(『暮らしをそのままの自分に寄せて』より)
箱を使うのは何のため?
雑誌の収納特集などで、真っ白なボックスが一面ずらりと並んだ写真をよく見ます。
ああ~っ! と頭を抱えたくなるんです。またやってる! まだやってる! と。
パッと見たときに整然としていて憧れるし、ボックスに入れさえすればいいから簡単で真似しやすい。でもあれは、典型的な「仕組みを整えた直後に気持ちのピークが来る」収納です。使っているうちに、気持ちが下がっていってしまう危険をはらんだ収納なのです。
わかりやすく、取り出しやすく
なぜなら、ボックスを隙間なくはめ込んでいるがために、その中のものの出し入れにひと手間かかるから。
べつに、ボックスに入れなくてもそのまま置いたほうがとりやすいものもなかにはあるでしょう。ボックスに入っていないほうが、どこにあるか一瞬でわかって使いやすいものもあるでしょう。同じものが並んでいることで、いちいちラベルを読むのに時間がかかるという人もいるでしょう。
ものは使うために持っているので、「ボックスを整然と」ではなく「わかりやすく、とりやすく」が優先されるべきだと思います。ボックスを並べ終えて満足するのではなく、暮らしているなかで「とり戻ししやすいなあ」「前よりラクだなあ」と気持ちのピークが続くのがベストです。
片づける理由を、しっかり整理する
箱にも、たくさんの個性があります。ふたがあったり、奥行きがあったり、浅かったり。それぞれ、どんなものの収納に向いているかという特性があります。会社の人事と同じです。とにかくびっしり並ばされたボックスからは、「ぼくたちこんなはずじゃなかった」という嘆きの声が聞こえてきます……。
大事なのは、ボックスに入っている理由がちゃんとあること。細かいものをまとめたいから、分類したいから、立たせたいからなどなど。理由もなく「並べたい」を一番大事にすると、収納は破綻しがちです。破綻までしなくても、そこを使う人が手間と時間をとられます。箱があるからと、本当は不要なものを抱えてしまっているケースも多々あります。
不要なものまでしまってしまう
あの収納が使いやすく、何の問題もないという方は、箱を使う理由がきちんと存在する方だけです。たくさんの部品・素材を管理する職人さんや趣味の人。たくさんのカルテを管理するお医者さん。ほかにはどんなパターンがあるかなあ……推察するに、多くはありません。
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本多さおりさんの一言
とうとう、言ってしまった。
〈撮影/佐山裕子 文/本多さおり〉
本記事は『暮らしをそのままの自分に寄せて』(主婦の友社)からの抜粋です
本多さおり(ほんだ・さおり)
生活重視・ラク優先の整理収納コンサルタント。収納で大事にしているのは、ラクに片付いて家事がしやすい仕組みづくり。その考え方を重視し、誰でも自分の生活に落とし込めるような提案を心掛けている。夫、長男(5歳)、次男(3歳)の4人家族で、2020年よりフルリノベーションした中古マンション(変則ワンルーム65㎡)に暮らす。リノベーションでは、家族皆がのびのびできて家事動線のいい伸びやかな間取りを実現。主な著書に『片付けたくなる部屋づくり』(ワニブックス)、『悦な収納のすすめ』(主婦の友社)、『今の暮らしを快適に変える収納レッスン』(宝島社)などがある。
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人気整理収納コンサルタント本多さおりさんが語る、自身の基準づくりの紆余曲折には暮らしがラクになるヒントがいっぱい!
整理収納コンサルタント、本多さおりさん。本多さん自身の基準づくりの紆余曲折が本書で明かされます。自分は変わらないし、変えなくていい。でも、自分をとりまく環境や仕組みを変えて、自分に寄せることで、生きやすくなる。「生活重視、ラク優先」という本多さんの考え方には、気持ちをラクに暮らしていくヒントがたくさん。