(『天然生活』2020年3月号掲載)
昔ながらの知恵と技が心地いい
ちゃんちゃんこのつくり方
ほどいた着物の袖、おくみ、衿でつくれる、肩下がりがつくタイプの袖なしの綿入れです。外からは見えない綿の入れ方を中心にご紹介。
材料(Mサイズ)
● 表布(木綿、紬、ウールなど):ほどいた着物の袖2枚、おくみ2枚、衿1枚。または36~40cm幅の反物 3m80cm
● 裏布(木綿):36~40cm幅の反物 2m80cm
● 別布(黒の木綿地または別珍など):12cm幅 1m50cm
● 中綿(はんてん用 *1):180~200g
*1:シート状の綿。折りたたんであり、手で切って使う。
でき上がり寸法
着丈80cm、背巾42cm
※ 以下の裁断図、印の付け方、写真内の数字の単位は、すべてセンチメートル(cm)です。
裁断図
印のつけ方
下準備
1 裁断図を参考にして、表布と裏布を裁断する。衿は、適宜接いで指定の長さにし、折る。紐は、つくる。掛け衿は、折って縫う。
2 印のつけ方を参考にして、布を重ねてたたみ、へらで印をつける。
3 表布のそれぞれの裾に、しつけ(一目落とし)で、印をつけておく。
以下の1~6の縫い方順序
以下の8~16の縫い方順序
縫い方順序
1 〈背縫い〉表地の身頃を中表に合わせて背縫いを縫い、きせをかける(*2:左身頃側)。裏地も同様。
*2:きせをかける=縫い目より1~2mm深く縫いしろを片側に倒すこと。倒す方向は( )内に明記。
2 〈胴はぎ〉表地と裏地を中表に合わせ胴はぎの印を縫う。きせをかけ(裏地側)、縫いしろをかくしじつけ(*3)で押さえる。
*3:かくしじつけ=1~2cmの針目で一目落とし。地縫い糸で。
3 〈まち付け〉身頃とまちを中表に合わせて印から印までを縫い、きせをかける(身頃側)。
4 〈肩下がり〉前身頃と後ろ身頃を中表に合わせ、衿肩あきから印までを縫う。表地はきせをかけ(前身頃側)、裏地は縫いしろを割る。
5 〈衿付け〉身頃と衿を中表に合わせ、右裾から左裾まで縫う。
6 〈袖ぐりの始末〉表地はでき上がりに折り、折山から1cm内側をかくしじつけで押さえる。裏地は以下を参考に含め綿をする。
含め綿の方法
1 10cmに切った綿を写真のように1cmずらして折る。
2 身頃、まちの順で置いていく(写真はまち)。でき上がりに折り、折り線より1cm上に綿の折山を合わせて置く。
3 写真のように、綿と縫いしろを一緒に折り、まち針を打つ。でき上がり線の綿は四つ折りになる。
4 折山から1cm内側をかくしじつけで押さえる。
7 〈綿入れ〉
綿入れの方法
1 裏返しの前身頃を天井側にして広げ、縫いしろの倒れる方向を確認して整え、裏地を肩から裾まで巻く。表地も同様に肩から裾まで巻く。
2 ひっくり返し、後ろ身頃を天井側にし、表地だけ開く。
3 後ろ身頃のまんなかに、三つ折りのままの綿を、裾より10cm長く置き、肩山から5cm上のところで、手で切る。
4 綿を左右に広げる。その上に、幅30cmに切った綿を背中にのせて二重にし、裾をまたぐように幅10cmに切った綿を重ね、裾の印に沿って物差しを置く。
5 物差しをガイドにして、綿だけを上に折る。裏地を下から引き出し、綿の上に被せる。袖ぐりの形に沿って、余分な綿を切る(★=切った綿はとっておく)。写真のように、衿肩あきに切り込みを入れる。
6 脇と肩の残っている綿を裏地の前身頃側に倒す。
7 5でカットした余分な綿(★)を、肩山から5cm出して置く。
8 前身頃の残りの部分に、裾から10cm長く綿を置き、写真のように折り返す。肩の綿も表身頃の間に折り返す。
9 表地の前あきから写真のように手を入れ、表身頃を綿に被せるように、表に返す。もう一方も同様に表に返す。
10 肩に手を入れて、撫でるようにし、表地と裏地と綿をなじませる。
8 〈衿の中とじ〉衿、表地、裏地の印を合わせ、背中心、衿肩あき、裾をまち針で留める。衿付けの縫い目の際を綿を挟みながら裏地まで通してしつけ糸でとじる。
9 〈衿をつくる〉衿先を衿幅(4.5cm)に中表に折り、裾線から0.8cm先を縫う。衿先を裾線で表身頃側に折り、表に返す。縫いしろを内側に折り、厚みが均一になるように量を調整しながら衿で綿をくるんで、くける。
10 〈袖ぐりをくける〉裏地を2mm控えて表地とくける(本ぐけ)。
11 〈綿とじ〉背縫いに沿って、表地に針目が出ないように、縫いしろの中だけを通して縫い、綿をとじる。まち付けも同様にとじる。
綿とじの断面図(しのびとじ)
12 〈綿とじ〉袖ぐりと裾はでき上がりの2cm内側を、布の織糸1~2本すくうように針目を出してとじる。
綿とじの断面図
13 衿の衿先から30cm上の部分は、しつけ糸で、斜めじつけでとじる。
14 紐を衿に半返し縫いで付ける。
15 〈掛け衿をかける〉掛け衿を地衿に沿わせながら身頃にくける。内側も同様にくける。
16 紐を掛け衿の上に縦まつりで縫い留める。
* * *
和布工房 はんてん屋
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〈撮影/村林千賀子 取材・文/石川理恵〉
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです