あると思っていた場所にない
写真、手紙、書籍など、手放しにくいモノは、とうの昔に、すべて手放したつもりでいた。
必要な海外ホームスティ写真は、所定の場所にあるので、そこを探したら、すぐに、見つかるはず、と思い込んでいた。
「お茶の子さいさいだぁ~」と、アイルランド・スイスの写真を探すため、海外資料専用として詰め込んだ段ボール箱、紙袋、ファイル類を開けてみる。が、そこには2010~20年代に行った写真しかない。
肝心の、アイルランド・スイスのホームスティ写真、これが何処にも見つけられない。
見つかるのは違うものばかり
「アイルランドでは、風邪をひいて、ホストマザーがウイスキーのレモン湯割りを作ってくれた、ホストファミリーが留守の時、玄関スイッチを間違えて非常ベルを押し、ベルが鳴り響いて困った、でも、非常時というのに、誰も来なかったな、夜間に洗濯物干しをしたな」
などと、ホームスティの光景は目に浮かぶが、それを証明する写真が出てこない。
何度も、何度も、同じ箱、紙袋、ファイル類を開けては閉める。だが、見つからない。
絶対に、捨てたはずはない。何処かに必ずあると信じ、念のため、他の資料が入っている段ボール箱を開けた。
すると、そこには「廃棄したはずの若かりし日の写真」がギッシリと詰まっていた。
捨てたはず、と思っていたモノが、突然目の前に現れ、思わず見入った。
「若かったぁ~」。それは、私の人生証拠写真。この場では捨てられず、80歳になったら廃棄と書き記し、封をした。
もうないかも、と諦めたそのときに
アイルランド・スイスの探しモノは、家中散らかした挙句、見つからない焦燥感で疲れ果て諦める。
しばらくの時間が経ち、もしかしたら? と、思い付き、古いUSBを開けた。
そこで出会った。捨ててはいなかったが、体力が限界だ。
探しモノは、今回で終わりにしたい。
<文/阿部絢子 イラスト/北村人>
阿部絢子(あべ・あやこ)
生活研究家。消費生活アドバイザー。「万人が家事を科学的に効率よくスムーズにこなすには?」を研究、提唱し続ける。『老親の家を片づける ついでにわが家も片づける』『老いのシンプル節約生活』(ともに大和書房)、『ひとり暮らしのシンプル家事』(海竜社)など多数。11月ごろ、大和書房より、ホームスティについての本を出す予定。