(『天然生活』2021年5月号掲載)
特別な朝といつもの朝。準備だってごちそうのうち
愛らしさの内に秘められた、小さな毒。独自の世界観から熱烈なファンが多い山本亜由美さんの作品。すべて一点ものゆえに、展示会前は驚くべき集中力でまさに不眠不休。
さて、そんな戦場さながらの制作期間を終えたあとのお楽しみは、次の次の日にいただく朝ごはんです。しかしなぜ2日後に?
「納品の翌朝はさすがにぐったり。だから、さらにその翌朝なんです」
大仕事後のすっきり気分で向き合う、割烹旅館的朝ごはん。この朝を迎えるために、少し前から仕込んでおいた鯛の昆布じめは、昨晩忘れずにごまだれに漬けました。ちょっとずつ味わいを変えたいから、薬味はたっぷりがルールです。
「メニュー自体は、好物といっても簡単なもの。けれど、前の晩から仕込みをして、朝の気分でお気に入りの器を選んで、という手順そのものがうれしいんです」
ここまで手の込んだ和のごはんは、特別に余裕ある朝だけのもの。一方、手軽に気分を上げるなら、色とりどりのワンプレートサラダ。
「その日ある葉野菜に、夕飯の残りや冷蔵庫にあるものを適当にのせます。何を入れてもいいけれど、つい、色合いのバランスを考えてあれを足したりこれを足したり」
清々しい緑の中で目を引く、紅芯大根の鮮やかさ、パプリカのつややかさ。器に絵を描くように、その日の気持ちにぴったりな色彩をいつの間にか探しているのです。
前日から待ち遠しい、鯛刺し身の漬け丼
●鯛刺し身のごまだれ漬け ●薬味(青じそ、みょうが、青ねぎ、すだち、わさび、白ごま) ●きゅうりの漬物しょうがのせ ●ごはん ●くき茶
鯛の昆布じめは、前日にみりん、しょうゆ、酒、練りごまに漬けて。きゅうりも前日に昆布茶と酢で一夜漬けに。
鯛はまず、薬味たっぷりの丼で味わい、仕上げに「一保堂茶舗」のくき茶(ときに加賀棒茶)を注ぎ、お茶漬けに。焼きのりを加えてもおいしい。
目にもうれしい、鮮やかサラダとフルーツ
●サラダ(クレソン、サラダほうれんそう、焼きパプリカ、白菜のマリネ、紅芯大根のマリネ、マッシュルーム、にんじんのラペ、チーズなど) ●ナッツのたまりじょうゆ炒め ●フルーツ(きんかん、カニステル、レモンなど) ●カフェオレ
この日は、昨晩の残りのそら豆の春巻きも一緒に。
マッシュポテトやコンビーフなど、ひと皿にするには少ない素材も、ちょこちょこ盛りつけると彩りも楽しくなるし、味のバリエーションも豊かになる。
味つけは、塩とオリーブオイル、レモンで。
幸せな朝ごはんのお供
お気に入りの食器たち
最近、興味をひかれて集めているのがふたつきの器。蒸しものに使うこともあれば、碗にごはんを、ふたに漬物を盛るなどして使うことも。
京都などで古いものを見つけるのが楽しみ。
〈撮影/有賀 傑 取材・文/福山雅美〉
山本亜由美(やまもと・あゆみ)
会社員を経て、アクセサリー作家に。インスタグラムに登場する愛猫・紅子も人気。作品は、スパイラルマーケット、松屋銀座などで開催される展示会で入手可能。インスタグラム@leonardo_abc_
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです