• 歳を重ねて、「あ~そういうことだったのか!」と「はたとわかる」ことがあります。編集者・ライターの一田憲子さんが、50代になったいま、悩んだり迷ったりしていた20代のときの自分に伝えたいこと。今回は、一見ネガティブなものの中にこそ、新しい扉があるのかも!というお話です。
    (『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』より)

    [20代の私]
    すごくハッピーなはずなのに「これがこのまま続くはずがない」と思ってしまう。

    [50代の私が伝えたいこと]
    恐れ、違い、不安。一見ネガティブなものの中にこそ、新しい扉があるのかも!

    「恐れ」の中には秘密の扉がある

    画像: 「恐れ」の中には秘密の扉がある

    あなたは最高にいいことがあった日、ふと「これがこのまま続くはずがない」って怖くなったりしませんか?

    日常の中には、あちこちに「小さな恐れ」があるよね。自分とはちょっと意見が違う人と会うのはなんだか気が重いし、どれだけ一生懸命準備したとしても、失敗することを考えると眠れなくなる……。

    そして、どうしたら恐怖を避けられるかと考えるし、怖さを味わうことなく平穏に過ごせますようにと祈るもの。

    でも最近、その方向で本当にいいのかな?と考えるようになりました。

    行く先に「恐れ」というものの影が見えてきたら、横にある細い道を探す。そして、無事に回り道ができたら「あ〜、よかった」と胸をなで下ろす。それはそれで無駄に傷つかず、涙を流すこともなく、ハッピーでいいのかもしれません。でも……。

    ここ最近出会った人がみんな「恐れ」の中には秘密の扉があるって口をそろえて教えてくれたんだよね。いったい、これってどういうことなんだろう?

    谷があるから山がある。谷でしか見えない風景もある

    インタビューをさせていただいた中尾ミエさんは、「可愛いベイビー」で歌手デビューするやいなや大ヒットという、ラッキーなスタートを切った方です。私は思わず「最初に最高を経験したら、その後‟落ちる”ことが怖くなかったですか?」と聞いてみました。すると、こんなふうに教えてくださったんです。

    「谷があるから山がある。山頂にいるのなんて、ほんの一瞬ですよ。下りてこないと次の山には登れない。だから谷にいる時を楽しめばいいんじゃない? そうすれば、また違う山に登れますよ」って。

    なるほど〜! 谷に落ちることは最悪……って思い込んでいたけれど、谷でしか見えない風景があるのかもしれないねえ。

    人って違うのが当たり前なんじゃない?

    人とのコミュニケーションについて取材をさせていただいたワインバー「ローゼンタール」店主の島田由美子さんに、「人に違うって言うのは、怖くありませんか?」と聞いてみたら……。

    「人って違うのが当たり前なんじゃないんですか?」と逆に問い返されてびっくり!

    「私は、『同じだ』っていう状況の方が怖くて『ほんとに同じ?』って疑いたくなるんです。『違う』ってわかったら、『どう違うんだろう?』と知りたくなる。それがコミュニケーションじゃないかなあ」って。そうか!と膝を打ちました。私は、人と意見が食い違うことが大嫌いで、できれば「そうだよね〜」って丸く収まる関係でいたいって思っていました。

    でも、そんな関係の中からは、新しいものは何も生まれない……。

    画像: 人って違うのが当たり前なんじゃない?

    違い、対立、恐怖、不安。今までネガティブだと思い込んでいたことは、実はちっとも悪いことじゃなく、むしろその中に次に進むためのパワーや希望や、気づきや夢が含まれているのかも。

    曹洞宗の僧侶、藤田一照さんは「一切合切に対する悩みは、否認から生まれる」と著書で書いていらっしゃいます。

    つまり人は、現実を現実と受け止めたくないから否認してしまう。それは、「自分の都合に合わない事実は、自己防衛のために認めようとしない」ということ。その否認をくるりとひっくり返し、「受容」してみたら、「新しい体験を内に取り入れる」ことができるようになるのだとか。

    こんなふうに、ここ最近のいろんな人との出会いがピタッと重なって、もしかして「怖い!」って感じた時がチャンスなのかも!と思うようになったんだよね。

    山を登りつめた後に下りた谷だから、自分を見つめ直し、人の意見に耳を傾け、何かを学ぶ姿勢になれる。

    自分とは思考回路がまったく違う人だから、思いもしなかった視点を教えてくれる。

    「恐れ」の中には、意外や「見たこともない花の種」が落ちているのかも。だからね、必要以上に怖がるのは、そろそろ卒業しようと思っています。

    「わあ、怖そ〜!」って感じたら、「何かいいことあるかも」とワクワクしてみたいと思っています。

    本記事は『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』(扶桑社)からの抜粋です



    一田憲子(いちだ・のりこ)
    1964年生まれ。 編集者、 ライター。 OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして数々の書籍や雑誌で活躍。 取材やイベントで全国を飛び回り、 著名人から一般人まで、 これまで数多くのインタビュー取材を行い、 その独自の筆致には定評がある。近著は『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』(扶桑社)。ホームページ「外の音、 内の香 (そとのね、うちのか)」では、暮らしの知恵を綴っている(https://ichidanoriko.com/)

    ◇ ◇ ◇

    『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』(扶桑社)

    『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』(扶桑社)|amazon.co.jp

    amazonで見る

    『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』(扶桑社)|amazon.co.jp

    50代になったイチダさんが「はたとわかった」これからの人生を豊かにする40のことを紹介。

    「この本では、50代の今の私が『わかった』ことを、20代だった私に語りかける形で綴ってみました。私と同世代の方には『そうそう!』と共感していただけるかもしれません。20代、30代のまだ惑いの中にいる方には、不安や悩みを少し和らげるちょっとしたヒントになるかもしれません。」(一田憲子さん はじめにより)



    This article is a sponsored article by
    ''.