• どこまでも続く雪原、分厚い氷、愛らしいペンギンたち。そんな大自然が広がる南極に、南極観測隊が毎年派遣されているのはご存知の方も多いでしょう。でも、南極観測隊と聞いても、自分の生活とはかけ離れたものと思っていませんか? しかし実は、私たちの暮らしに直結する観測をたくさん行ってくれているのです。そこで、フジテレビが同行取材を行った、第64次観測隊に参加している名古屋大学の栗田直幸先生に、素朴な疑問をぶつけてみました。(タイトル写真提供/フジテレビ)

    Q5 大陸での移動や生活に雪上車を使われるそうですが、食事はどうしていますか?

    今回は、ベリリウムの量を調べるための氷試料を採取するため、雪上車を使った南極の内陸旅行を行いました。雪上車にはキャンピングカーのような設備はありませんが、食卓テーブルとして利用できる木板や調理台として使えるスペースがあります。

    調理台の上にまな板とカセットコンロを置いて調理を行い、出来上がった料理を食卓テーブルに並べて、全員でテーブルを囲んで食事をしました。車内キャンプのような生活です。また、調理台の上には換気扇もありますので、車内を締め切ったまま料理できます。

    食材は、事前に提出する希望リストに従って、小分けパックの生米、生野菜、冷凍肉、刺身、調味料などが支給されます。また、現地で調理しやすいように、肉や魚はカットして持ち込みました。そのほかに、缶詰、レトルト食品、乾パン、お菓子などの予備食や非常食も配られました。

    料理に使う水は、雪上車の周囲にある雪を溶かして利用しました。雪上車のヒーターの出口には、雪を入れたバケツを入れる専用の木箱があり、この中にバケツを入れておくと約半日で水がつくれます。また、飲用水は、雪上車の風上にあるクリーンな雪を新品のスコップとバケツを使って採取したので、美味しい水を飲むことができました。

    画像: 雪上車(写真提供/フジテレビ)

    雪上車(写真提供/フジテレビ)

    Q6 雪上車では、どのように就寝するのでしょうか?

    雪上車内に2段ベッドがあり、そのベッドに布団を敷いて就寝します。寝袋を携行していますので、布団の上に寝袋を広げて快適に就寝する隊員もいました。しかし、今回は最大で5人が雪上車内に宿泊しましたので、場所の確保が大変でした。雪上車内を整理し、残り3人分の布団を敷いた際には、足の踏み場もなくなりました。

    寝心地は悪くないのですが、寒さは別問題です。就寝中に一酸化炭素中毒にならないよう、就寝前に雪上車のエンジンを切ります。エンジンを止めた直後から車内の温度が下がり始め、起床時の温度は氷点下になります。就寝直後は暑いぐらいですが、夜中に寒さで目覚めることが何度かありました。

    また、朝には、目が覚めているはずなのに、なかなか起きない隊員もいました。コンタクトレンズを使用していた隊員は、保存液や目薬が凍ってしまうので、胸ポケットに入れたまま就寝するなどの工夫をしていました。

    画像: 雪上車の二段ベッド(写真提供/国立極地研究所)

    雪上車の二段ベッド(写真提供/国立極地研究所)

    画像: Q11 実際に南極に到着して感じたこと、観測を行って感じたことはなんですか?

    栗田直幸(くりた・なおゆき)
    名古屋大学・宇宙地球環境研究所准教授。専門は、地球惑星科学(地球化学、気象・気候学)。これまでにシベリアやチベット、赤道インド洋など世界各地で、観測活動を実施。第60次、第64次南極地域観測隊に参加。(写真提供/フジテレビ)

    <監修/国立極地研究所 取材・文/編集部 取材協力/フジテレビ>



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