さわやかな果実酢で、夏をのりきる
氷砂糖と聞いて思い浮かべるのは、やはり梅雨時季の梅仕事。自家製の梅シロップや梅酒づくりに氷砂糖を使った人も多いはず。
もしキッチンに氷砂糖が残っていたら、ぜひ挑戦したいのが果実酢づくりです。
「果実酢のつくり方って、とてもシンプルなんです。果実と氷砂糖、お酢を同量ずつびんに詰めるだけ。割合で覚えておくといいですよね。
お酢と果物の組み合わせは、さっぱりとして暑い時季にうれしいんです。お酢には疲労回復効果があるので、夏バテ予防にも。水や炭酸で割ってドリンクにするのはもちろん、ドレッシングにしたり煮込み料理の隠し味にしたりと、料理にも活用しています。
今回の果実酢は、桃とローズマリーでつくりました。まだ熟し切らず甘みが薄く感じる桃でも、純度が高い氷砂糖が香りをしっかりと引き出して、自然に甘さを補ってくれます」
桃のビネガードリンクをつくりながら、にこやかに話すワタナベさん。
氷砂糖には賞味期限がないので、多めに用意しておいて、旬の果物が手に入ったときにすぐに果実酢やシロップをつくれるようにしているそうです。
「果実を氷砂糖で漬けると、毎日少しずつ溶けていきます。ゆっくりと糖分が浸透して果実のエキスが出ているのが目に見えて、楽しいんですよね」
保存びんを開ければ、桃特有の華やかな香りがふわり。
果実酢のほのかな薄紅色も美しく、見ているだけでも幸せな気持ちになります。
ワタナベマキさんの
桃のビネガーのつくり方
甘くてやさしい桃の香りに、氷砂糖のすっきりとした甘み、酢の心地よい酸味が一体となった、桃のビネガー。
フルーティーさと甘酸っぱさの中に、ローズマリーの青々とした香りがアクセントになっています。
使用する酢は、穀物酢や米酢、りんご酢など個性が強すぎないものがおすすめ。桃が入ることで、酢の酸味もやさしくなり、料理やドリンクに使いやすくなります。
「桃ビネガーを炭酸で割るときは、桃ビネガー大さじ2をグラスに入れて、氷と炭酸水100mLを注ぎます。漬け込んだ桃も2切れほど入れて、一緒に食べるとおいしいですよ」
材料(約1L分)
● 桃 | 2〜3個(約400g) |
● 氷砂糖 | 約400g |
● 酢(穀物酢、米酢、りんご酢など) | 約400mL |
● ローズマリー | 1枝 |
基本の分量 1:1:1(桃:氷砂糖:酢)
下準備
保存びんを煮沸消毒またはアルコール消毒する。
つくり方
1 桃の湯むきをする。鍋に湯を沸かし、桃を入れる。20秒ほどで引き上げ、氷水にとる。皮をむき、ペーパータオルで水気をよくふく。
2 桃の種をよけながら、6〜8等分のくし形切りにする。種と皮を除いた正味を計量する。
3 桃と同じ重量の氷砂糖と酢を用意する。
4 保存びんに桃の1/3量を入れ、その上に氷砂糖1/3量を重ねる。残りも交互に詰め、一番上に氷砂糖がのるようにする。途中でローズマリーを入れる。全量が入ったら軽く押してなじませる。
5 上から酢を注ぐ。
6 ふたをしめて冷暗な場所におく。1日1回、上下に返すようにふり、エキスを全体に行き渡らせる。7〜10日ほど後に、氷砂糖がすべて溶けたら完成。
保存期間
・桃とローズマリーを取り除き、室温で約1カ月保存可能。
・冷蔵庫では、桃とローズマリーが入った状態で約1カ月保存可能。
◇ ◇ ◇
ワタナベさんのひと工夫
● 桃は湯むきをすると、手早くつるりと皮を取り除くことができる。
● ローズマリーの代わりに、レモングラスを入れてもさわやかに。
● 好みでシナモン、粒こしょう、クローブなどのホールスパイスを加えてもよい。
桃のビネガーを使った
桃の冷製パスタのつくり方
桃のビネガーは、料理にも大活躍。
極細のパスタ「カッペリーニ」を使った、夏にぴったりな冷製パスタを教わりました。
この料理の主役は、桃の果実。氷砂糖と酢がしみ込んだ桃を噛みしめると、みずみずしさとさわやかさが口いっぱいに広がります。
モッツァレラチーズをちぎって加えることで、桃のビネガーがよくからんで一体感のある味わいに。酸味と甘み、ジューシーさがたまらない、夏のごちそうです。
材料(2人分)
● カッペリーニ | 140g |
● 桃ビネガー | 大さじ3 |
● 桃ビネガーの桃 | 適量 |
● モッツァレラチーズ | 100g |
● オリーブオイル | 大さじ2〜3 |
● バジル | 6~7枚 |
● 塩 | 小さじ2/3 |
● 黒こしょう | 少々 |
つくり方
1 鍋に湯を沸かして塩(分量外)を加え、袋の表示に従ってカッペリーニをゆでる。ゆで上がったら氷水にとり、水気を切る。
2 ボウルに1、桃ビネガー、ちぎったモッツァレラチーズ、塩を入れてあえる。桃、オリーブオイルを加えてさらにあえる。
3 2を器に盛る。バジルをちぎって散らし、黒こしょうをふり、オリーブオイル(分量外)を回しかける。
ワタナベマキ(わたなべ・まき)
料理家。グラフィックデザイナーを経て、料理の世界へ。シンプルな調味料と調理法で素材の魅力を引き出す料理が人気。四季を大切にしたていねいな暮らしぶりが、幅広い年代から共感を得ている。
インスタグラム:@maki_watanabe
もっと氷砂糖のレシピを知りたい人は
全日本氷糖工業組合 | 旬の果実でおいしく楽しい氷砂糖
氷砂糖でくらしをもっとカラフルに。梅酒づくりでおなじみの氷砂糖は、じつは梅以外の果実とも相性Good。色とりどりのフルーツを使って手づくりを楽しめる氷砂糖の世界、あなたものぞいてみませんか。
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協力/全日本氷糖工業組合
http://www.hyoutou-kumiai.jp/tezukurilife/
〈料理/ワタナベマキ 撮影/林 紘輝 取材・文/河合知子〉