(『天然生活』2022年4月号掲載)
夫婦二人三脚、丹誠込めた「てん菜づくり」
一年ぶりに生産地を訪れた料理家の吉田愛さんは、よく茂ったてん菜畑を前に、感慨もひとしおでした。さっそく、ここ北海道・千歳でてん菜を育てる、森本夫妻と一緒に収穫。
「夏の水不足が心配でしたが、平年並みの収穫量と糖度です!」と耕司さんが話せば、試食した吉田さんも「今年のはまたすごく甘いですね。ポリポリと食感もよく、味見が止まりません」と太鼓判を押します。
サトウキビ同様、砂糖の原料になるてん菜は、光合成によって根に糖分を蓄えますが、そのときに大事なのが昼夜の寒暖差。気温差が大きいほど糖度が上がります。
もちろん畑づくりも重要。夫婦は、栄養に富んだ土壌に保つほか、定期的に機械で土をほぐし、畑を柔らかく保つ工夫も欠かしません。
てん菜糖を使った料理に話が及ぶと「てん菜ならいくらでもおいしく育てるけど、料理のことは~」と苦笑いのとみ子さん。
その言葉が、てん菜づくりへの愛情の深さを物語っていました。
てん菜とは
砂糖の原料で、ビートやサトウダイコンとも呼ばれるが、実はほうれんそうと同じヒユ科に属する植物。根を煮出すことで糖分を抽出。不純物を取り除いて煮詰め、結晶化させたものが、砂糖(てん菜糖)となる。
葉や茎は土壌の肥料に。環境にやさしいてん菜栽培
育った作物のすべてを有効活用できるのは、てん菜づくりの特徴です。
砂糖になるのは根の部分ですが、「茎は畑にすき込んで肥料に、糖分を抽出した根のしぼりかすは、ビートパルプとして家畜の餌に」(森本さん)。また、輪作することで、化学肥料や農薬の使用を極力減らしながら、病害虫の発生や収穫量の減少を防ぐ、クリーン農業を実現しています。
「来年はここで小豆を、次は馬鈴薯→小麦→てん菜と育てます。4年サイクルで異なる作物を育てることで、最適な土壌に保っています」と森本さん。
ご夫妻の話、畑仕事をする様子から、てん菜に込められた思いを受け取った吉田さん。
「てん菜糖のやさしいおいしさの秘密が、わかった気がしました」
吉田さんのてん菜糖を使った料理
「和食をつくることが多いのでお砂糖はよく使いますが、『国産てん菜糖』はコクのあるやさしい甘味だから、合わせる素材の持ち味を壊すことなく、風味豊かに仕上がります」と話す、吉田さん。
さっそく、てん菜糖を使った料理とお菓子を教えてもらいました。
「鶏肉でつくるよりも香りが強く、食べごたえのある豚のつくねには、甘味をしっかりと感じるたれがよく合います。そこで今回はみりんを使わず、砂糖のみで甘味も照りもつけました。でも、てん菜糖だから甘さがくどすぎず、調和の取れた甘辛味になるんです。箸休めの甘酢漬けも、淡白な味わいのじゃがいもに、てん菜糖を使った香り豊かな甘酢が、奥行きを加えています」
そして意外にも「洋食と合う」と吉田さん。
「仕上げに少し加えるだけで全体の味がまとまります。私はカレーをつくるときも使いますよ。隠し味として加えると、バランスよく仕上がります」
新ごぼうの甘辛豚つくねのつくり方
肉だねの中で蒸された新ごぼうの食感と香りが、甘辛だれに合う。
◎ 材料(4人分)
● 豚ひき肉 | 400g |
● 新ごぼう | 1本(100g) |
● 長ねぎ(みじん切り) | 10cm分 |
● A | |
・しょうが(すりおろし) | 1かけ分 |
・水、片栗粉 | 各大さじ2 |
・酒 | 大さじ1 |
・塩 | ひとつまみ |
● B | |
・酒・しょうゆ | 各大さじ2 |
・国産てん菜糖 | 大さじ1と1/2 |
● サラダ油 | 大さじ1/2 |
● アスパラガス(塩ゆでしたもの) | 適宜 |
◎ つくり方
1 新ごぼうはささがきにして水にさらし、2~3回水をかえて水けをきる。
2 ボウルに豚ひき肉とAを入れ、粘りが出るまでよく練り混ぜる。1と長ねぎを加えてよく混ぜ合わせ、12等分にして小判形にととのえる。
3 フライパンにサラダ油を中火で熱し、2を並べる。焼き色がつくまで約3分焼き、上下を返してふたをし、弱火にして5分焼く。ふたを取り、余分な油をふき取ってBを加え、上下を返しながら中火で煮からめる。とろみがつき照りが出たら器に盛り、フライパンに残ったたれをかけてアスパラガスを添える。
新じゃがいもの甘酢漬けのつくり方
じゃがいもにさっと火を通すことで、シャキシャキ食感も楽しむ。
◎ 材料(つくりやすい分量)
● 新じゃがいも | 2個(約300g) |
● A | |
・水 | 1/2カップ |
・酢 | 大さじ4 |
・国産てん菜糖 | 大さじ3 |
・塩 | 小さじ1/4 |
・赤とうがらし(輪切り) | 1/3本分 |
◎ つくり方
1 鍋にAを入れてひと煮立ちさせ、さっと混ぜてから保存容器に移す。
2 新じゃがいもは皮をむき、せん切りにして水にさらし、2~3回水をかえて水けをきる。
3 2を熱湯で30秒ゆでてざるにあげる。粗熱が取れたら水けをよくしぼり1に漬け、冷蔵庫で30分以上(できれば2時間ほど)おく。
※ 冷蔵庫で約3日間保存可能
てん菜糖を使った甘いもの
溶けやすいからお菓子づくりも失敗しづらく、おすすめとか。
「とくにシンプルで素朴な味わいのお菓子にはやさしい甘味がよく合い、おいしさを引き立ててくれるように感じます。今回の蒸しパンも、てん菜糖のおだやかな甘味が、桜の香りと塩けを引き立たせています」
桜の米粉蒸しパンのつくり方
蒸し立てはふわふわ、冷めるとむっちり。米粉ならではのやさしい甘味に、てん菜糖が好相性。
◎ 材料(直径7cm×深さ4cmのプリン型4個分)
● 桜の塩漬け | 15g |
● A | |
・米粉(製菓用) | 120g |
・ベーキングパウダー | 5g |
・国産てん菜糖 | 40g |
● 牛乳 | 100mL |
● サラダ油 | 大さじ1 |
◎ つくり方
1 桜の塩漬けは水に10分つけて塩を抜き、水けをしぼる。飾り用に少量取り分け、残りは細かくきざむ。
2 ボウルにAを入れて泡立て器で混ぜる。牛乳とサラダ油を加えてなめらかになるまで混ぜ、1のきざんだ桜も加えてさっと混ぜる。
3 プリン型にグラシン紙を敷き、2を均等に入れて1の飾り用の桜をのせる。
4 蒸気が出ている蒸し器で強火で10分蒸す。
国産てん菜糖について
北海道の広大な大地でのびのびと育ったてん菜が100%原材料の国産砂糖。てん菜から糖分を煮出して精製したものに、さらにてん菜の糖蜜を加えることで、特有の上品なコクのある風味をプラス。主張しすぎない穏やかな甘味とまろやかな香りが特徴です。
おすすめの「てん菜糖レシピ」をもっと!
てん菜は別名サトウダイコン、ビートと呼ばれる植物。北海道の大自然で育ったてん菜からつくった砂糖に、てん菜糖蜜を配合しました。国産原材料100%、日本国内でていねいにつくられた「てん菜含蜜糖」です。コクのあるやさしい甘さで、毎日のお料理にお使いいただけます。
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訪ねた人 吉田 愛さん
吉田 愛(よしだ・あい)
料理家・唎酒師。料理研究家のアシスタントを務めながら日本料理店に勤務し、和食の基本を学ぶ。さらに和食を極めるために京都での板前修業を経て、独立。素材を生かした和食を中心に、料理教室で講師を務めるほか、雑誌や広告でも活躍中。
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〈撮影/山川修一 取材・文/遊馬里江〉
[提供/三井製糖]