德田民子さんの台所をじっくり拝見します
安曇野暮らしをはじめてから、うんとシンプルになったという德田さんの台所。暮らしの基本となる場所だからこそちょうどいいサイズ感を大切に、「見せる収納」ですっきり。取り出しやすいレイアウトは掃除も片づけも楽々です。
德田家に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくる台所。ブルーのタイルにステンレスのコントラストが美しいだけでなく、いかにも使いやすそうです。
「家の設計上、壁から勝手口までの距離に制限があったので、シンクや冷蔵庫の大きさは綿密に計算しました。ガスレンジは『無印良品』にオーダーメイド。すべて『これしかない』というサイズ感なんです」
東京のマンション住まいだったころは、あらゆるものを引き出しにしまう収納でしたが、ここでは一転して「見せる収納」になったのだとか。自由が丘や合羽橋、吉祥寺などで少しずつ集めてきたお気に入りのなかから、必要なものだけを厳選。定位置を決めて「使ったら戻す」を徹底することで、見えていても整った台所がかなえられていると話します。
「そもそも几帳面なタイプではない」からこそ、ものの絶対量を減らし、片づけルールを明確に。そして、並んでいる姿が美しいかどうか、「見た目」に気を配ることも、大切なポイントです。
唯一扉がついた作業台下には、カトラリーやふきん類、調味料などこまごまとしたものをまとめて収納。分類用の引き出しには「無印良品」のポリプロピレン収納シリーズが活躍しています。
「調味料はあまり大きなものを選ばず、使い切るごとに買い足すようにして、ものを溜めない工夫をしています」
使い勝手抜群のキッチンワゴン
德田さんの台所の、もうひとつの主役といえば、アンティークのキッチンワゴン。盛り付け台に、収納にと幅広く活躍しながらさりげない美しさを放っています。
調理道具やお茶類をむだなく、すき間なく並べたワゴン。台の上にはガラスコップだけを置き、片付けておきます。定位置が決まってきたので、場所を入れ替えることはほとんどないのだとか。ピンチで吊るしたチェックのキッチンクロスは、德田さんお手製。
上段のシンク側には、ざるやボウル、バットを重ねてひとまとめに。たたずまいが美しいアンティークのブリキボックスには、くるみ割り器や瓶オープナーなど「使用頻度は高くないけれどあると便利な道具」を収納しています。箱のふちに並んでいる、使いかけの袋をとめるピンチもステンレスで統一。
「重い鉄のフライパンなどをこだわって使っていたこともありましたが、いまは『軽くて使いやすい』が一番。合わないと感じたものを潔く取り替えたら、台所仕事がぐっと楽になりました」と話す德田さん。
がんばりすぎずに自分らしく暮らす、台所のアイデアが詰まっています。
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德田民子(とくだ・たみこ)
元『装苑』編集長で、長野県安曇野市在住。スタイリッシュなファッションと、シンプルで工夫のある暮らしが人気の、ファッションアドバイザー。青いタイルを効かせた、好きなものだけを厳選した心地よい台所や、愛用の台所道具、センスあふれるファッションも、注目されている。
〈撮影/有賀傑 取材・文/玉木美企子〉
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家仕事やおしゃれを自分流に楽しむ德田民子さんの小さな暮らし
無理をせず、小さなことから工夫した、かごを使った片づけ法や、春夏秋冬の暮らしの楽しみも。段取りよく、そして自分が楽しく過ごせるように。家仕事やファッションを自分流に楽しむ、德田さんの小さな暮らしが詰まった1冊です。