• どこまでも続く雪原、分厚い氷、愛らしいペンギンたち。そんな大自然が広がる南極に、南極観測隊が毎年派遣されているのはご存知の方も多いでしょう。でも、南極観測隊と聞いても、自分の生活とはかけ離れたものと思っていませんか? しかし実は、私たちの暮らしに直結する観測をたくさん行ってくれているのです。そこで、フジテレビが同行取材を行った、第64次観測隊に参加している名古屋大学の栗田直幸先生に、素朴な疑問をぶつけてみました。(タイトル写真提供/フジテレビ)

    南極観測をもっとよく知りたい! 隊員の方へのQ&A

    南極は地球の最も南にあり、日本の南極の観測拠点、昭和基地は、東京から約1万4000㎞も離れた場所にあります。世界で5番目に大きい大陸で、面積は日本の約37倍。また、南極大陸の氷は、地球の氷の約9割を占めているのだとか。そんな雄大な自然の元で調査を行う、名古屋大学の栗田直幸先生に、観測テーマをはじめ、南極のごみ事情から生活ぶりまで、あれこれ素朴な疑問に答えてもらいました。

    Q1 南極は極寒というイメージですが、実際どのくらい寒いのでしょうか? 雪はたくさん降りますか? 

    2021年の記録では、昭和基地では夏の最高気温は6.9℃、冬季の最低気温はマイナス38.4℃と、真冬の北海道よりも寒くなります。南極大陸の気温は内陸に向かうほど低くなり、2021年を例に挙げると、昭和基地から1000km離れたドームふじ基地では、年平均気温がマイナス55℃と非常に寒いです。

    雪はたくさん降ると思われがちですが、実はそれほど降りません。積雪量は場所によって異なります。沿岸部では1年間1mを超える積雪がありますが、内陸のドームふじ基地周辺では、年間10cm程度です。

    でも南極は非常に寒いところなので、降った雪は溶けません。地層のように積み重なっていくため、ドームふじ基地では、今年降り積もった雪の下に、長い年月をかけて積もった雪が約3000mも堆積しています。

    画像: ドームふじ基地周辺の風景(写真提供/国立極地研究所)

    ドームふじ基地周辺の風景(写真提供/国立極地研究所)

    Q2 南極観測では、どんなことがわかるのでしょうか?

    私は南極観測船「しらせ」で南極に向かいましたが、飛行機で南極入りする先遣隊もおられます。観測隊員は全員で90名以上にのぼります。

    それだけの研究者や技術者の集団で、雪氷観測、気象観測、海洋観測、生態調査、地質調査など多岐にわたる調査を行います。雪に覆われた南極で「地質調査」と聞くと疑問に思われるかもしれません。地質調査を行っている研究者に聞いたところ、南極の沿岸域には古い地層がそのまま露出しており、非常に珍しい岩石を簡単に見つけることができる「宝の山」なんだそうです。

    南極と聞くと、オーロラを思い浮かべる方もおられると思いますが、オーロラも研究対象になっています。オーロラは太陽活動と密接な関係があり、その特性を利用してオーロラ観測を「宇宙天気予報」に役立てる研究が進められています。宇宙天気予報は最近始まったもので、太陽活動の変化を検知して、地球や人間活動への影響を予報します。

    実は、太陽の活動に変化が起きると、磁気嵐が発生したり、GPSや人工衛星に障害が発生したりするなど、我々の生活にまで影響が及びます。こうした影響を最小限に抑えるためにも、宇宙天気予報の信頼性を高めることが必要なのです。南極でのオーロラ観測は、その予測向上に役立っています。

    画像: オーロラ(写真提供/国立極地研究所)

    オーロラ(写真提供/国立極地研究所)

    画像: Q11 実際に南極に到着して感じたこと、観測を行って感じたことはなんですか?

    栗田直幸(くりた・なおゆき)
    名古屋大学・宇宙地球環境研究所准教授。専門は、地球惑星科学(地球化学、気象・気候学)。これまでにシベリアやチベット、赤道インド洋など世界各地で、観測活動を実施。第60次、第64次南極地域観測隊に参加。(写真提供/フジテレビ)

    <監修/国立極地研究所 取材・文/編集部 取材協力/フジテレビ>



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