日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
10月23日 13時51分
二十四節気・霜降(そうこう)
野山が紅葉に染まるころ
秋もそろそろ終盤。文字通り、山や畑に「霜」の「降」りるころです。
雁が渡来し、山茶花が咲き始め、紅葉は真っ盛り。
このころのいちょうの黄金色の美しさはなんとも華やかです。
収穫を感謝する秋祭りもこのころです。
霜降の期間の七十二候
10月23日から10月27日ごろ
霜降初候・ 霜始降[しもはじめてふる]
朝晩の気温が下がり、草木に霜がおりるようになる様子を表現した七十二候です。
日が短くなることからも秋の深まりを実感します。
ただ、本来霜月と呼ぶのは11月。
初候とはいえ、10月を「霜」「霜降」と呼ぶのは少し気が早いかもしれません。
10月28日から11月1日ごろ
霜降次候・ 霎時施[こさめときどきにふる]
「霎」は「しぐれ」「こさめ」と読み、雨がパラパラと降るさまを表しています。
秋が終わることを教えてくれるしぐれ雨は「霧雨」「秋の村雨」「秋の微雨(びう)」「蕭雨(しょうう)」など多様で魅力的な名前をもちます。
降ったりやんだりする雨に、色づく草葉など、秋の自然は千変万化です。
11月2日から11月6日ごろ
霜降末候・ 楓蔦黄[もみじつたきばむ]
紅葉やつたが色づくころ。
野山の木々や野辺の草がさまざまな色で秋を装い、中でも落葉樹は山の主役です。
紅葉の色彩が鮮やかで、まるで創作されたような、天然のグラデーションが楽しめる季節になりました。
七十二候の言葉の美しさは、このような木々の色づき、虫の声や空気の変化によりそう、心の豊かさから生まれています。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。