ものの少ないシュッとした部屋にしよう
引っ越ししました。
すごく近所のマンションなので、生活圏内に変化もなく、部屋が変わったくらいだから余裕よ。なんて思っていたのですが、予想に反して疲れ果ててしまいました。
歳なのか、暑さなのか、いや、そのどちらもなんでしょうけれど、1つだけ確かなことがあります。
私は1人暮らしの時は2年おきくらいに引っ越しをしていました。なので、ものも少なく、ひょひょいっと荷物をまとめて、引っ越し業者さんもテテテーと運んで、パッと終わるのがあたりまえだったのです。
ところが3人家族の荷物ったら、何がこんなに集まってるんだ……と途方に暮れるほどの量。
こう見えても私は、断捨離を頻繁にやっている人間でした。1年着なかった服や靴は売りに行ったり、収納家具を買うくらいならものを減らす。ということを意識していたつもりです。
なのに、なぜ、なぜに。こんなにものが溢れているのか。増えるワカメのように、なにかを吸い込んで膨らんでいるとしか思えません。
荷解きをしながら分かったのですが、私の荷物、雑貨がやたらと多いんです。分類でいうと、飾りです。
かわいいだけで、これといった用途のないもの。それがやたらと好きなんです。ミニマリストなら捨てるものでしょうか?
ミニマリストに憧れている部分もあるのだから、手放せばいいのに! と自分に言い聞かせても捨てられない。
そういえば、実家にはそういう類の雑貨がぎちぎちに飾られている棚があったことを思い出しました。
この棚はなんなんだ? 意味のないものが詰まっている。と、ずっと思っていたのですが、ようやく親の気持ちが分かるようになりました。
そこにはかわいいものがただ飾られているだけではなくて、新婚旅行で買った思い出の写真立てやら、娘が家庭科クラブでつくった刺繍の作品や、弟が修学旅行で買ってきてくれた日光猿軍団のキーホルダーなどの、家族の小さなストーリーが飾られていたわけなのです。
それは、むやみに捨てられないわけです。
私の雑貨にも、ロケ先で女の子が描いてくれた私の似顔絵や、夫婦の仕事で行った鳥取砂丘で買った、鳥取砂丘の砂でできた「ぬりかべ」とか、西加奈子さんからいただいた西さんが描いた絵が表紙のノートとか、私にとってのステキな物語があって、ぜんぶ愛おしいのです。
ものの少ないシュッとした部屋にしようと、引っ越すたびに思うのですが、暮らしているうちに、そこら中に色んな雑貨を配置しはじめる私です。
もう、シュッとした部屋は諦めて、「実家みたいで落ち着くわぁ。」と言われる部屋を目指そう。そう心に決めました。
白鳥久美子(しらとり・くみこ)
1981年生まれ。福島県出身。日本大学芸術学部卒。2008年に川村エミコとたんぽぽ結成。10年、フジテレビ系『めちゃ2イケてるッ!』の公開オーディションで新レギュラーの座をつかみ一躍人気者に。コンビとしての活動に加え、テレビ、ラジオ、ドラマ、舞台など多方面で活躍中。趣味は、散歩、高圧電線観察、シルバニアファミリー。特技は、詩を書くこと。唎酒師(日本酒のソムリエ)の資格ももつ。