手が伸びますよね。だから、とにかくまずは食べてもらうしかない。それにはマルシェが一番いいと思ったんです」

    「これ、おいしい! なんでだろう!?」

    その理由は

    「自然の中で育ったものだから」

    「余計なものが入っていない、無添加だから」

    「一つずつ手作りしているから」 ……

    自分自身で答えに気づいてもらえたら、きっとオーガニックが日常のあたりまえになる。そんな思いのもと、万年青のオモテ市はつづいてきました。

    裕子さんはかねてから「クラフトフェアまつもと」や南山城で開催されていた「山ノ上マーケット」が好きだったそうです。

    「『クラフトフェアまつもと』に初めて行ったのは20年以上前、作り手と使い手を結んで、クラフトの垣根を取り払ってくれた気がしました。村の廃校が会場だった『山ノ上マーケット』は地域と密につながりながら、出店者も雰囲気も統一感があって、そのバランスがすごくよかったんです。いつかマルシェをやってみたいなと思いながらもなかなか踏み切れずにいましたが、静原のカフェレストラン『ミレット』さんが自分たちで育てた野菜や石窯パンを街中で定期的に販売できる場所を探していて。だったら『万年青』でやってみようかって。はじまりは自然ななりゆきでした」

    画像: 「喫茶ホーボー堂」の酵素玄米と野菜のお弁当。この日はおはぎも。

    「喫茶ホーボー堂」の酵素玄米と野菜のお弁当。この日はおはぎも。

    画像: 「青おにぎり」のおにぎりがずらりと。

    「青おにぎり」のおにぎりがずらりと。

    おいしいものをみんなと分かち合う気持ちで

    誰もが喜ぶものをまんべんなく揃えるのは難しい。考えた末、「だったら、勝手な自分の好みでやればいい」。そう吹っ切れたそう。実際にそれが、オモテ市の統一感につながっています。

    顔ぶれは、定番もありつつ、月替わり。

    高知直送の干物は、第一回から欠かすことなく取り寄せる、不動の人気。高知出身の嗣さんのお母さんが高知の木曜市で買っては送ってくれていたものです。漂白剤や防腐剤等の添加物を一切使っていません。

    「京都は海が遠くて、魚と縁遠い。好きで取り寄せていたので、儲けはほぼゼロなんですけど、みんなといっしょに分け合う気持ちで仕入れています。マルシェを始めたころ、釜揚げしらすをみたお客様は"これ、よう乾いている?"って聞かれていました。京都によく出回っているのはかたいちりめんじゃこ、新鮮なしらすはあまり見かけない。 “騙されたと思って、このまま食べてください”っておすすめして、今や一番人気、マルシェの顔でもある釜揚げしらす。“魚臭くない”“やわらかくて、おいしい”って。ああ、そうか、だから山椒を効かせた、ちりめん山椒が京都では定番なんやなって。あらためて思いました」

    画像: 高知直送の干物やしらすは定番人気。

    高知直送の干物やしらすは定番人気。

    画像: ケータリングやイベントを中心に活動する、『円卓』のお弁当。

    ケータリングやイベントを中心に活動する、『円卓』のお弁当。

    かくして、私もすっかりはまった一人、しらすやぶりのみりん干しをいそいそと買い込んでいます。

    そもそも日持ちさせるための干物に防腐剤などの添加物が使われていることがあることも、実はそれまでわかっていませんでした。「おいしい!」から気づいた今、もう、後には戻れません。

    『串揚げ万年青』の店内は、奥に細長い、いわゆる鰻の寝床。

    決してマルシェに適したスペースではないけれど。同じ思いを持つ仲間が集まり、お客さんも、みんなが気持ちをもって運営してくれているのがわかるから、混み合っても焦らず騒がず、協力し合って。気持ちはちゃんと、気持ちに届く。

    いろんな街にこんな場ができれば、暮らしが、世の中が変わっていく気がします。

    「あえて、オーガニックを大きくは謳ってはいないんです。オーガニックが特別じゃなく、あたりまえになってほしいから」と、裕子さん。

    「おいしい」ほどの、説得力はない。これからも毎月25日、万年青のオモテ市はつづきます。さらに最近、オモテ市のおいしいものをご自宅まで届けるデリバリー便も仲間たちとスタート。次回、そのお話を!

     

    万年青のオモテ市
    毎月25日 12:00~夕方(売り切れまでオープン、11:45から入場整理券配布)
    出店者など、くわしくはInstagramにてお知らせ
    https://www.instagram.com/kushiage.omoto/

    串揚げ万年青
    京都市上京区筋違橋町554-2
    075-411-4439
    https://omoto2013.com



    宮下亜紀(みやした・あき)
    京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。
    https://www.instagram.com/miyanlife/



    今月号のプレゼントを見る

    お得な定期購読はこちらを
     (富士山マガジンサービス)

    読みもの,おいしいもの,連載,京都、根っこのある暮らし方

    This article is a sponsored article by
    ''.