ふわっと穏やかに香る「練り香水」
一般的に「香水」といえば、体にシュッと吹きかける液体の香水を想像されるのではないでしょうか。アルコールと香料からつくられる一般的な香水は、体にまとった瞬間からすぐに香りが広がり、時間の経過とともに香りの変化を楽しむことができます。
それに対して、今回ご紹介する「練り香水」はみつろうを使ってつくります。「ソリッドパフューム」や「ソリッドフレグランス」とも呼ばれ、液体の香水と比べて、穏やかにふわっと香るのが特徴です。保湿成分がベースとなっているので、直接肌に塗って香りを楽しむことができます。
今回は、紫根という生薬を使って、春らしいピンク色の練り香水をつくります。香りは3種類の精油をブレンドし、春をイメージした甘い軽やかな香りに仕上げました。
かわいらしいピンク色をつくり出す生薬「紫根」
紫根とは、多年草の植物「ムラサキ」の根を乾燥させたもので、染料で使用される「軟紫根」と生薬で使用される「硬紫根」があります。
日本で初めて全身麻酔を成功させた医師・華岡青洲が江戸時代に考案した漢方薬「紫雲膏」は、火傷や湿疹、あかぎれ、しもやけ、肌荒れなどに使われますが、この主成分のひとつが紫根です。
紫根には、「紫根抽出物」や「シコニン」という薬用成分が入っており、肌荒れの予防や、肌のハリ・弾力の向上に効果が期待できます。
この紫根を植物油に浸けると、ピンク色〜赤紫色のオイルができます。今回は、椿油に紫根を短時間浸出させてピンク色の練り香水をつくります。
肌なじみがよく、保湿効果の高い「椿油」
椿油は、藪椿(ヤブツバキ)の種子から採取されるオイルで、日本でも昔から髪や頭皮ケアに使われてきました。肌なじみがよく、保湿効果が高いので、美容オイルとしても注目されています。
椿油は、老舗の製油所で昔からの伝統製法を守りながらていねいに採油しているところが多く、高価ではありますが、安心安全な原料として、手づくりコスメなどにいかすことができます。
練り香水づくりに欠かせない「みつろう」
みつろうは、ミツバチが巣を作るときに分泌するもので、抗菌作用や保湿作用があります。熱を加えると柔らかくなり、冷めると徐々に固まる性質があることから、クリームの原料としてよく使われています。
肌に潤いを与え、乾燥から守る「シアバター」
シアバターは、アフリカのシアバターの木の実から取れる油脂で、肌に潤いを与え、乾燥から守ってくれます。重すぎないテクスチャーで、そのままクリームとしても使うことができます。
春のやさしいお花の香りを演出する「ローズゼラニウム」
ゼニラウムの品種はいくつかありますが、今回使うローズゼラニウムは、葉と茎に香り成分があり、春のやさしいお花の香りを演出してくれます。葉を強く揉み込むと、バラのような香りがしますが、蚊が嫌いな香り成分を持っているので、虫除けとしても人気のあるハーブです。
子供から大人までほっと安らぎを与えてくれる「スイートオレンジ精油」
スイートオレンジは、和名を「アマダイダイ」と言い、その名の通り、甘味のあるジューシーな香りで、子供から大人までほっと安らぎを与えてくれる人気の精油です。前述のゼラニウムにスイートオレンジをプラスすると、春の新生活にピッタリな、軽やかな印象をもたらします。
深呼吸を促すような香りの中心役「ラベンダー精油」
ラベンダーの精油には、真正ラベンダー、スパイクラベンダーなどたくさんの種類がありますが、アロマテラピーの分野で「ラベンダー」と呼ぶ場合は、真正ラベンダーを指すことが多いです。
今回ご紹介する練り香水は、春のワクワクした気持ちを表現していますが、中でもラベンダーは深呼吸を促すような、香りの中心となる役目を担っています。ぜひ、体感してみてくださいね。
春の香りの練り香水のつくり方
材料(出来上がり量 約20mL分)
● 紫根 | 2g |
● シアバター | 5g |
● みつろう | 3g |
● 竹串 | |
● ゼラニウム精油 | 3滴 |
● スイートオレンジ精油 | 3滴 |
● ラベンダー精油 | 4滴 |
※ 紫根は手づくりコスメや石鹸の材料店などで、シアバターとみつろうはアロマテラピー専門店で購入できます。
つくり方
1 紫根を2gはかり、その上から椿油を8gはかって入れます。
2 ガラス棒でよく混ぜ、ラップをして一日置きます。
3 2をこして、耐熱容器に入れます。椿油はこすと1gほど減り、全部で7gほどになります。
4 3にみつろうとシアバターを入れます。
5 4を湯煎にかけ、材料を全部溶かします。
6 容器に注ぎ、そのまま粗熱を取り、冷まします。
7 その間に別容器で、3種類の精油をブレンドして春の香りをつくります。ゼラニウム精油を3滴、スイートオレンジ精油を3滴、ラベンダー精油をそれぞれ順番に入れて、竹串でよく混ぜ、1つの香りになるように仕上げます。
8 6にブレンドした精油を入れて、再び竹串でよく混ぜ合わせます。
9 そのまま5分ほど置き、固まれば出来上がりです。
使い方のおすすめ
練り香水は、香りの持続時間が短いので、重ねづけすることができ、ちょっとした気分転換にも役立ちます。また、保湿成分であるオイルやみつろうでできているので、肌を潤し、春先の乾燥から守ってくれますよ。
おすすめの使い方は、
・ヘアクリームとして、髪の毛先につける
・香水として、手首の内側・耳の後ろ全体・首筋・鎖骨まわりにつける
・爪クリームとして、指先全体につける
などです。ぜひお試しくださいね。
アロマテラピー専門店に行くと、いろいろな精油の香りを試すことができます。
最初は、その時にピンときたものを3つぐらい合わせることで、ご自分に似合う香りになりますので、シーンや気分に合わせた練り香水をつくってみてくださいね。(大いにビギナーズラックを楽しんで!)
私の娘は、普段から香水が大好きで、練り香水を初めて使った時は、「蓋を開けた時のようには、香りがしないんだね。全然香らない! 」と少し不満げでしたが、指先に塗った時に、「パソコンのキーボードを叩いた時にかすかに感じるやわらかさがいいね」と言っていました。
周りに香りが拡散しないので、最初はそれが物足りないかもしれませんが、同じ空間にいる人に香りの影響を及ぼさず、自分で香りを楽しみたい時にはおすすめです。
さて、この記事が連載最後となります。1年間「私の植物アロマワーク」をお読みいただきまして、ありがとうございました。
私のライフワークでもある「植物アロマ」のことは、これからも変わらず、SNS等で発信していきますので、引き続きそちらもご覧いただけたら嬉しいです。
季節や時間、シーン、その時の気持ちに合わせた植物アロマワークは、新しい日常をつくり出し、いきいきと輝いていくことと信じています。
末吉 真由美(すえよし まゆみ)
暮らしの植物アロマケミスト/恋する石けん®︎研究家
(公社)日本アロマ環境協会資格認定校フェールマヴィ校長
日本メディカルハーブ協会認定ハーバルセラピスト
家族と暮らしのハウスキーピング品やコスメ、恋する石けんワークを通して地域で生き生きと活躍する女性を増やすことが使命。
●ウェブサイト:フェールマヴィ
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●Instagram:@fairemavie.mami
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