• 町家をリノベーションして、住まいとアトリエにする、料理家の高谷亜由さん。ベトナム、タイ料理教室を主宰しています。京都とアジア料理、ちょっと意外かもしれませんが、レッスンに通う人にとっては散策も楽しみ。ベトナム料理との出会い、その魅力をお聞きしました。

    初めてのひとり旅が、人生を変える

    京都で料理教室を主宰する、高谷亜由さん。学生時代、初めてひとり旅したのが、ベトナムでした。

    「当時は、バックパッカー全盛期。仲の良い先輩からよかったよと聞いて、たまたま選んだ旅先でした。大学では国際ビジネスコミュニケーションを専攻していたので、帰国子女もたくさんいて、海外に行くのがふつうの感覚だったんです。英語も勉強したかったし、初めて一人で旅することにしました。

    初めてだったことが、大きかったかもしれないけど、すごく思い出深くて。治安も落ち着いていて、いやな出来事もなかったから、もうちょっと掘り下げてみたくて、長期休暇のたびにベトナムを旅するようになりました」

    スマホなんてまだなく、ガイドブックは「地球の歩き方」くらい。まだまだ、知られざる国だったベトナム。「だから、すごくおもしろかった」と、高谷さんは言います。

    「いまはネットで検索して、そこから選べるけれど、行ってみないと本当のところがわからなかった。20代だったからできたのかもしれないけれど、知らないことがいっぱいあって、旅するたび発見がありました」

    当時、料理家になるとは思ってもいなかった高谷さんですが、「なんだかわからない、だけど美味しい」ベトナム料理にワクワクしていたそうです。

    「料理家となったいまは、「どうやってつくるんやろう!?」って考えますけど、当時はなんだかわからないけど、美味しくて、それがおもしろかった。日本ではそんなことってないでしょう!? たいていオープンキッチンで、つくっている人の顔が見える、そんなところも良かったんです」

    画像: 初めてのひとり旅が、人生を変える
    画像: 著書『水上マーケットの朝、アヒル粥の夜』(幻冬社)には旅のエッセイも

    著書『水上マーケットの朝、アヒル粥の夜』(幻冬社)には旅のエッセイも

    おいしいから知りたくなった、ベトナム料理

    ベトナムの食文化はとても豊か。高谷さんのInstagramにはいろんなベトナム料理が紹介されていて、驚きます。

    「日本で外国の料理が紹介されるときって、「マスト」なメニューがありますよね。ベトナム料理ならフォー、タイ料理ならトムヤムクンとか。フォーは、主に屋台で食べる朝ごはん。

    ベトナムは北から南まで、海もあれば山もあって、さまざまな郷土料理があります。私は南部の味つけが好きだから、料理教室の屋号は「Nam Bo」(ナンボー)=南部です。南部は一年中暑くて、全体的に甘辛さがしっかりした料理が多い。北部は、日本と同じく、四季があるので、旬の食材を生かした、あっさりした味わい。日本に似ていますね」

    ベトナムの人は食べることが好き、食べる時間を大事にするそう。

    そんなところも日本に通じます。

    「外食もするし、インスタント食品も食べるけれど、ごはんといえば、家庭料理。お母さんがつくるものです。地方によって味付けが違うので、ベトナム人同士の結婚でも、お互いの出身地が違えば、家庭料理の味付けも違う。関西と関東で、おだしが違うみたいな感じですね」

    画像: 酸っぱいスープ、カイン・チュアは家庭料理。高谷さんがベトナムに通うようになったきっかけのような一品

    酸っぱいスープ、カイン・チュアは家庭料理。高谷さんがベトナムに通うようになったきっかけのような一品

    画像: 日本で人気の生春巻き。教室でもリクエストが多いそう

    日本で人気の生春巻き。教室でもリクエストが多いそう

    都市部にいる人は、屋台で朝食を食べます。フォーは北部にあるハノイの、伝統的な朝ごはん。ほかに、バインミー(バゲッドのサンドイッチ)、おこわ、おかゆを食べますね。昼ごはんはお弁当や定食屋さんで、夜はお母さんのごはんを家族みんなで食べます。

    現地に行くと、代表的な料理よりも、知らないものを食べたくて。旅行するときも、あの店でこれを食べようと決めていくことは、ほとんどなくて。「あ、こんなんあったんや!」っていう出会うものの方が記憶に残ります。お家におじゃましていただく、家庭料理はとくに印象深いですね」

    どんな土地柄か、どんなふうに日常で楽しまれているのか。自分自身が感じてきた旅のワクワクも一緒に伝えたくて、高谷さんは料理家の道を選びました。

    「レストランだと、料理を楽しんでもらうことしかできないから。料理教室で、手を動かせばそれが「体験」になって「発見」につながると思うんです」

    コロナ禍、休んでいた時期もあったけれど、現在は以前よりも定員をセーブして、レッスンをしています。なかなか旅ができないからこそ、ここでワクワクしてもらえたら、そんな思いで。次回、旅の楽しみ方、地元・京都のことなど、お届けします。

    画像1: おいしいから知りたくなった、ベトナム料理
    画像2: おいしいから知りたくなった、ベトナム料理
    画像: 京都・二条にあるアトリエで料理教室を主宰。かわいいタイル張りのキッチン

    京都・二条にあるアトリエで料理教室を主宰。かわいいタイル張りのキッチン

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    高谷亜由さん

    料理家。京都・二条にて、ベトナム、タイ料理教室「Nam Bo」主宰。大学在学中に調理師免許を取得し、東京や京都のベトナム料理店などで経験を積む。著書『ベトナムのごはんとおかず』『レシピ 家で呑む』(アノニマ・スタジオ)、『水上マーケットの朝、アヒル粥の夜』『終電ごはん』(幻冬社)など。料理教室のスケジュール&申込みについてはHPで。インスタグラム:@ayuchao_nambo


    宮下亜紀(みやした・あき)

    京都に暮らす、編集者、ライター。出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。『はじめまして京都』(共著、PIE BOOKS)ほか、『本と体』(高山なおみ著)、『イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由』(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、『絵本といっしょにまっすぐまっすぐ』(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)など、京都暮らしから芽生えた書籍や雑誌を手がける。インスタグラム:@miyanlife



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