5月21日から6月4日ごろの二十四節気七十二候
日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
5月21日 10時23分
二十四節気・小満(しょうまん)
万物にエネルギーが満ち、成長していく季節
「小満」は、「万物が盈満(えいまん)すれば、草木枝葉が茂る」といわれるように、陽気が増し、天地にエネルギーが満ちあふれ、万物が成長するころという意味があります。
麦が穂を付け、たわわに実るので、別名「麦秋」とも称されます。
小満の期間の七十二候
5月21日から5月25日ごろ
小満初候・ 蚕起食桑[かいこおきてくわをはむ]
孵化した蚕が、桑の葉を一生懸命食べては休み、休んではまた食べてを繰り返し、立派な幼虫に成長するころです。
続いて繭づくりの時期に入り、真っ白な糸を吐いて繭玉を作ります。
このころ皇居では皇后陛下が紅葉山御養蚕所で蚕に桑を与える「御給桑」(ごきゅうそう)をされます。
日本古来の「小石丸」という品種が現在も飼い継がれており、その生糸で織られた絹織物は、宮中の儀式や祭祀で用いられます。
5月26日から5月30日ごろ
小満次候・ 紅花栄[べにばなさかう]
日本では古くから、植物が衣服や化粧の染料として使用されてきました。
花びらや種子、そして樹皮なども染料の原料となります。
なかでも紅色の染料である「紅花」は、最も古く広く使用されてきた植物。
平安時代から栽培されていたといわれ、万葉集や源氏物語にも記載があるほどです。
紅花栽培が盛んなことで有名な山形県では、「紅花御殿」のたつ商家があったほど、かつては貴重な植物でした。
5月31日から6月4日ごろ
小満末候・ 麦秋至[むぎのときいたる]
毎日のようにシトシトと雨が降り、うっとうしい季節に入ります。
梅雨は「黴雨」とも書き、疫病や感染症がはやりやすい時期でもあります。
初夏なのに「麦秋」とはなぜ?と思いますが、美しく実った麦の穂が、山からの爽やかな風に揺れる景色を詠い、麦の刈り入れの時期のことを、秋と表現したのでしょう。
日本人の情緒的な感性がもたらした言葉ですね。
* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2022年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。