日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
5月5日 21時26分
二十四節気・立夏(りっか)
生きものが活発に動き出すころ
暦の上ではこの日から夏。
木々が若葉を成長させるころです。
春分と夏至の間にあたる立夏。
初候でカエルが鳴き、次候でミミズが土中からはい出て、末候ではタケノコが顔を出すころと表現されます。
生き物が活発に動き出し、夏の始まりが感じられます。
立夏の期間の七十二候
5月5日から5月10日ごろ
立夏初候・ 蛙始鳴[かわずはじめてなく]
おたまじゃくしがカエルになり、そこかしこの田んぼやあぜ、水たまりで鳴き始める季節です。
なかでも山の神の使いとされるアマガエルが鳴くのは、近くで雨が降るという知らせです。
なかなか鳴き声が聞こえないときは、雨乞いの神事をする地域もありました。
5月11日から5月15日ごろ
立夏次候・ 蚯蚓出[みみずいずる]
「蚯蚓」はミミズと読みます。
ミミズは土の中の有機物を食べて成長し、その糞は農業用の肥料にもなるといわれています。
ですから、土の中からミミズがニョロニョロとはい出てくる場所は、豊穣な土の証拠なのです。
この時期は田植えのシーズン。
土を食べて土壌を耕す益虫のミミズを、見た目が気持ち悪いなどと言ってはいられませんね。
5月16日から5月20日ごろ
立夏末候・ 竹笋生[たけのこしょうず]
竹林にタケノコが顔を出すころです。
しかし、立夏の末候にもなると、おいしい孟宗竹は旬を過ぎ、真竹や淡竹のシーズンに。
たけのこは成長が早く、ちょっと油断するとあっという間においしい時期が過ぎてしまいます。
「竹」に「旬」と書く筍(たけのこ)。
今しか食べられない旬の味を逃さずいただきましょう。
* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
◇ ◇ ◇
*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2022年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。