丁寧な栗ご飯の衝撃
旦那さんが栗ご飯を作ってくれました。
栗を買ってきてるなぁとは思っていたんですが、どうせネタの小道具にでも使うんだろうと思っていたので、炊飯器を開けた時はびっくりしました。
家の栗ご飯を食べるなんて、何年振りでしょう。もしかしたら30年振りかもしれません。おばあちゃんが作ってくれたような、うっすらとした記憶がありますが、私自身わざわざ家で作ろうなんて考えたことすらなかったのです。
栗の渋皮煮は一度作りました。皮を剥く作業が面倒といえば面倒なんですが、なんというか、我を忘れる作業でもあって、嫌いじゃないんです。ただ、渋皮煮って、何回か茹でこぼししたりして手間かかるので、結局それ以降やらずじまいでした。
それなのに、まさか旦那さんが栗と向き合ってるなんて。私より雑な人間だと思っていたのに、おみそれしました。
肝心の味なんですが、それがまぁ美味しかったんです。栗も大きくてホクホクしてるし、お米はいただいた新米。程よい塩気が栗とお米の甘さを引き出していて、全然雑な仕事じゃない。
聞くと、作り方調べて作っただけらしいんです。
思うんですが、男の人の方が料理をする時って、レシピを忠実に守るところありませんか?
一方、女の人って、「はっはぁ~ん、こんな感じね。」って、ざっくり把握すると、レシピを見ていても、大さじも小さじも時間もアバウトに作りがちな気がします。いや、うちの夫婦だけか。
栗ご飯なんて、剥いてお米と炊くだけでしょう。くらいに思っていた自分を反省しました。
塩加減や栗の下ごしらえとか、丁寧な仕事があるからこそ、シンプルな料理が繊細で美味しくなるんですね。
とはいえ、じゃ、明日からやるかと聞かれるとハイ! と即答できない自分がいます。私はどうやっても、大さじ1をカレースプーンで適当に入れる女なのです。
旦那さんはその他にも最近だと、グラタンも作ってくれました。これは私が作ろうと思ってたんですが、子どもがぐずり出して料理する気力がなくなってしまい、代わりに作ってくれました。
グラタンこそ、私の数少ない料理のレパートリーの中で最上級にある適当料理の代表格です。
ペンネゆでて、玉ねぎとベーコン炒めてソースと絡めてチーズかけてオーブンで焼いて終わりです。
ところが旦那さんは作ったことがないので、作り方を事細かに聞いてきます。それに少しイライラしてくる私。最終的に「うるさい! チーズかけりゃなんとかなるから!」と怒鳴り出す始末。
なんて大雑把な女。
でも繊細さはないけれど、適当に料理できる雑な能力も必要じゃありません? だって料理なんて毎日作るんですよ。サッササのホイ! と作れる雑さがないとやっていけませんことよ。
と、自分をなぐさめているのは、すごく美味しかった栗ご飯の衝撃を和らげて、自尊心を保つためなのでした。
白鳥久美子(しらとり・くみこ)
1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。2008年に川村エミコとたんぽぽ結成。10年、フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』の公開オーディションで新レギュラーの座をつかみ一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビ、ラジオ、ドラマ、舞台など多方面で活躍中。趣味は、散歩、高圧電線観察、シルバニアファミリー。特技は、詩を書くこと。唎酒師(日本酒のソムリエ)の資格ももつ。