キッチンのリノベーション、夫のこだわりポイント解説
キッチンのリノベーションの話。「もうちょっと補足しておいたほうがいいんじゃない? 」と夫から提案されたので、今回はそこから始めます。
キッチンの棚の施工時間、大見得切って、「半日」と書きましたが、下準備には、もう少し時間がかかっています。ペンキとタイルの施工も別の日です。
キッチンに使った足場板はビンテージではなく新品のものです。みんな使い古しの足場板をキッチンに使うことには、抵抗があると思うから、説明を加えておいたほうがいいよ、と夫から言われました。
もう一度、書きます。新品です。
ただ新品だと見栄えが悪いんです。幸い、住みながらのセルフリノベでしたから、キッチンの収納に取りかるまで、半年くらいの時間がありました。
その間、板は水に浸け、日光に晒し、朽ちた感じに変化させたのは夫。大量に購入して、単に放置していただけのような気もするのですが。
灰色のレンガは中国のヴィンテージ。こちらは泥やらセメントを剥がして、ちまちま洗う作業を繰り返しました。それと板を洗い、サイズ調整し、室内に運び入れたのも夫。私は組み立て担当。
最近、キッチンの窓に手を入れました
そんなキッチンの収納ですが、最近、また少し変更しました。窓ガラスを替えたんです。キッチンの出窓には、レトロな昭和の型板ガラスが入っていました。令和の今、再び人気がでていますよね。
キッチンの窓ガラスが不透明だったのは、たぶん西陽を避けるためだと思います。でもせっかく景色が見えるのに、もったいない。びわ湖バレイがある比良の山々が見えるのです。
山には四季が宿る。冬場は冠雪しますしね。これを見ない手はないです。
幸い、キッチン側にもデッキを作ったので、直射日光は入らなくなりました。余談ですが、この家は1階が半階上がっていて、下は倉庫 (カヤックや工具の収納庫)になっています。地続きではないので、デッキが作れました。
先代の老猫はここで日向ぼっこをするのが好きでした。夫はそれを見るたび、「頑張って作った甲斐があった」と言ったものです。
話が逸れました。
開かずの窓が、美しい景色を切り取る窓に変わるまで
キッチンの窓、最初は開けることもあったんですよ。ところがここは季節によってはものすごい突風が山から吹き降ろしてくる。有名な比良おろしです。
ある日、その突風で、棚に置いていた「アスティエ・ド・ヴィラット」のサラダボールが宙に浮き、飛んで、割れました。お気に入りだったのに。以来、開かずの窓。
この連載のために、先日キッチンの写真を撮るとき、久しぶりに半分開けたんですよ。瞬間、森のような空間が広がった。美しい。よし、交換するぞ。
私、最近わりと毎日が『TODAY IS A GOOD DAY』なんですよね。機嫌がいいんです。
機嫌がいいとモチベーションが上がる。ガラス屋さんをネットで検索。健聴者は電話をすればいいんだけど、私の場合は対面でないと、依頼ができない。
あ、その前に夫に許可を得ないと。休みの日に恐る恐るお伺いすることに。そしたら夫が電話してくれるという。めずらしい。今日はいい日だ。
さらに電話を切ると、夫はサッシの窓を外し始めた。もしや? 確かに自分で持ち込めば、その場で替えてもらえる。出張費もかからない。何と、その日のうちに、透明なガラスにリノベーションされたのでした。
切り取られた景色は、すべて見えるものより、物語を生むような気がします。トンネルの先に見える景色もそう。そこに想像力が加わるからかな。暖簾をくぐる時のように、頭を傾げて視線を上げれば、美しい比良の山々。青い夏空。よし、今日は頑張ろう。
費用は2枚で6,000円でした。
透明になったせいで、「もしや外に出られるのでは?」と、この日は猫が2匹とも窓辺に。
眺めのいいキッチンやテーブルは、暮らしのモチベーションを上げる
私は動線より眺めが優先されたキッチンのほうが好きです。たぶん耳のせいだと思います。五感の一つが弱いから、それを目で補っている。私は極端な例だけど、人それぞれ、みんな違いますよね。違っていい。
好きな音楽をかけながら、ノリノリで料理をする人を知っています。私は景色バージョン。
家庭のキッチンは、収納はこうあるべきとか、あんまりとらわれないほうがいいと思う。スプーンがすぐに出てこなくたって、誰も怒りません。
キッチンはその家の舞台です。メインで立つ人が主役。主役のモチベーションが上がるキッチンがいい。ちなみに誰も訊いてないけれど、私は調理するときは、調味料を含め、使う道具は、先に全部出して、並べてしまうタイプです。なぜなら動線が悪くて、もたもたしてしまうから(苦笑)。すぐに出てこないから。
最後に今回もうひとつ。
ダイニングテーブルに欅の古い板を載せました。置く場所に困っていたんです。ところがテーブルとほとんど同じ長さだったのがよかった。ぴったりです。テーブルの真ん中が一段上がるだけで、見栄えがぐっと良くなるから面白い。
ここに大皿を並べると美味しく見えるんですよ。これも小さな舞台ですね。観客は夫と私。ときどき猫。キッチンは楽しくなくちゃ。
麻生 圭子(あそう・けいこ)
作詞家として数々のヒット曲を手掛けたのち、エッセイストに。京都町家暮らし、ロンドン生活を経て、現在は琵琶湖のほとりに住む。