(『本当に大事なことはほんの少し~料理も人生も、すべてシンプルに考える生活術』より)
老眼鏡は気軽に買っていろいろ楽しむのがいい
眼鏡はもっばらJINSで、5000円ぐらいのものを買っています。最初のうちは、お高い老眼鏡を作ったりもしたんですよ。でも、なくすの……。移動中に紛失ということがたびたびあって、がっかりして、考え方を変えました。
老眼鏡は家の中のあちらこちらに置いて、必要なときにサッとかけられたほうが便利です。それに老眼鏡はいつもかけているわけではないですから、冒険ができる。
いかにも「かけてます」というような大きなフレームにしてみたり、あえて自分のイメージとは違うようなハードなデザインにしてみたり、カラフルな色を試してみたり。
洋服で冒険するのは難しいかもしれないけれど、老眼鏡は遊んでいいと思うんです。幸い、若い人が好むリーズナブル価格の眼鏡店には、流行をいち早く取り入れたフレームがたくさん並んでいます。
それで、老眼鏡は安いものがいい、気軽に買っていろいろ楽しむのがいい、と考えたわけです。
中でもJINSが私は好きです。いろいろな形や色の眼鏡をいくつも持っています。
ウーのJINS研究の結果、最寄駅の駅ナカにあるJINSと、原宿にあるJINSは品揃えがちょっと違うようです。
原宿店のほうがおしゃれなものがあるみたい。なので車で通りかかると「新作が出たかしら」って、必要でもないのに、時間もないのに、車をとめて原宿店にちょっと寄る。結構しょっちゅう行っています。
眼鏡選び、いや眼鏡遊びには一生懸命です。
足のネイルサロンは唯一の贅沢
一生懸命といえば、ネイルサロンもそうなんです。
エステには行ったことがないですが、ネイルサロンには気分転換を兼ねて行きます。私の唯一の賛沢かもしれません。
手の爪は、仕事柄伸ばすこともできないし、マニキュアは塗れないので、磨いたり、甘皮を取ってもらったりするだけです。
足の爪には色をつけます。ペディキュアは好き。
私は性格も見た目も女らしいほうではないと思いますが、そんな私が密かにペディキュアをしているっていうのが意外性があって面白いでしょう?
ネイルサロンはだいたい1か月半ごとに行きます。もっと頻繁に行く人もいるのかな。
でも、もう20年以上続けていますから、私にとっては一生懸命なんですよ。真冬でもペディキュアをしに行きます。冬は足の爪は見えないからほったらかし、というのは嫌なんです。
自分の「気分が上がる」からおしゃれをする
誰に見せるでもなく、自分だけのために。洋服も眼鏡も同じで、人に見られるからではなく、自分の「気分が上がる」からおしゃれをする。気分がいいから、爪をきれいにしてペディキュアをするんです。
エステに行ったり、お肌にパックをすることが好きなら、その時間を「自分のために」作ればいいと思う。習い事でもお手入れでもなんでも、自分のための楽しみを持っている人は、どこか豊かさがある気がします。
日常や実用からふと離れて、心を遊ばせる隙間のようなものは、年齢を重ねるほどに必要であると思います。
〈撮影/木寺紀雄〉
本記事は『本当に大事なことはほんの少し~料理も人生も、すべてシンプルに考える生活術』(大和書房)からの抜粋です
ウー・ウェン(うー・うぇん)
料理研究家。中国・北京で生まれ育つ。ウー・ウェンクッキングサロン主宰。1990年に来日。友人、知人にふるまった中国家庭料理が評判となり、97年にクッキングサロンを開設。医食同源に根ざした料理とともに中国の暮らしや文化を伝えている。著書に、『体と向き合う家ごはん』(扶桑社)、『ウー・ウェンさんちの汁ものとおかず』(光文社)など多数。
https://cookingsalon.jp/
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ウー・ウェンさん初の暮らしエッセイ。物事を複雑にせず、シンプルにすることが快適な暮らしの秘訣、という哲学に貫かれた生き方は、清々しさに満ちています。本当に大切なものだけを見据え、心もからだも身軽に暮らしていくこと。姿勢よく立ち、はっきり話すこと。モノ・コト・ヒトのよい面を見ること……。歳を重ねてもなお明るくクリアに生きているウー・ウェンさんの日常生活を追いながら、ウーさんが実践している日々の工夫や考え方を紹介する一冊です。