(『人生後半、上手にくだる』より)
なかなか痩せない!
歳をとると、だんだん代謝が悪くなって、ちょっと食べすぎるとたちまち体重がはね上がります。食べる量と、体が消化する量のバランスが崩れ、今までと同じように食べていると、消化が追いつかなくなって、体重がジワジワ増える……。
しかも、若い頃は少し運動すれば、ストンと体重が減ったのに、最近ではなかなか落ちなくもなりました。30代の頃、ジムに通ってパーソナルトレーニングを受けていた時期があります。マシンを使ったかなりハードなトレーニングで、しかも女性トレーナーは鬼のような厳しさ! レッグプレスで、両足で思いっ切り押してもなかなか上がらないほどの過重を、10セット繰り返したり、バーベ ルを持ってスクワットをしたり。1週間に1度通うと、一気に8キロ痩せました。
あの時の記憶があるので、数年前に「よし! もう一度」と一念発起。近所のジムに通い始めました。ところが……。20年の時を経て、同じぐらいがんばってもまったく体重は落ちません。ただただ疲れが溜まるだけで、最後には体調を壊し退会しました。「ああ、若い時の体とは違うんだ」と思い知らされたできごとでした。もうハードな運動はできない……と今度はヨガやピラティスをやってみたけれど、体は多少柔らかくなったものの体重は変わりませんでした。
そんななかで初めて効果があったのが、友人に教えてもらって、自宅で始めたスクワットです。両足を肩幅に開き、お尻を突き出して膝から太ももが90度になるようにグッとしゃがむ。たったこれだけですが、最初は2~3回繰り返すだけでフラフラし、まったくできませんでした。それでも、毎日毎日繰り返すうちに、だんだん5回、10回と続けられるようになりました。今では、毎日30回。すると、なんと体重が減り始め、3キロほど痩せました。太ももという大きな筋肉を鍛えることで、代謝が上がるのだそうです。その後、パーソナルトレーニングジムで、インナーマッスルを鍛えるように、ゆる~く動く筋トレを習い、そちらも続けています。
でも、いくら運動を続けていても、ちょっと食べすぎるとすぐに体重が増えます。ほっそりしたモデル体型になりたいわけではないけれど、体が重くなると、フットワークや思考までがなんとなく気だるくなるなあと感じています。そんななかで、日々自分で気を付けることができるのは「食べすぎない」ということに尽きるのかもしれません。
日々の食事で「食べすぎる」ということは、あまりないように思います。1食で食べられる量はある程度決まっているし、そんなにドカ食いができる年齢でもない。だとすれば、食べすぎているのは「間食」なのかも。午後3時4時になると小腹が空いてきます。そこで、ついおやつに手が伸びます。チョコレートだったり、大福だったり。それだけでは満足できず、塩味のものが欲しくなって、ついスーパーで「歌舞伎揚」を買ってきてボリボリ食べたり。夫に「そんなにあれこれ食べていたら太るに決まってるやん」と言われてムッとしたものの、確かにその通りかも、と思いました。
おやつを食べるなら、ちゃんとお茶を入れて大福を食べる。そんなスタイルならいいけれど、おやつボックスの中から、せんべいを取り出してパソコンに向かいながら食べ「もうちょっと」とまた2枚持ってくる……。そんな無意識に食べ続ける足し算が、「食べすぎ」につながっているんだ、と発見した次第です。
私は意志が弱いので、家にお菓子があれば手が伸びてしまいます。そこで、「つい食べちゃうもの」は家の中に入れない!と決めました。小腹を満たすために、スーパーに行くとついカゴに入れていた駄菓子類を厳禁に! 「なんとなく食べる」をシャットアウトしたというわけです。
ただ、おやつをやめたわけではありません。食べるなら「ちゃんと食べる」ということ。午後3時のおやつの時間と、夕飯後には羊羹や自分で作ったゼリー、プリンなどちょっと甘いものをいただきます。そして、朝と晩に必ず体重計に乗ります。1~2キロはすぐ増減するので、「ああ、食べすぎだなあ」とチェックしながら、微調整をすることができます。
歳をとり、だんだん体型がくずれてくるのは仕方がないこと。でも、ちょっとだけ気を付ければ、パンツを履いた時にお腹がぽこんと飛び出すのを少し減らすことができます。そうすれば、パンツ姿に自信が持て、シャツをインして着るなどおしゃれの幅が広がります。
体重は、日々をどう暮らしているか、さらには体が今どういう状態であるかを数値で教えてくれるバロメーター。痩せにくくなったお年頃だからこそ、外と内から自分を知る習慣をつくっておきたいなあと思います。
本記事は『人生後半、上手にくだる』(小学館)からの抜粋です
一田憲子(いちだ・のりこ)
1961年生まれ。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションに転職後フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などを手がける。企画から編集、執筆までを手がける『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(共に主婦と生活社)を立ち上げ、取材やイベントなどで、全国を飛び回る日々。著書に『もっと早く言ってよ』(扶桑社)、『大人の片づけ』(マガジンハウス)、『暮らしを変える書く力』(KADOKAWA)ほか多数。暮らしのヒント、生きる知恵を綴るサイト「外の音、内の香 」を主宰。https://ichidanoriko.com/「暮らしのおへそラジオ」を隔週日曜日配信中。
◇ ◇ ◇
40~50代は、高齢期まではまだ時間はあるけれど、「もう若くない」「これからどうなるのか」と不安が募る年代。今までは「もっともっと」と上を目指していたけれど、いつかは「老いる」ことを受け止め、徐々に下り坂を経験しなければなりません。
この「人生後半」を、どのように受け止め、過ごしたらよいか。暮らしを見つめる人気ムック「暮らしのおへそ」編集ディレクター・一田憲子さんが、これからの自分らしい「生き方」「暮らし方」を提案します。下り始めなければならない時がきたら、
「『もう私は成長できない……』としょんぼり下るのではなく、上り道では見る余裕がなかった眼下に広がる風景をゆっくり眺めながら、ご機嫌に下りたいなあと思うのです。」(本書より)
「老いる」ことによって体力は衰え、できなくなることは増えていくかもしれないけれど、歳を重ねてきたからこそ、今までとは違った気づき、発見に出会う楽しみもあるー。50代後半となった一田さん自身も迷いながら考え気づいた、これからの暮らし、人間関係、自分の育み方、学び、老いとの向き合い方、装いなどを提案。これからの人生に明かりを灯すエッセイ集です。