• 認知症、うつ、やる気がの低下、イライラ……あらゆる不調の悩みを「ウォーキング」で予防・改善してみませんか? これまで1万人以上の脳画像をみてきた脳内科医・加藤俊徳さんが、‟歩くことが最強の脳トレーニングになる”理由を脳科学の観点から解説。長年実践しているウォーキング方法の中から「人混みすり抜け・ウォーキング」を紹介します。
    (『最強のウォーキング脳』より)

    注意力を上げる「人混みすり抜け・ウォーキング」

    都会のスクランブル交差点。あまりの人の多さにうんざりする方もいることでしょう。ですが、人の多い場所は脳を強化するウォーキングを行う絶好の場所でもあります。

    それは、なるべく早い速度で歩き、人にぶつからないように注意しながら歩く、人混みすり抜けウォーキングを行うことができるからです。

    画像: 注意力を上げる「人混みすり抜け・ウォーキング」

    人の流れに沿って歩き、前にいる人を追い抜き、向かいから来る人をよけて歩きます。まるでサッカーの一流選手がドリブルで相手をかわすかのようなイメージで歩くのです。これは、脳番地の中でも視覚系脳番地を強化する効果があり、集中力の向上も期待できます。

    向かいから来る人がどのような動きをするのか観察し、察知するのは、視覚認知の強化になります。人だけでなく、自転車が向かってくることもあります。気を付けて歩くので、ぼんやり歩いて人にぶつかる、ということもありませんし、俊敏性を高める意味でもよいトレーニングです。

    また、ぶつからないよう集中することで、脳に無駄に悩み続ける余裕を与えないという効果もあります。

    スクランブル交差点は向かいからだけではなく、斜めなどいろいろな方向から人が向かってきます。

    ぶつからないように視野を広くして歩く必要があるので、空間認知能力も上がります。

    あらゆる不調の悩みは運動脳から解決する

    人間の脳は場所によって果たす役割が異なり、私はこれらの場所を「脳番地」と呼んでいます。脳番地は主に運動系・感情系・視覚系・思考系・聴覚系・理解系・伝達系・記憶系の8つの系統に分けることができます

    これらの脳番地で起こるトラブルが、さまざまな不調として現れます。

    物忘れが多いのなら理解系や記憶系の脳番地、怒りを抑えられないのなら感情系脳番地に問題があるのかもしれません。その中でも各脳番地と密接な関係をもち、影響を与える重要な脳番地が運動系脳番地=運動脳です。

    ウォーキングは、この運動脳にスイッチを入れ、脳全体を鍛えることができる最も簡単かつ効果的な方法なのです。

    運動脳はここにある!

    画像: 歩き出す際には前頭葉(太線内)が働く。運動脳は、前頭葉にあり、カチューシャのように脳の左右にかかっている(色のついた部分)

    歩き出す際には前頭葉(太線内)が働く。運動脳は、前頭葉にあり、カチューシャのように脳の左右にかかっている(色のついた部分)

    歩く気が起きない」ときは要注意!

    私は、「ウォーキングをする気が起きない」「なかなかウォーキングできない」とクリニックで訴える方にも注目しています。

    そういう方々に、積極的に歩こうとしない理由を尋ねると「時間がない」「腰が痛い」などと理由を答えてくれます。しかし、根本的な理由は脳にあるのです。

    ウォーキングに限らず、身体を動かす行為は、自分で「動かしたい」と思わなければ基本的にはできません。ですから、ウォーキングは主体的な行動といえます。

    なぜ人は歩くのでしょうか? それは目的があるからです。夢遊病のような特殊なケースは別として、ほとんどの場合、目的を達成するための手段として歩いているわけです。

    誰かと会いたい、何かを買いたい、健康になりたい――。

    このような目的があることで脳が指令を出し、私たちは足を動かして歩いているのです。このとき、意欲や思考力など他の脳の働きも必要となります。

    歩く気が起きない人の脳は、こういった目的が見つからない状態になっています。

    このような時は、ささやかな目的をもつことです。

    たとえば、私は室内で犬を飼っているのですが、その犬が私を呼びに来て吠えたら、一緒に歩いて移動し、食事を与えます。これも犬に食事を与えるという目的をもった立派なウォーキングです。目的をもつことで、ウォーキングに「脳を鍛える」という付加価値が生まれます。

    目的をもって歩くことの大切さは、人類の進化の過程を考えるとよくわかります。

    獲物や収穫の多い場所まで歩いて移動し、狩りをする。あるいは、食料を探す。このような行動を効率的にこなせるよう、人類は四足歩行から二足歩行へと進化しました。

    コミュニケーションを取るためにも、足による移動が必要でした。人類の進化には、常に歩くことが密接に関係していたのです。

    現代人も歩くことによって、ごほうびや達成感を得ようとしています。

    外出先でおいしいものを食べ、景色を楽しむ。さらに、その移動の過程において楽しみを見つける。こうして快感ホルモンと呼ばれるドーパミンが脳内で分泌され、脳を活性化しています。

    小さくても大きくても良いので目的をもって歩き、脳を鍛えていきましょう。

    〈イラスト/モヤマチカコ(脳)、柏原昇店(ウォーキング)〉

    本記事は『最強のウォーキング脳』(時事通信出版局)からの抜粋です



    加藤俊徳(かとう・としのり)

    脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。MRI脳画像診断、発達障害・ADHDの診断・治療の専門家であり、脳番地トレーニングの提唱者。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。「加藤プラチナクリニック」を開設し、独自開発した加藤式脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。薬だけに頼らない治療の一環としてウォーキングを推奨するようになる。InterFM897「脳活性ラジオ Dr. 加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務める。著書に『ADHDコンプレックスのための脳番地トレーニング』(大和出版)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版社)、『すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『最強のウォーキング脳』(時事通信出版局)など多数。

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    1万人以上の脳画像をみた脳内科医・加藤俊徳さんが、クリニックを訪れる患者さん達にすすめ、自らも長年実践してきたウォーキング法や、ウォーキングが脳に与える効果を分かりやすくまとめた1冊です。

    ウォーキングをすると、脳にどのように影響するのか? 歩かないことで脳に起こるリスク「運動負債」とは? 仕事に集中できない、モヤモヤする、うつ、ADHD、イライラ、認知症……さまざまな悩みを抱える患者さんにも、ウォーキングをすすめる理由とは。

    「最近歩く時間が減った」という方にも、「心身の健康のために効果的なウォーキング法を知りたい」という方にもおすすめしたいノウハウが詰まっています。



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