(『天然生活』2018年5月号掲載)
こしあぶらの特徴
おいしい時期:4~5月
美しく透き通るような黄緑の新芽を食す。脂肪とタンパク質が豊富でコクがあり、独特のまろやかな風味がある。山菜の女王と呼ばれる。
※「おいしい時期」は、その年の気温や天候、地域などによって前後します。また、促成栽培ものは、時期が早くなります。
こしあぶらのおいしい調理法と下ごしらえの仕方
名前は知っているけれど、どう扱うか、どう食べるかが、わからない。そんな声におこたえして、下ごしらえの基本とおすすめの調理法などを紹介します。
調理法
味噌やくるみ、ごまなどであえものに。煮びたし、玉子とじ、汁の実にしても。パスタの具材や炒めものもおいしい。天ぷらにする場合は、下ごしらえなしで生のままで。油で揚げると、あくはうま味になり、栄養素も逃げない。
下ごしらえ
1 かたいはかまを手で取り除き、根元の茶色い部分を薄く切り落とす。水洗いし、キッチンペーパーで水けをしっかりとふく。
2 天ぷらなど、揚げる以外の調理法を用いる場合は、湯1Lに対し、小さじ1の塩を加えてさっとゆで、粗熱が取れる程度に、ごく軽く水にさらしてあくを抜き、水けをきる。
保存方法
乾燥しないよう新聞紙で包み、穴をあけたポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で2〜3日保存可。かために塩ゆでしたものを冷水で急冷し、水けをふき取って冷凍保存も可。
いまは‟贅沢”な存在の山菜。本来はとても身近な食材
山菜には、‟贅沢”な印象があります。ほんの少し、アクセント的に味わう嗜好品に似た存在。ところが、白戸啓子さんいわく、「昔は‟それしか食べるものがないから”山菜を多く食べていた」そう。
「現在は季節に関係なく野菜が流通しているけれど、本来、山菜が出まわる早春は、野菜の端境期。この時季に食べられるものって、山菜くらいしかなかったんですよ。本来は、贅沢どころか、とても身近な食材。昔の人は、食べづらいような食材も、生きるためにどうにか工夫して、食べられるようにしていたんですね」
また、山菜といえばあくが強いため、下ごしらえが面倒なのも、つい敬遠してしまう理由。けれど、扱いの簡単な、あくの少ない山菜も、実は幾つもあるのです。
「多くの野菜が春を問わず流通している状況で、いまも山菜だけは、春のひと時しか出まわりません。そういった意味では、いまはもう、‟贅沢”な存在ともいえますね」
春の山菜は、その一瞬を逃したら、もう次には、出合えないかもしれない存在。さて、今年は、幾つの春を楽しめるでしょうか。
〈取材・文/福山雅美 イラスト/はまだなぎさ〉
白戸啓子(しらと・けいこ)
2005年に立ち上げた、野菜に特化した料理サロン「野菜の食卓」主宰。2008年から「伝統野菜プロジェクト」のメンバーとして、出身地である青森をはじめ東北地方や山間部に残る伝統野菜や料理、暮らしの知恵を現代に活かす活動を長く続ける。2013年に野菜のおすそ分けのバッグの本『新聞で作るナチュラルエコバッグ』(自由国民社)を上梓。ワークショップを都内で定期開催する。2020年に埼玉県ときがわ町の山間部に移住し、地元の採れたて野菜と向き合う生活をスタート。http://vegefull.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです