Q5 大陸での移動や生活に雪上車を使われるそうですが、食事はどうしていますか?
今回は、ベリリウムの量を調べるための氷試料を採取するため、雪上車を使った南極の内陸旅行を行いました。雪上車にはキャンピングカーのような設備はありませんが、食卓テーブルとして利用できる木板や調理台として使えるスペースがあります。
調理台の上にまな板とカセットコンロを置いて調理を行い、出来上がった料理を食卓テーブルに並べて、全員でテーブルを囲んで食事をしました。車内キャンプのような生活です。また、調理台の上には換気扇もありますので、車内を締め切ったまま料理できます。
食材は、事前に提出する希望リストに従って、小分けパックの生米、生野菜、冷凍肉、刺身、調味料などが支給されます。また、現地で調理しやすいように、肉や魚はカットして持ち込みました。そのほかに、缶詰、レトルト食品、乾パン、お菓子などの予備食や非常食も配られました。
料理に使う水は、雪上車の周囲にある雪を溶かして利用しました。雪上車のヒーターの出口には、雪を入れたバケツを入れる専用の木箱があり、この中にバケツを入れておくと約半日で水がつくれます。また、飲用水は、雪上車の風上にあるクリーンな雪を新品のスコップとバケツを使って採取したので、美味しい水を飲むことができました。
Q6 雪上車では、どのように就寝するのでしょうか?
雪上車内に2段ベッドがあり、そのベッドに布団を敷いて就寝します。寝袋を携行していますので、布団の上に寝袋を広げて快適に就寝する隊員もいました。しかし、今回は最大で5人が雪上車内に宿泊しましたので、場所の確保が大変でした。雪上車内を整理し、残り3人分の布団を敷いた際には、足の踏み場もなくなりました。
寝心地は悪くないのですが、寒さは別問題です。就寝中に一酸化炭素中毒にならないよう、就寝前に雪上車のエンジンを切ります。エンジンを止めた直後から車内の温度が下がり始め、起床時の温度は氷点下になります。就寝直後は暑いぐらいですが、夜中に寒さで目覚めることが何度かありました。
また、朝には、目が覚めているはずなのに、なかなか起きない隊員もいました。コンタクトレンズを使用していた隊員は、保存液や目薬が凍ってしまうので、胸ポケットに入れたまま就寝するなどの工夫をしていました。
栗田直幸(くりた・なおゆき)
名古屋大学・宇宙地球環境研究所准教授。専門は、地球惑星科学(地球化学、気象・気候学)。これまでにシベリアやチベット、赤道インド洋など世界各地で、観測活動を実施。第60次、第64次南極地域観測隊に参加。(写真提供/フジテレビ)
<監修/国立極地研究所 取材・文/編集部 取材協力/フジテレビ>